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「観る将」が観た第15期マイナビ女子オープン五番勝負第五局

6月13日、マイナビ女子オープンの第五局が東京将棋会館で行われました。西山朋佳女王が勝って防衛を果たすのか、里見香奈女流四冠が勝って奪取するのか、非常に注目される一局となりました。

戦型は相振り飛車

西山女王が白地に青い鳥が描かれた着物に紺色の袴で入室し、里見女流四冠が薄黄地に大きな花をあしらった着物と紫色の袴で入室します。最終局のためあらためて振り駒が行われ、先手となった里見女流四冠は中飛車に振り、西山女王は三間飛車に振ります。お互いに陣形を固めると、西山女王が17分考えて角を交換し、両者とも向かい飛車に振り直します。先に里見女流四冠が飛先の歩を交換して最下段に引くと、西山女王も飛先の歩を交換して四段目に引きます。

挑戦者が前へ

西山女王が△4三銀と構えると、里見女流四冠も▲4六銀と前進します。西山女王が飛車を一段目に引くと、里見女流四冠は▲6六角と据えます。里見女流四冠が更に積極的に▲5五銀と出て、西山女王が12分考えたところで昼休となりました。各3時間の持ち時間の内、残り時間は西山女王が1時間54分、里見女流四冠が2時間8分となっています。

女王の反発

西山女王は昼休を挟む15分の熟考で金取りに△2四角と打ち、攻め合いを選択します。里見女流四冠は金を玉側に寄せてかわすと、9筋の歩を突き捨ててから▲8五桂と跳ねます。西山女王が29分の熟考で端に構わず銀取りに△5四歩と突くと、里見女流四冠も28分熟考して▲4四銀とぶつけて銀交換します。西山女王は△4六歩と先手玉のコビンを攻め、4筋の歩を成り捨ててから角取りに△4一飛と回ります。里見女流四冠は▲6六角と引いて辛抱しますが、西山女王は飛車取りに△3八銀と打って畳み掛けます。両者の残り時間が1時間を切り、形勢はわずかに西山女王に傾いてきたようです。

挑戦者の端攻め

里見女流四冠は▲9二歩から端を攻めて桂香を取り合い、飛車を取らせる代わりに銀を取って▲9三角成と馬を作ります。西山女王は△9二歩と打って馬を引かせると、△4四香と打って先手陣への攻撃に厚みを加えます。少し苦しくなってきた里見女流四冠は飛車取りに▲3二銀と打ち、西山女王が銀取りに△4二飛とかわすと構わず△5八桂と打って守ります。西山女王が慌てずに銀取りに△2五桂打と攻め駒を足すと、里見女流四冠は▲3一銀不成~▲3二銀と飛車を追います。

豪快な寄せ

西山女王は飛車を見捨てて△4六歩から先手陣の金銀を剥がします。里見女流四冠は飛車を取りますが、西山女王は再度の△4六歩から寄せに入ります。西山女王が王手で△6八飛と打ち込むと、1分将棋に突入した里見女流四冠は▲4八飛と打って凌ぎます。西山女王が△5八金と打って追撃すると、里見女流四冠は▲5二成銀と後手玉に迫って下駄を預けます。西山女王が金で飛車を取ってから△4六角と飛び出すと、里見女流四冠は金2枚を自陣に投じて粘ります。最後は西山女王が玉頭に△3七飛と豪快に打ち捨てたのが決め手となり、鮮やかな即詰みに討ち取りました。

決着局を制したのは

本局は里見女流四冠が序盤から積極的な動きを見せましたが、西山女王が怯まず反発して先手の玉頭に戦力を集め、一気に押しつぶしてしまいました。西山女王らしい豪腕が炸裂した、快勝だったと思います。西山女王は3勝2敗で防衛を果たし、5連覇を達成したことにより永世女王の資格を取得するとともに、女流棋士転向後のタイトル獲得が3期となり女流四段に昇段となりました。
里見女流四冠は女流王位の防衛に続く女王奪還は惜しくもならず、両者による春の十番勝負は互いに防衛し合うという結果となりました。終局後の会見で今後への意気込みを聞かれ「一つ一つ成長していって、タイトル戦ごとに見てくださっている方々に少しでもいつもと違うなと思ってもらえるよう頑張りたい」と話した西山女王が、里見女流四冠と繰り広げるであろう激闘を楽しみにしたいと思います。

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