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第5回ABEMAトーナメント 予選Bリーグ第二試合

5月14日に、ABEMAトーナメントの予選Bリーグ第二試合が放映されました。第一試合で逆転勝ちして勢いに乗るチーム糸谷「乾坤一擲」と、前回大会で獅子奮迅の活躍を見せたリーダーが率いるチーム菅井「真・振り飛車」の顔合わせとなりました。チーム糸谷は第一試合で若手振り飛車党の黒沢怜生六段と西田拓也五段が活躍し、この試合に勝てば予選1位通過が決まります。チーム菅井は振り飛車の強豪久保利明九段と佐藤和俊七段というメンバー構成で、振り飛車党同士の対局が多くなりそうです。

一局目:西田拓也五段 vs 佐藤和俊七段

チーム菅井は、初出場の佐藤七段をいきなり投入します。振り駒で先手となった西田五段が初手に三間飛車に振り飛先の歩を交換すると、佐藤七段も四間飛車に振り相振り飛車の将棋となりました。佐藤七段が2筋の歩を伸ばしてから飛車を2筋に振り直すと、西田五段も後手の陣形を見て6筋に振り直します。西田五段が6筋の歩を突いて仕掛けると、佐藤七段は角を交換して△4四角と桂取りに打ち直します。4分40秒程時間を残していた西田五段はここで2分半ほど使い、▲8六角と打って桂に紐を付けます。佐藤七段が8筋の歩を突いて先手の角に圧力を掛けると、西田五段は金を繰り出して応戦します。早くもお互いに残り時間が1分を切り、佐藤七段は馬を作って飛車を追います。西田五段は▲6三銀と打ち込んで後手陣に迫りますが、佐藤七段も△4九銀の割り打ちから先手陣を崩します。残り10秒で指し続ける佐藤七段が△5六馬~△4六桂から先手玉に迫ると、西田五段も▲6二"と"から後手玉に迫ります。佐藤七段が△6八飛の王手から詰めろを掛けて下駄を預けると、西田五段は▲5一金と王手しますが続かず無念の投了となりました。
チーム糸谷:0勝 - チーム菅井:1勝

二局目:黒沢怜生六段 vs 久保利明九段

チーム糸谷は、リーダーの信頼厚い黒沢六段が出陣します。振り飛車党同士で序盤から少しずつ時間を使って相手の出方を探っていましたが、後手の黒沢六段が△4四角と出てから向かい飛車に振ると、久保九段は居飛車のまま左美濃に構えます。黒沢六段も美濃囲いに構えると、一度引いた角を△5五角と出て角成を狙います。久保九段は馬を作らせて飛車を捌き、▲3三銀成と突破します。黒沢六段が飛車をぶつけて交換し、△4八飛~△4三飛成と歩を払うと、久保九段も▲2一飛と打ち込んで飛成を狙います。黒沢六段は△4六歩と垂らし、久保九段が▲1一角成と香を取って馬を作ると△4七歩成と"と金"を作ってから歩で馬の利きを遮断します。久保九段は▲8二飛成と竜を作り、銀を取らせて▲4三香と後手陣に迫ります。お互いに竜を取り合い、久保九段が▲1二飛と打つと、黒沢六段は"と金"で金を奪って自陣に投じます。作戦会議室では糸谷八段が「頑張ってくれ!」と手を合わせています。黒沢六段は△4七飛と打って反撃に転じると、先手陣の金銀を1枚ずつ剥がし9筋からの端攻めを絡めて即詰みに討ち取りました。
チーム糸谷:1勝 - チーム菅井:1勝

三局目:糸谷哲郎八段 vs 菅井竜也八段

両チームともリーダーが出陣し、リーダー対決となりました。後手の菅井八段が三間飛車に振り石田流の駒組みを目指すと、糸谷八段も▲8七金~▲5六銀▲3八飛で迎え撃ちます。菅井八段はいったん飛車を引き、角道を開けて角交換します。菅井八段は△4九角~△7六角成と馬を作りますが、糸谷八段も▲2四歩から飛車成りを目指します。菅井八段が2分程考えて△3八歩と垂らすと、糸谷八段も2分程考えて馬取りに▲5九金と寄ります。菅井八段が馬で金を食いちぎり"と金"を作って銀を追うと、糸谷八段も"と金"を作って飛車を追います。お互いに譲らず駒の取り合いとなり、糸谷八段は大駒4枚、菅井八段は金駒7枚を手にします。糸谷八段が9筋から端を攻めると、菅井八段は自信ありげな手つきで△7六銀と打ちます。糸谷八段は▲6六飛と自陣に打って辛抱し▲4四角と打って先手陣を睨みますが、菅井八段は"と金"で角を追い金で飛車を追います。糸谷八段は玉を中段に逃がして粘りましたが、菅井八段が冷静に寄せ切りました。
チーム糸谷:1勝 - チーム菅井:2勝

四局目:黒沢怜生六段 vs 佐藤和俊七段

両チームともこの試合で1勝している2人の出陣となりました。振り飛車党同士の駆け引きとなりましたが、後手の黒沢六段が△4四角と飛び出してから向かい飛車に振ると、佐藤七段は居飛車のまま左美濃に構えます。黒沢六段も美濃囲いに構えると、いきなり△4五桂と跳ねて仕掛けます。作戦会議室では久保九段が「えーっ」と声を上げ、糸谷八段も「大丈夫なの?これ」とつぶやきます。佐藤七段が30秒ほど考えて桂取りに▲4六銀と上がると、黒沢六段は△2六歩から飛車をぶつけて交換します。佐藤七段が桂を取ると、黒沢六段は△4八角成と馬を作ります。佐藤七段は1分程考えて角道を開け、黒沢六段が△2八飛~△2九飛成と桂を取り返します。佐藤七段は▲5五角と急所に飛び出しますが、黒沢六段の△6二桂が先手からの桂打ちを防ぐ好手となります。佐藤七段は▲4一飛と打ち竜を作って後手陣に攻め掛かりますが、黒沢六段は△6七歩から銀の犠打で先手陣を崩し△8九竜と迫ります。佐藤七段は自陣に銀を打って粘りますが、黒沢六段は△6六歩から一気に即詰みに討ち取りました。
チーム糸谷:2勝 - チーム菅井:2勝

五局目:西田拓也五段 vs 久保利明九段

再びタイスコアとなり、普段から交流があるという2人の対決となりました。先手の西田五段が初手に三間飛車に振ると、久保九段は8筋の歩を伸ばして居飛車で戦います。西田五段が美濃囲いに構えると、久保九段は香を上がって穴熊を目指します。西田五段はすかさず向かい飛車に振り直して8筋の歩を交換しますが、一手一手時間を使いつつ左銀を前進し▲3四銀と先手陣に迫ります。久保九段も右金を前進して先手の角を追い返しますが、西田五段は飛車を7筋に移して歩を合わせ、▲7四飛~▲4四飛と銀を食いちぎります。西田五段が更に金取りに▲7七桂と跳ねると、久保九段は手抜いて角を追ってから銀取りに△4三歩と打ちます。西田五段は飛車取りに▲7一角成と馬を作りますが、久保九段は構わず銀を取り△6九飛と打ち込みます。西田五段は銀を自陣に打って底歩を打ち堅陣を築くと、▲6二飛~▲6三飛成と竜を作り馬香との2枚替えに成功します。久保九段は"と金"を作って攻め合いますが、西田五段は▲4二角成と金を食いちぎり成桂で銀を剥がして寄せ切りました。
チーム糸谷:3勝 - チーム菅井:2勝

六局目:黒沢怜生六段 vs 菅井竜也八段

チーム糸谷は後手番で2勝している黒沢六段を投入します。振り飛車党同士の対局ですが、先手の菅井八段が早々に居飛車をを選択し、黒沢六段は三間飛車に振ります。菅井八段が穴熊に囲うと、黒沢六段は美濃囲いに構えて飛先の歩を交換します。黒沢六段が銀をぶつけて交換し△5六飛と回ると、菅井八段も飛車を5筋に回してぶつけます。黒沢六段は飛車交換を避け、角をぶつけて交換します。菅井八段は▲2二角~▲5五角成と馬を作りますが、黒沢六段は△4五桂~△6七角と攻め掛かります。菅井八段は1分程考えて角取りに▲7六銀と打ち、黒沢六段も1分程考えて飛車角交換してから△3七歩成と"と金"を作ります。黒沢六段が金取りに△4九飛と打つと、菅井八段は力強い手つきで馬のラインに角を打ち、金を取らせる代わりに飛車取りに▲7六桂と打ちます。黒沢六段が飛車を取らせる代わりに△6三歩と打って馬と角のラインを遮断すると、菅井八段は▲3一飛と打ち込んで反撃開始です。黒沢六段が9筋から端攻めすると、菅井八段は飛車で香を取ってから▲7六銀と引きます。黒沢六段は2分半程考えて△4一歩と打ち、先手の馬が動くと竜を素抜ける位置に変えて馬取りに△5四銀と打ちますが、菅井八段は▲8三香と王手で打って後手陣の金を1枚剥がします。解説の伊藤六段が「熱い終盤だ!」と叫ぶ難解な局面となり、ギリギリの寄せ合いとなりましたが、最後は駒得となった菅井八段が寄せ切りました。
チーム糸谷:3勝 - チーム菅井:3勝

七局目:糸谷哲郎八段 vs 久保利明九段

またもタイスコアとなり、チーム糸谷はリーダーが出陣します。後手の久保九段が三間飛車に振り、この試合で始めて本来の振り飛車を見せます。久保九段がミレニアムを目指すと、糸谷八段は左美濃から銀冠に組み替えます。お互いに充分に組み合い、久保九段が5筋の歩を突き捨ててから飛車を5筋に振り直します。糸谷八段が▲5四歩と垂らすと、久保九段は少し考えて△5五銀と前進します。糸谷八段は2筋の歩を突き捨てて桂頭に▲2二歩と打ちますが、久保九段は桂を取らせる間に6筋の歩を伸ばして攻め掛かります。糸谷八段は飛金両取りに▲6四桂と打って攻め合い、角取りに▲3一飛と打ち込みます。お互いに金銀を剥がしては補強し、久保九段が金取りに△6五桂と打つと、糸谷八段は▲7一角からの連続王手で竜を作り▲6五竜と桂を外します。どちらが勝つのかわからない白熱の終盤戦となりましたが、最後は糸谷八段が▲6六歩と打って自陣を固めると▲9五桂と歩頭に打って寄せ切りました。
チーム糸谷:4勝 - チーム菅井:3勝

八局目:西田拓也五段 vs 菅井竜也八段

後がなくなったチーム菅井は、リーダーが出陣します。作戦会議で「普段はやらない恥ずかしい作戦をやってみようかな」と話していた菅井八段は、3手目に角を交換して三間飛車を封じ、西田五段の向かい飛車という形で対抗型になりました。左美濃と美濃囲いでお互いに似たような陣形に構えると、西田五段が飛車を4筋に振り直し、菅井八段も飛車を4筋に回します。ジリジリした駒組みが続き、西田五段は高美濃に、菅井八段は銀冠に組み替えます。菅井八段が飛車を2筋に戻した瞬間、西田五段が4筋から仕掛けます。菅井八段が▲4五同歩と応じると、西田五段は△4六角と打ちます。菅井八段は1分半程考えて▲2七飛と上がって桂に紐を付け、西田五段が△4五桂と跳ねると飛香両取りに▲3三角と打ちます。西田五段は少し頭を抱える仕草を見せて1分程考え、△3七桂成とお互いに飛車と桂を取り合います。両者とも敵陣に飛車を打ち込み、西田五段が成桂を作って銀を1枚剥がすと、菅井八段も金取りに▲5三桂と打って銀を1枚剥がします。西田五段は△7七銀から寄せに入り、鮮やかな即詰みに討ち取りました。
チーム糸谷:5勝 - チーム菅井:3勝

第二試合の結果

チーム糸谷は、第一試合での大逆転勝ちの勢いそのままに予選突破を決めました。黒沢六段が四局目までに2勝を挙げると、最後は西田五段が相手のリーダーを破る殊勲の星を挙げて勝負を決めました。リーダーの糸谷八段は1勝1敗でしたが、後輩の2人への信頼を前面に出し、2人が力を出し切れるように仕向ける采配が光ります。超激戦リーグを1位通過したことで、このチームが優勝候補の一角であることを強く印象付けました。
チーム菅井は、相手に振り飛車党が2人いたことで不慣れな居飛車での戦いを強いられることが多く、本来の力を出し切れなかったかもしれません。リーダーの菅井八段は2勝して気を吐きましたが、久保九段は3局中2局を居飛車で戦い白星には恵まれませんでした。初出場の佐藤(和)七段は1勝して緊張もほぐれたと思いますので、次戦では居飛車党を相手に「真・振り飛車」の真価を魅せてくれることを期待します。

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