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「観る将」が観た第3期白玲戦七番勝負第二局

9月9日、ヒューリック杯白玲戦七番勝負第二局が、鹿児島県指宿市の指宿白水館で行われました。先勝した里見香奈白玲がリードを拡げるのか、西山朋佳女流三冠勝ってタイスコアに戻すのか、注目の一局となりました。

前日に行われた開会式では、里見白玲は「今年も白玲戦のタイトル戦が戦えることを大変幸せに思っております。明日は自分の力を精一杯出しきれるように、全力で頑張りたいと思っております」、西山女流三冠は「この白玲戦という舞台で三度みたび指宿白水館様で対局させていただくことを光栄に思います。明日は第二局ですが、自分の持ち味をしっかり出せるように頑張ってまいりたいと思います」と決意表明しています。


里見白玲が中飛車から居飛車へ

西山女流三冠が黒地に花柄の精悍な着物と濃い青緑の袴で入室すると、里見白玲は白地に紫の花柄の華やかな着物と淡い桃色の袴で入室します。先手の里見白玲が3手目に中飛車に振ると、西山女流三冠は14手目に向かい飛車に振ります。里見白玲は▲6八玉と玉を左に上げ、西山女流三冠が2筋の歩を伸ばすと、飛車を2筋に戻します。

西山女流三冠は向かい飛車から三間飛車へ

互いに陣形を整備し、里見白玲が▲5六銀と上がって5筋の位を確保すると、西山女流三冠は美濃囲いから木村美濃に組み替えます。里見白玲が6筋の歩を突き捨てて銀で取ると、西山女流三冠は桂で銀を追い返し、3筋の歩をぶつけて桂頭を狙います。里見白玲は金を上がって桂頭を守りますが、西山女流三冠は3筋の歩を取り込んで金で取らせ、12分考えて飛車を3筋に寄せます。

2-3筋の攻防

里見白玲は▲2五桂と跳ねて角に当て、西山女流三冠が角を2筋にかわして飛車の利きを金に当てると、飛車を3筋に寄せて金に紐を付けます。西山女流三冠が△3五歩と金取りに打つと、里見白玲は▲3三歩と飛車取りに打ちます。西山女流三冠が△3三同桂と応じ、桂を交換して角で取ると、里見白玲は▲3五金と歩を取って前進します。

互いに飛車の捌きを阻止

西山女流三冠が飛車を2筋に戻すと、里見白玲は▲2五金と飛車の利きに差し出します。この金を取ると先手も角を取って竜を作れるので、西山女流三冠は歩で角頭を守り、里見白玲も歩で金を支えます。西山女流三冠が△6五歩と位を取ると、里見白玲が次の61手目を考慮中に昼休となりました。各4時間の持ち時間の内、残り時間は里見白玲が2時間40分、西山女流三冠が2時間21分となっています。

角の活用

里見白玲が昼休を挟む21分の熟考で△6七銀引と6筋を固めると、西山女流三冠は23分考えて△4二角と引きます。里見白玲は4筋の歩をぶつけ、西山女流三冠が5筋の歩をぶつけると、4筋の歩を取り込んで銀で取らせ、5筋の歩を取り込んで角の利きを銀に当てます。西山女流三冠が△6六桂と角の利きを止めつつ王手すると、里見白玲は玉を引いてかわします。

桂の活用

西山女流三冠は△5五銀と出て、里見白玲が▲3四飛と走ると、△4三金と上がって飛車を追い返します。西山女流三冠は△4七歩と垂らし、里見白玲に歩で受けさせて飛車の可動域を狭めると、△5四金と歩切れを解消しつつ後手陣の厚みを作ります。里見白玲が▲5六歩と打って銀を引かせてから▲7八桂と打つと、西山女流三冠は6分の考慮で残り1時間となり、桂交換に応じてから△8四桂と控えて打ちます。

9筋の攻防

西山女流三冠が4筋の歩を成り捨てて△6四角と好所に飛び出すと、里見白玲は▲3四金と出て飛車の活用を図ります。西山女流三冠が飛車を3筋に寄せて受けると、里見白玲は25分の熟考で残り50分となり、9筋の歩をぶつけます。西山女流三冠は5筋に歩を合わせ、里見白玲が9筋の歩を取り込むと、香を犠牲に後手の香を吊り上げ、△9六桂と跳ねて角に当てます。

里見白玲が銀香の駒得

里見白玲が9筋に角をかわしてぶつけると、西山女流三冠は△8五桂と跳ねて追撃します。里見白玲は角を交換し、西山女流三冠が金で取ると、▲3三歩と飛車取りに打ちます。西山女流三冠は飛車を4筋にかわして銀に紐を付けますが、里見白玲は9筋で得た香を▲4三香と打って飛車の利きを遮断します。西山女流三冠は飛車を5筋にかわしますが、形勢は金を銀で取った里見白玲に傾いてきたようです。

里見白玲が左右から挟撃

西山女流三冠が香取りに△9三歩と打つと、里見白玲は香を成り捨て、歩で玉頭を叩いてから▲9三角と後手玉に迫ります。西山女流三冠が玉を引いてかわすと、里見白玲は4筋の香を成り捨て、▲5三金と上がって飛車に当てます。西山女流三冠が9筋に香を打って角に当てると、里見白玲は取れる飛車を取らず、取られそうな角も逃げず、▲5八金と上がって自玉の退路を拡げます。

互いに自玉の危機を回避

西山女流三冠が持ち時間を使い切り、9筋の角を香で取ると、先手の金の利きに△5七角と自陣に利かせつつ王手で放り込みます。この角はタダで取れますが、取ると竜を作られるので、里見白玲は玉を6筋に寄ってかわします。西山女流三冠が△9三角成と自玉に迫る"と金"を取って馬を作ると、里見白玲は金で飛車を取ります。両者とも自玉の危機を脱し、形勢は混沌としてきたようです。

両者1分将棋の激闘

西山女流三冠が金取りに△5七香と打つと、里見白玲も1分将棋に突入し、金を6筋にかわします。西山女流三冠は6筋の歩を伸ばして銀に当て、里見白玲が▲5一飛と王手で打ち込むと、玉を上がってかわします。里見白玲が馬頭を歩で叩いて利きを外してから6筋の歩を取り込むと、西山女流三冠は△8四馬と寄って飛車と銀に当てます。里見白玲が▲5七銀と自玉の退路を狭める香を取ると、西山女流三冠は馬を飛車と交換してから△8八桂成と飛び込みます。形勢は再び里見白玲に振れてきたようです。

後手玉に詰めろ

里見白玲は▲9四桂~▲9一角と連続王手で後手玉に迫り、西山女流三冠が玉を6筋まで逃がすと、▲3四飛と走って間接王手飛車の筋を逃れます。西山女流三冠が△7九飛と王手し、△7八成桂と銀を取ると、里見白玲は△8二桂成と詰めろを掛けますが、先手玉もかなり危ない状況にあり、形勢はついに逆転模様です。

急転直下の即詰み

西山女流三冠は成桂で金を剥がして王手し、△6九角から歩の連続王手で先手玉に迫ります。里見白玲は玉の上部脱出を図りますが、西山女流三冠は△5四金と寄って追い返し、△3六金と王手します。先手玉には即詰みが生じており、里見白玲は投了を告げ、154手の激闘に終止符を打ちました。

まとめ

本局は里見白玲が時折見せる中飛車から居飛車に戻す作戦を採用し、西山女流三冠は木村美濃から上部に厚みを作って応じました。互いに相手の動きを封じてジリジリした攻防が続きましたが、里見白玲が端攻めを決行し、西山女流三冠が反発して本格的な戦いに突入しました。一時は駒得した里見白玲がリードしましたが、西山女流三冠は攻防の角を放って互角に戻しました。両者とも1分将棋に突入し、どちらが勝つのかわからない大熱戦となりましたが、里見白玲が詰めろを掛けた瞬間に西山女流三冠が反撃に転じ、鮮やかな即詰みに討ち取りました。
終局後のインタビューで次局への意気込みを聞かれ、西山女流三冠は「また1週間後ですので、しっかりコンディションを整えて挑みたい」、里見白玲は「しっかり準備して挑みたい」と、激闘の疲れを感じさせる短い言葉で答えました。1週間後に行われる第三局も、両者が力を出し切った熱戦を期待したいと思います。

ヒューリック杯白玲戦は、ヒューリック株式会社と日本将棋連盟が主催しています。棋譜等は下記サイトをご覧ください。


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