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「観る将」が観た第47期棋王戦挑決二番勝負第一局

12月21日、棋王戦挑戦者決定二番勝負第一局が行われました。挑戦者決定トーナメントを優勝した永瀬拓矢王座と、敗者復活戦を勝ち上がった郷田真隆九段の顔合わせとなっています。永瀬王座は3回戦からの登場で、稲葉八段、木村九段、豊島九段に勝ち、決勝で佐藤(康)九段を降しています。郷田九段は1回戦から屋敷九段、瀬川六段、久保九段、斎藤(慎)八段に勝ち、準決勝で佐藤(康)九段に敗れて敗者復活戦に回り、豊島九段に勝ち、佐藤(康)九段にリベンジを果たして挑決二番勝負に駒を進めました。

挑決トーナメント優勝の永瀬王座にはアドバンテージがあり、1勝すれば挑戦権獲得となります。郷田九段は挑戦権獲得には2連勝が必要となりますが、前期は敗者復活戦を勝ち上がった糸谷八段が挑決二番勝負に連勝して挑戦権を獲得していますので、まずは本局に勝って勢いをつけて第二局に臨みたいところです。

振り駒で先手となった郷田九段は昔ながらの矢倉に組み、永瀬王座は中住まいのままバランス重視の駒組みを進めます。永瀬王座が4筋の位を取り△4四角と好位置に据えると、郷田九段は▲9八香と上がって穴熊を目指します。永瀬王座が次の42手目を考慮中に昼休となりました。AIの評価値はほぼ互角、各4時間の持ち時間の内、残り時間は永瀬王座が2時間48分、郷田九段が3時間33分と少し差が付いています。

永瀬王座は9筋の位を取ると、郷田九段は穴熊に潜って右銀も自玉の側に引き付けます。永瀬王座は8筋の歩を突き捨て、3筋の歩も交換して8筋の継ぎ歩攻めを狙います。郷田九段が▲8八銀と引いて継ぎ歩攻めに備えると、永瀬王座は△8六飛と歩を取り返してから△3四歩と打って自陣の傷を消します。

じっくりした駒組みが続くかと思われましたが、郷田九段が4筋の歩交換を狙うと、永瀬王座は9筋から端攻めを決行します。永瀬王座が△8五桂から銀桂交換を果たすと、郷田九段も▲2六角と上がって角交換します。永瀬王座は先手陣の香を吊り上げてから△6六銀成とタダで取られる位置に成銀を作りますが、この成銀を金で取ると飛金両取りに角を打たれるため、郷田九段は飛車を守るために▲3五歩と突きます。永瀬王座は成銀で先手陣の金を1枚剥がし、更にもう1枚の金を狙って△6八角と打ちます。AIの評価値は永瀬王座の73%と大きく傾いてきました。

郷田九段は△3五角成と馬を作られると攻めの糸口がなくなるため▲3四歩と突きますが、永瀬王座は△9五歩から後手陣に攻め掛かります。永瀬王座は角を金と刺し違え、取った金を△7八金と打って先手陣の銀桂を剥がし、郷田九段の最後の反撃をかわして即詰みに討ち取りました。

本局は郷田九段が矢倉から穴熊の堅陣を築き、バランス型の布陣を敷いた永瀬王座が端から攻め掛かる展開となりました。永瀬王座は自陣に隙を作らず、少しずつの得を積み上げながら先手の堅陣を切り崩す快勝となりました。

この結果、永瀬王座は2月に開幕する棋王戦五番勝負で、10連覇を目指す渡辺棋王に挑むことになりました。1月に開幕する王将戦に続いてタイトルホルダー同士の顔合わせになりましたので、白熱した好勝負を期待したいと思います。

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