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「観る将」が観た第12期女流王座戦第三局

12月13日、第12期リコー杯女流王座戦五番勝負第三局が、東京の将棋会館で行われました。ここまで両者1勝1敗となり、里見香奈女流王座が勝って防衛に王手を掛けるのか、加藤桃子女流三段が勝って奪取にあと1勝と迫るのか、注目される一局となっています。

中飛車対居飛車穴熊

先手の里見女流王座が中飛車に振り美濃囲いに構えると、加藤女流三段は低い陣形のまま駒組みを進めます。里見女流王座が1筋の位を取ると、加藤女流三段は穴熊を目指します。

女流王座の仕掛け

里見女流王座が飛車を4筋に寄せて今年の清麗戦第二局と同じ形に合流すると、前例と同様▲1七桂と守りの桂を跳ねて攻撃態勢を整えます。加藤女流三段が2筋の歩を突いて桂跳ねに備えて前例を離れますが、里見女流王座は少考で4筋の歩を突き捨ててから2筋の歩をぶつけます。

開戦前の緊張

加藤女流三段はじっと銀を引き付けて守りを固めますが、里見女流王座は22分の熟考で▲4五銀と前進します。加藤女流三段は飛車を4筋に回して対抗しますが、里見女流王座は銀を3筋に回して玉頭戦の戦力を強化します。加藤女流三段が次の44手目を考慮中に昼休となりました。各3時間の持ち時間の内、残り時間は里見女流王座が2時間9分、加藤女流三段が2時間11分と拮抗しています。

女流王座の踏み込み

加藤女流三段は昼休を挟む24分の熟考で7筋の歩を突いて右桂の活用を図りますが、里見女流王座は2筋の歩を取り込んで踏み込みます。里見女流王座は5筋の歩も突き捨てて角道を通すと、▲4四歩と金頭を叩きます。加藤女流三段が金を3筋に寄せてかわすと、里見女流王座は▲2五桂と跳ねて金に当てます。

強烈な垂れ歩

加藤女流三段が金を2筋に寄せて玉頭の守りは強化されたように見えますが、里見女流王座は飛車を浮いて左辺からの突入を見せつつ、歩で飛車を押さえ込まれるのを防ぎます。加藤女流三段は構わず△7九角成と馬を作りますが、里見女流王座が垂らした▲5三歩が後手陣に突き刺さります。次に歩を成られると先手の4筋突破は避けられず、形勢ははっきりと里見女流王座に傾いたようです。

苦渋の長考

加藤女流三段は36分の熟考で△3三桂と跳ねて飛車に当て、桂交換して金を3筋に戻します。里見女流王座が▲2五桂と打ち直して金に当てると、加藤女流三段は41分の長考で残り45分となり金を2筋にかわしますが、里見女流王座は▲4三歩成から飛車を交換して金桂両取りに▲4一飛と打ち込みます。

大駒を守りに使っての辛抱

加藤女流三段は先手の角の利きを止めつつ銀取りに△4五桂と打ちますが、里見女流王座は悠々と金を取って竜を作ります。加藤女流三段は銀桂交換してから△2四馬と自陣に引き付けて辛抱します。里見女流王座が▲4一竜と入って銀のタダ取りを狙うと、加藤女流三段は持ち駒の飛車を△2一飛と打って耐え忍びます。

最後の抵抗

里見女流王座が桂を打って後手陣の銀を剥がすと、加藤女流三段は金銀両取りに桂を打ちます。里見女流王座は構わず寄せにいき、竜を飛車と交換してから▲4一飛と打ち直します。加藤女流三段が銀桂交換してから飛車で王手して形を作ると、里見女流王座は飛車で銀を食いちぎって即詰みに討ち取りました。

まとめ

本局は加藤女流三段が持久戦志向で守りを固めたのに対し、里見女流王座が攻め掛かる展開となりました。中盤に加藤女流三段に読み抜けがあったのか、里見女流王座の垂れ歩で一気に形勢が傾きました。加藤女流三段も気迫の粘りを見せましたが、里見女流王座は緩みなく後手玉を追い詰め、持ち時間を半分近く残しての快勝となりました。
里見女流王座は2勝1敗となり女流王座防衛まであと1勝となりました。次局は1週間後に予定されていますが、先手番となる加藤女流三段の巻き返しに期待したいと思います。

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