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第5回ABEMAトーナメント 予選Cリーグ第三試合

6月11日に、ABEMAトーナメントの予選Cリーグ第三試合が放映されました。ともに初戦を落としたチーム豊島「TMF」とチーム山崎「厄払い」の顔合わせとなり、勝ったチームが予選突破を果たす一戦となりました。

一局目:深浦康市九段 vs 松尾歩八段

チーム豊島は第一試合で2勝した深浦九段が先陣を切ります。先手の深浦九段が角道を止めて雁木に構えると、松尾八段は矢倉に構えます。お互いに手待ちをして千日手の雰囲気も漂いましたが、深浦九段が4筋から仕掛けて桂を跳ねて打開します。松尾八段が9筋の歩を突き捨て△9六歩と垂らすと、深浦九段は角取りに▲6五歩と突いて桂で取らせて▲6六歩と打って捕獲します。松尾八段は8筋の歩を伸ばしますが、深浦九段は構わず桂を取って角に当てます。松尾八段が8筋の歩を成り捨て△9五角と飛び出すと、深浦九段は▲9六香と走って角に当てます。松尾八段が△7七角成と金を食いちぎり△9五歩と香取りに打つと、深浦九段は▲6二角と打ち込みます。松尾八段は△5五歩と突いて4四の地点での2枚替えを防ぎますが、深浦九段は▲8四桂と後手の飛車の動きを封じます。残り時間が20秒を切った松尾八段は7筋の歩を伸ばし、△7一香~△7六飛と細い攻めをつなぎます。深浦九段は飛車角交換に応じ、桂を取らせて後手からの攻めを凌ぐと、▲2七香と打って後手の玉頭から攻め掛かります。松尾八段は自陣に桂を打って粘りますが、深浦九段から継ぎ歩で攻められると潔く投了を告げました。
チーム豊島:1勝 - チーム山崎:0勝

二局目:丸山忠久九段 vs 山崎隆之八段

一局目を落としたチーム山崎は、流れを変えるべくリーダーが出陣します。先手の山崎八段が初手▲6八銀と指すと、意表を突かれた丸山九段は15秒ほど考えて飛先の歩を伸ばします。丸山九段が飛先の歩を交換し△8三銀と棒銀を見せると、山崎八段は角道を開けて角を交換します。丸山九段が△9五銀~△8六歩と攻め掛かると、山崎八段は▲8五角と打って防ぎます。丸山九段が飛車取りに△6四角と打つと、山崎八段は2分程考えて▲4六銀と受けます。丸山九段が△8六銀と出て金銀交換をすると、山崎八段は更に1分半程考えて▲6三角成と馬を作ります。作戦会議室では深浦九段が「時間をあまり使わない方が。どうせ変な戦いなんだから」とつぶやいています。丸山九段が1分半程考えて△7七角成と桂を食いちぎって△8九飛成と王手で竜を作ると、山崎八段は▲6九銀と持ち駒を投じて受けます。丸山九段が△7九金と追撃すると、山崎八段は▲6八飛と回して凌ぎます。丸山九段は△6二香と打って馬を追い、6九の地点で駒を清算すると△6七香成と先手玉に迫ります。丸山九段が竜を作って詰めろを掛けると、山崎八段は▲6三桂の王手から▲6二飛と攻防に打ちます。お互いに時間に追われながらの激戦となりましたが、丸山九段は冷静に△5二金と打って飛車を追い、自陣を安全にしてから即詰みに討ち取りました。
チーム豊島:2勝 - チーム山崎:0勝

三局目:豊島将之九段 vs 阿久津主税八段

チーム豊島は満を持してリーダーが登場です。先手の豊島九段が角を交換すると、阿久津八段は桂で取ってから四間飛車に振ります。豊島九段は淡々と左美濃に構え、阿久津八段も美濃囲いに構えると△4五歩~△3五歩と最近では珍しい立石流を目指します。豊島九段が飛先の歩を交換して六段目に引くと、阿久津八段は△2四飛とぶつけて飛車を交換します。豊島九段が▲3四角と打つと、阿久津八段は2分近く考えて△4三角と合わせます。作戦会議室では山崎八段が「えっ」と叫び、丸山九段は「良くなったんじゃない」とつぶやきます。豊島九段は角を交換して▲2一飛と打ち込み、取れる香を取らずに▲2四飛成としますが、阿久津八段は△2五飛と合わせて再び飛車交換します。豊島九段が▲2八飛と桂取りに自陣飛車を打つと、阿久津八段は金で桂に紐を付けます。豊島九段は金取りに▲2三角と打ちますが、阿久津八段はじっと銀を上がって金に紐を付けます。作戦会議室では山崎八段が「逆転したんじゃないですか」とつぶやきます。阿久津八段が△4九飛~△3九飛成と竜を作って反撃すると、豊島九段は▲1五馬と引き付けます。阿久津八段が飛車取りに△4四角と打つと、豊島九段は飛角交換に応じ▲5九馬と守りを固めます。阿久津八段は△6九飛と2枚飛車で攻めますが、豊島九段は▲7九玉と引いて玉で金を守ります。両者に時間に追われる中ギリギリの攻防が延々と続く大熱戦となりましたが、最後は阿久津八段が△5五香と打って即詰みに討ち取りました。
チーム豊島:2勝 - チーム山崎:1勝

四局目:丸山忠久九段 vs 松尾歩八段

チーム山崎は流れに乗るべく松尾八段が出陣します。後手の丸山九段が伝家の宝刀一手損角換わりに誘導すると、松尾八段は堂々と受けて立ち相腰掛け銀の将棋となります。松尾八段は▲4六角と手放して先手の陣形を牽制し、丸山九段が右玉に組み替えると▲9八香と上がって穴熊を目指します。お互いに手待ちをして時間を増やしていましたが、松尾八段が▲5八飛と回すと、丸山九段は1分程考えて4筋の歩をぶつけます。松尾八段も1分程考えて5筋の歩をぶつけると、丸山九段は△5四同歩と応じてから飛車を4筋に回します。松尾八段が更に1分程考え6筋の歩もぶつけて桂で取らせると、丸山九段は△4九角と飛車取りに打ちます。お互いに桂を取り合い松尾八段が▲8四角と飛び出すと、丸山九段は手堅く桂を打って守ります。松尾八段が▲3八銀~▲7七金と角を追うと、丸山九段は△7七同馬と刺し違えます。松尾八段は▲7七同桂と取り▲7六桂と打って2枚の桂で後手の玉頭に攻め掛かると、丸山九段は堂々と△7五歩と突いて催促します。松尾八段が角で歩を払うと、丸山九段は角取りに△7四銀と出ます。松尾八段は構わず王手で▲6四桂と跳ね、▲5二角と打って角を取られる間に飛車を取ります。丸山九段は飛車取りに△5七金と打ち、松尾八段も王手で▲5一飛と打ち、またもどちらが勝つのかわからない激闘になりました。最後は松尾八段が飛車を取らせる間に上下からの挟撃態勢を作り、丸山九段の投了となりました。
チーム豊島:2勝 - チーム山崎:2勝

五局目:豊島将之九段 vs 山崎隆之八段

チーム山崎は「41年生きてきて、ここで負けるのが私なんですけど」と弱気なコメントを残してリーダーが出陣し、リーダー同士の対決となりました。後手の山崎八段は2手目から△3二金~△6二銀~△5二金となかなか歩を突かずに駒組みを進めます。豊島九段は平然と飛先の歩を伸ばし角道を開けると、飛先の歩を交換してから6筋の歩も取ります。山崎八段が銀で飛車を追い返して雁木に構えると、豊島九段も雁木に構えます。山崎八段は5筋の位を取ってから飛車を7筋に寄せ、飛先の歩を交換して1歩確保します。豊島九段が7筋の歩を突いて後手の桂頭を狙うと、山崎八段は6筋の歩を突き捨ててから△7五角と取ります。豊島九段は歩で角を追いますが、山崎八段は8筋の歩を突き捨ててから9筋の歩も突き捨てて△9七歩と垂らします。豊島九段は▲8七金と上がって凌ぐと、逆に1筋から端攻めし飛車で香を取って▲1一飛成と竜を作ります。山崎八段も△4五桂~△3七桂成と桂を取りますが、豊島九段の▲2六香が詰めろになります。山崎八段は桂を打って凌ぎますが、豊島九段は▲1二香成と援軍を送って攻め込みます。山崎八段も金を見捨てて△8五桂~△8三香と反撃しますが、豊島九段は▲8二歩~▲9五角とギリギリで凌ぎます。豊島九段が角を捕獲し王手飛車から飛車を奪うと、山崎八段は上部に脱出して入玉を果たします。豊島九段は大駒4枚を手にしましたが相入玉は目指さず、山崎八段も執念の粘りを見せましたが刀折れ矢尽きての投了となりました。
チーム豊島:3勝 - チーム山崎:2勝

六局目:丸山忠久九段 vs 松尾歩八段

チーム豊島は後手番を買って出た丸山九段が出陣し、四局目と同じ顔合わせとなりました。前局と同様丸山九段が一手損角換わりに誘導し、松尾八段も受けて立ち4筋の位を取ります。丸山九段は8筋と4筋の歩を交換して歩を2枚駒台に乗せ、松尾八段が飛車を8筋に回すと、9筋の歩を突き捨ててから7筋の歩もぶつけます。松尾八段が▲8五桂と跳ねて桂交換すると、丸山九段は早くも残り時間が1分となり1筋の歩をぶつけます。松尾八段は構わず▲3五歩~▲2六桂から銀桂交換し▲2二歩と桂頭を叩きますが、丸山九段は△1三桂とかわします。松尾八段が4筋の歩を突き捨て5筋の歩も歩もぶつけると、丸山九段は△2七角と金取りに打ちます。松尾八段も▲5八角と打ち返し▲2八歩と打って角金交換を催促します。松尾八段は▲5六桂と打ちますが、丸山九段も銀取りに△5五桂と打ち返し△2五金と角取りに打って催促します。松尾八段は角で金を食いちぎり、持ち駒の角を▲6二角と打って▲4四角成と馬を作ります。丸山九段が△4三歩と馬に当てると、松尾八段は▲7二銀と打って馬を取られる間に飛車を取り返します。お互いに時間に追われる中、松尾八段は▲5二飛と打って後手玉に迫ります。丸山九段も必死の反撃を返しますが届かず、松尾八段が即詰みに討ち取りました。
チーム豊島:3勝 - チーム山崎:3勝

七局目:深浦康市九段 vs 阿久津主税八段

タイスコアとなり、両チームともこの試合で1勝している好調のメンバーが出陣します。後手の阿久津八段が向かい飛車に振り美濃囲いに構えると、深浦九段も左美濃に構えます。阿久津八段は△3五歩と仕掛けて角交換し、△3六歩と伸ばして飛車で取らせて△2七角と打ち込みます。阿久津八段が馬を作ると、深浦九段は2筋の歩を成り捨て後手陣を乱してから▲4四角と打ちます。阿久津八段が飛車取りに△2五歩と打つと、深浦九段は桂で取り、銀取りに▲3五歩と打って銀桂交換します。阿久津八段が△3七歩と垂らして"と金"を作ると、深浦九段は▲5八金とかわしてから飛金両取りに▲4三銀と打ちます。阿久津八段は角取りに△6二飛と寄って凌ぎますが、深浦九段は馬を作り飛車と刺し違えて金取りに▲6六飛と回します。阿久津八段は△5二金とかわしますが、深浦九段は取った飛車を▲4一飛と打ち込みます。阿久津八段は△5八"と"と金を取りますが、深浦九段は構わず▲6四桂と金銀両取りに打ち、▲7二桂成と銀を取ってから▲6三成銀と後手玉に迫ります。阿久津八段は金で取り、自陣に飛車を投じて粘りましたが、深浦九段はそのまま即詰みに討ち取りました。
チーム豊島:4勝 - チーム山崎:3勝

八局目:豊島将之九段 vs 山崎隆之八段

両チームとも連投は避け、五局目に続いてリーダー対決が実現しました。先手の山崎八段が相掛かりに誘導し、飛先の歩を交換して七段目に引くと、豊島九段も飛先の歩を交換して一段目に引きます。豊島九段が△7五歩と伸ばすと、山崎八段は▲7六歩と反発し、角を交換してから▲7四歩と桂頭を叩きます。豊島九段が△9五歩と仕掛けると、山崎八段は▲8六歩と催促します。豊島九段が△8七歩と銀頭を叩くと、山崎八段は金で取ります。豊島九段がノータイムで△7八角と追撃すると、山崎八段は桂を取り合ってから銀取りに▲8四桂と打ちます。豊島九段が構わず△8六歩と金頭を叩くと、山崎八段は銀桂交換してから▲5五角と自陣の銀に紐を付けつつ金取りに打ちます。豊島九段が1分半程考えて△6四桂と辛抱し、△4四銀~△5四桂と角を追うと、山崎八段は銀で桂を食いちぎり▲6五桂と後手陣に迫ります。豊島九段が角取りに△5五銀と打つと、山崎八段は角銀交換に応じ、▲7三歩成~▲7三同桂成と金を取って攻め込みます。豊島九段も△7七歩成と反撃し、銀で取らせて香を取り金取りに△4六香と打ちます。山崎八段が金を取らせる間に▲6三銀成~▲5二銀と後手玉に迫ると、豊島九段は△4四馬と引き付けて守ります。山崎八段は取れる飛車を取らずに馬取りに▲4七香と打ちますが、豊島九段は△2六角と王手で返します。難解な終盤戦になりましたが、最後は馬を取った山崎八段が▲7四角~▲4一飛と打ち込み即詰みに討ち取りました。
チーム豊島:4勝 - チーム山崎:4勝

九局目:深浦康市九段 vs 阿久津主税八段

ついにフルセットにもつれ込み、七局目と同じ顔合わせになりました。振り駒が行われ深浦九段が先手となり、阿久津八段は四間飛車に振り穴熊を目指します。深浦九段が9筋の位を取って角を交換し銀冠に囲うと、阿久津八段は飛車を2筋に振り直します。お互いに負けられない一局であり、慎重に間合いを測る駒組みが続きましたが、深浦九段が4筋から仕掛けます。深浦九段が▲4五同桂と桂を取ると、阿久津八段は取れる桂を取らずに△3七角と打ち込み、銀取りに△4八角成と馬を作ります。深浦九段は▲4六銀と逃げますが、阿久津八段は飛銀両取りに△4七馬と追います。深浦九段は▲4九飛と馬取りでかわすしかありませんが、阿久津八段が飛車取りに△3八馬と入ると同じ手順の繰り返しとなり千日手が成立しました。

九局目(指し直し):深浦康市九段 vs 阿久津主税八段

お互いに3分弱の持ち時間で指し直しとなり、先手となった阿久津八段が今度は居飛車で角換わりに誘導します。深浦九段が6筋の歩を突くと、阿久津八段は▲6三角と打ち込み、敢えて手損して銀を上がらせてから飛車先の歩を交換します。深浦九段は少し時間を使って△6三銀と上がり、手得を活かして銀冠を作ります。阿久津八段が4筋の位を取ると、深浦九段は銀冠から離れて右玉に構えます。再びジリジリした駒組みとなりましたが、深浦九段が6筋から仕掛け、△6五同桂~△6四歩と攻撃の拠点を作ります。阿久津八段が▲6八角と自陣角を打つと、深浦九段は△4四歩とぶつけて交換し△3五歩と桂頭を狙います。阿久津八段が▲4五歩と打って桂交換すると、深浦九段は△8四桂と打って先手玉頭への攻め駒を足します。阿久津八段が▲4六金とぶつけて金交換すると、深浦九段はすぐに△4五金と打ち直して先手の角の動きを制限します。阿久津八段は飛車を4筋に回してから▲2八角と引き、▲6五銀と桂を食いちぎってから銀取りに▲6四歩と打って攻め掛かり、駒音高く金取りに▲5七桂と打ちます。深浦九段は銀取りに△6六歩と伸ばして攻め合いを選択し、阿久津八段は金と銀を取り合ってから6筋の歩を成り捨て▲7三金と王手で打ち込みます。両者ともに時間に追われながらの激戦となり、お互いに飛車を取り合っての寄せ合いとなりましたが、深浦九段は王手角取りに△2七飛と打って角を抜きます。阿久津八段は▲5三金の王手から後手玉を詰ませにいきますが際どく詰まず、深浦九段が△6九角の王手から即詰みに討ち取りました。作戦会議室では豊島九段が「いやぁ凄い勝負でした」と笑顔を浮かべました。
チーム豊島:5勝 - チーム山崎:4勝

第三試合の結果

チーム豊島は、深浦九段が一局目に勝って波に乗ると、決着局では千日手指し直し局の激闘を制してチームの勝利に大きく貢献しました。丸山九段も二局目に今大会好調の相手リーダーを破ってチームに流れを呼び込み、リーダーの豊島九段もタイスコアに追い付かれた五局目に勝って嫌な雰囲気を断ち切りました。豊島九段がフィッシャールールで実力に見合う結果が出せない中、深浦九段の「リーダーが本戦で活躍する姿を見たい」という強い想いがチームの予選突破の原動力になったと思います。
チーム山崎は、阿久津八段が三局目に団体戦では自身初となる白星を挙げ、松尾八段も流れに乗って初勝利を挙げた辺りでは逆転勝ちの雰囲気も漂いました。山崎八段は五局目に敗れて自虐的な言葉が多くなりながらも、カド番の八局目に相手のリーダーを破ってフルセットに持ち込み、リーダーとしての役割を果たしました。結果的にチームは惜しくも予選敗退となりましたが、内容的には激戦の好局が多く、観る者にアラフォー3人の実力を示してくれたと感じます。

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