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第1回ABEMA師弟トーナメント予選Bリーグ1位決定戦

1月29日、ABEMA師弟トーナメント予選Bリーグ1位決定戦が放映されました。1回戦を3勝0敗で圧勝したチーム鈴木「大内組」と、フルセットの激闘を制したチーム中田「博多侍」の顔合わせとなっています。

■一局目 梶浦宏孝七段 ● vs 〇 佐藤天彦九段
両チームとも弟子が先陣を切ります。後手の佐藤九段が横歩取りに誘導し、梶浦七段も受けて立ちました。佐藤九段は△3三桂と珍しい陣形から△2三金と上がって飛車を追い返し、飛車を2筋に転回します。梶浦七段は7筋の歩を伸ばし▲7六飛と回りますが、佐藤九段は△8四歩と打ってから△8三銀と上がって受け止めます。ジリジリした駒組みが続き、梶浦七段は飛車を8筋に回して後手の銀を押し戻します。佐藤九段が△3五歩から金銀交換して飛先を軽くすると、梶浦七段は角桂両取りに▲3二金と打ち桂得となります。佐藤九段が十字飛車の狙いを秘めて△2六歩と打つと、梶浦七段は少考して▲3七玉と顔面受けします。佐藤九段は△4八銀~△2七飛成と王手飛車で飛車を取りますが、梶浦七段も王手角取りに▲4一飛と打ち角を取り返します。華々しい駒の取り合いとなり、駒割りは角桂と銀の交換で先手の駒得ですが、佐藤九段は敵陣に飛車を打って寄せに入ります。梶浦七段は懸命の粘りを見せましたが、佐藤九段は金を打って先手玉の上部への脱出を阻止して寄せ切りました。

■二局目 鈴木大介九段 〇 vs ● 佐藤天彦九段
チーム中田は弟子の連投で、一気に王手を掛けに行きます。後手の鈴木九段が四間飛車に振ると、佐藤九段は居飛車穴熊を目指します。鈴木九段が1回戦の都成七段戦と同様に飛車を浮いて3筋に回し飛先の歩を交換すると、佐藤九段は▲6八角と引いてから▲5五歩と仕掛けます。鈴木九段が力強い手つきで△6五歩と突くと、佐藤九段は飛車取りに▲4五歩と角道を開けます。鈴木九段はため息をついてから飛車を逃げますが、佐藤九段は金を前進して飛車を追います。鈴木九段は飛車取りを手抜いて角取りに△6七歩と打ち、金を斜め上に誘ってから△7八銀と打ち込みます。佐藤九段は▲5六銀と打って金に紐を付けますが、時間を4分以上残していた鈴木九段は2分程考えてから△6七銀不成と金を取り△5七金と角銀両取りに打ち込みます。佐藤九段は間髪入れずに▲5五歩と打ち、角を取らせて落ち着かせますが、先手の穴熊はかなり薄くなったように見えます。鈴木九段は敵陣に角を打って馬を作り、馬を取らせる間に飛車を取ります。鈴木九段が取った飛車を敵陣に打ち込むと、時間に追われた佐藤九段は金を投入して穴熊の再生を図ります。最後は佐藤九段が馬を切って反撃しますが、大きく駒得となった鈴木九段が2枚竜と馬と角の強力な攻め駒で詰めろを掛けて寄せ切りました。

■三局目 鈴木大介九段 〇 vs ● 中田功八段
チーム鈴木は勝った師匠が連投し、今大会無敗の師匠同士の対決が実現しました。先手の鈴木九段が初手▲5六歩と突くと、中田八段は15秒程呼吸を整えてから角道を開けます。鈴木九段が中飛車に振ると、中田八段は4手目に更に45秒程考えて5筋の歩を突きます。振り飛車党の中田八段が居飛車を選択し、対抗形の将棋となりました。中田八段が△4四銀と出ると、鈴木九段は珍しく2分以上の長考で▲4五歩と仕掛け5筋の歩を交換します。中田八段が△3三桂と銀に紐を付けると、鈴木九段は更に時間を使って▲7一角と打ち込みます。中田八段が△8八角と打って馬を作ると、時間にも追われて苦しそうな鈴木九段は▲8五飛とぶつけて飛車を交換します。中田八段が△8三飛と自陣に打つと、師弟会議室の佐藤九段は「おぉー、えぇーっ」と声を上げ、梶浦七段は「これは結構良くなった」とつぶやきます。鈴木九段が▲7二飛と打ち込み竜を作ると、中田八段は馬を寄せて先手玉に迫ります。鈴木九段が歩で馬の利きを止めてから攻防に▲4八香と打つと、中田八段は1筋の歩を突いて端を詰めます。最後は鈴木九段が▲6五馬と引き、4三の地点に戦力を集中させて寄せ切りました。

■四局目 梶浦宏孝七段 〇 vs ● 中田功八段
王手を掛けたチーム鈴木は「楽しみに見てます」と弟子を送り出します。先手の中田八段が中飛車に振り飛先の歩を交換すると、梶浦七段は△7三銀と出てから△7五歩と仕掛けます。中田八段は▲5五歩~▲4五歩と反発し、飛角銀で攻め掛かります。梶浦七段が飛車を5筋に回して受けると、中田八段は左金を前進して銀と交換し、少考して一度背筋を伸ばしてから▲4三銀と打ち込みます。梶浦七段は構わず角の利きを活かして△4八金と打ち、先手陣の金を剥がしてから△5七角成と馬を作ります。中田八段が▲4八金と打つと、梶浦七段は馬を飛車と刺し違えて角取りに△7八飛と打ち込みます。中田八段が▲3二銀成と王手で金を取り▲4三金と打ち込むと、梶浦七段は△4二金と埋めます。同じ手順が繰り返され、師弟会議室の鈴木九段が「千日手でいいよ」とつぶやく中、千日手が成立しました。
指し直し局は、後手となった中田八段が得意とする三間飛車に振り、梶浦七段は穴熊を目指します。中田八段が△5四銀と前進すると、梶浦七段は少考で相手の歩頭に▲2四角と飛び出す奇襲を仕掛けます。師弟会議室では鈴木九段が「何それ」と苦笑しています。歩で角を取ると2筋を突破されるため、中田八段は△2二飛と寄り、梶浦七段は角を交換します。中田八段が△3九角と打って馬を作ると、梶浦七段は飛車を3筋に寄せて後手の桂頭を狙います。梶浦七段が銀交換すると、中田八段は9筋の端攻めで香を吊り上げてから△2五桂と先逃げし先手の飛車を押さえ込みます。梶浦七段が"と金"を作って後手陣に攻め込むと、中田八段は馬を飛車と交換し△2八飛と打ち込みます。梶浦七段は▲4四角と打ち、歩で銀を剥がすと角をもう1枚の銀と刺し違えて▲7三歩成と急所に"と金"を作ります。中田八段は"と金"を作って先手陣の金を1枚剥がし攻防に△5六角と打ちますが、梶浦七段も▲3五角と攻防に打ち返すと、しばらく見つめていた中田八段は投了を告げました。

【チーム鈴木 3勝 vs チーム中田 1勝】
チーム鈴木は、師匠が1回戦から4戦4勝と絶好調で、チームの予選1位突破を牽引しました。弟子の梶浦七段も着実に白星を挙げ、チームの勝利に貢献しています。このチームは師弟会議室の雰囲気が非常に和やかなのが印象的で、師匠と弟子の程良い距離感が相乗効果となって、両者の実力を存分に引き出しているように感じます。
チーム中田は、弟子の連投で連勝するという目論見が外れ、1回戦では2勝した師匠も連敗して流れを取り戻せませんでした。2位決定戦に回りますが、巻き返しに期待したいと思います。

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