見出し画像

第5回ABEMAトーナメント 本戦2回戦第四試合

9月3日に、ABEMAトーナメントの本戦2回戦第四試合が行われました。Eリーグ1位のチーム渡辺「マンモス」と、Dリーグ1位のチーム天彦「HADO」の顔合わせとなっています。ベスト4最後の椅子を賭けた対戦となりました。

一局目:近藤誠也七段 vs 佐藤天彦九段

チーム天彦は予選で5戦全勝のリーダーが先陣を切ります。先手の近藤七段が矢倉を選択し、佐藤九段は急戦調の駒組みを進めます。近藤七段が3筋から仕掛けると、佐藤九段は7筋の歩を突き捨ててから3筋の歩を取ります。近藤七段が銀をぶつけると、佐藤九段は△7六歩と叩いて銀を引かせてから銀交換に応じます。近藤七段は▲5三銀と金取りに打ちますが、佐藤九段は構わず△6五桂と跳ねます。近藤七段が馬を引き付けて守ると、佐藤九段は王手で△1三角と覗きます。近藤七段は歩で角を近づけてから▲4六金と打って角に当てますが、佐藤九段は構わず△5七銀と放り込んで攻め掛かります。近藤七段が馬付きの堅陣で凌ぎきるかに見えましたが、佐藤九段は角銀を取らせる代わりに飛車を取って先手陣に打ち込みます。最後は両者時間に追われる中、佐藤九段が角で銀を食いちぎって香を走り、鮮やかな即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:0勝 - チーム天彦:1勝

二局目:渡辺明名人 vs 佐々木大地七段

先行されたチーム渡辺は予選で5勝1敗と好調だったリーダーで巻き返しを図ります。先手の佐々木七段が得意の相掛かりに誘導し、渡辺名人は慎重に駒組みを進めて、お互いに飛先の歩を交換します。渡辺名人が7筋の歩を突くと、佐々木七段は飛先の歩を合わせて横歩取りを狙います。渡辺名人は7筋の歩を伸ばして飛車の横利きを通しますが、佐々木七段はノータイムで▲2二飛成と角を食いちぎり、香取りと2枚替えの両狙いで▲5五角と打ちます。渡辺名人は桂を跳ねて2枚替えを避けますが、佐々木七段は香を取って馬を作り▲2八香と銀取りに打ちます。渡辺名人は飛車を7筋に寄せ、桂も跳ねて突破を目指します。佐々木七段は銀香交換し、取った銀で7筋に垂れた歩を払いますが、渡辺名人は飛車を5筋の戻して△5五香と打ち戦力を集中します。佐々木七段は銀で桂を食いちぎり、角で香を食いちぎって飛車取りに▲5六香と打ちます。渡辺名人は飛車を見捨てて△6四角と打ち、飛車を取らせて香を取り返した角を攻防に利かせます。佐々木七段は▲7五馬と引いて後手の玉頭を狙いますが、渡辺名人は銀と香を打って受けます。佐々木七段は角で香を食いちぎって攻めをつなぎますが、渡辺名人も相手の歩頭に△5六桂と打って反撃します。佐々木七段は後手陣に飛車を打ち、詰めろを掛けて下駄を預けますが、渡辺名人は△5七桂から長手数の即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:1勝 - チーム天彦:1勝

三局目:渡辺和史五段 vs 梶浦宏孝七段

両チームとも、公式戦でも活躍が目覚ましい新鋭が初登場します。先手の渡辺五段が角道を止めて雁木に組むと、梶浦七段はバランス重視の土居矢倉に構えます。渡辺五段が4筋の歩を突き捨て3筋の歩をぶつけると、梶浦七段は△4四銀と上がって受けます。渡辺五段は1筋の歩も突き捨ててから▲3六銀と力を溜めると、梶浦七段は6筋の歩を突き捨ててから8筋を継ぎ歩攻めします。梶浦七段が3筋の歩を取り込んで銀に当てると、渡辺五段は強く▲4五銀と上がってぶつけます。梶浦七段が8筋に垂れ歩を打つと、渡辺五段は玉を早逃げします。梶浦七段は銀を交換して△8七銀と打ち込みますが、渡辺五段は▲3三歩と叩いて桂を跳ねさせてから▲4四歩と金頭を叩いて攻め掛かります。梶浦七段は△3四金と上がってかわしますが、渡辺五段は▲4三銀から清算して▲8六角と王手で飛び出します。梶浦七段は相手の歩頭に△7五銀と打って凌ぎますが、渡辺五段は▲7一角と王手で打ち込んで後手玉に迫ります。梶浦七段も△6七歩成と銀を取って王手で先手玉に迫りますが届かず、渡辺五段が▲4四歩から流れるように寄せ切りました。
チーム渡辺:2勝 - チーム天彦:1勝

四局目:近藤誠也七段 vs 佐々木大地七段

チーム天彦は、先手の利を活かして欲しいと佐々木七段を送り出します。佐々木七段は二局目と同様相掛かりに誘導し、お互いに飛先の歩を交換します。佐々木七段が▲5六銀と腰掛けると、近藤七段は角を交換してから3筋の歩を伸ばして交換します。近藤七段が6筋の歩を突き捨て△6六歩と垂らし、更に7筋の歩もぶつけると、佐々木七段は1分半程考えて▲7七銀と上がって受けます。近藤七段は△6七角と打ち込み、金を食いちぎって△6七金と攻め掛かります。佐々木七段は▲8七玉と上がってかわしますが、近藤七段は△6五桂と跳ねて銀を下がらせてから△8五歩と合わせます。佐々木七段は▲4五桂と跳ね、王手銀取りに▲3四桂と打って後手玉に迫りますが届かず、近藤七段は△7五銀から即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:3勝 - チーム天彦:1勝

五局目:渡辺明名人 vs 佐藤天彦九段

いよいよ今大会絶好調の両リーダーの対決が実現しました。先手の渡辺名人が矢倉に構えると、佐藤九段は急戦調の駒組みから雁木に組んでいったん落ち着きます。千日手の気配も漂う中、渡辺名人が4筋の歩を突いて角道が止まった瞬間、佐藤九段は6筋の歩を突き捨ててから7筋の歩をぶつけます。渡辺名人は1筋の歩を突き捨ててから7筋の歩を取りますが、佐藤九段は8筋から継ぎ歩で攻め掛かります。渡辺名人も▲1二歩と端を攻めますが、佐藤九段は構わず8筋の歩を取り込みます。渡辺名人が香を取って"と金"を作ると、佐藤九段は銀取りに桂を跳ね、銀桂交換で得た銀を打ち込んで8筋を食い破ります。渡辺名人は歩の連打で後手の飛車の利きを遮断してから、▲2六香と角取りに打って反撃します。佐藤九段が△3八角~△5六角成と馬を作って先手玉を一気に追い詰めると、渡辺名人は王手で後手玉を追いますが届かず投了を告げました。
チーム渡辺:3勝 - チーム天彦:2勝

六局目:渡辺和史五段 vs 梶浦宏孝七段

両チームとも順番通り、三局目と同じ顔合わせになりました。先手の梶浦七段が相掛かりに誘導し、渡辺五段は飛先の歩を交換してから9筋の位を取ります。梶浦七段も飛車期の歩を交換すると、渡辺五段は飛車を7筋によって縦歩取りを狙います。梶浦七段は金で歩を守り▲8七金型の陣形を敷くと、▲2六銀と出て棒銀を目指します。梶浦七段が銀をぶつけて交換すると、渡辺五段は△3六歩と垂らします。梶浦七段は飛先の歩を合わせて3筋に飛車を寄せ垂れ歩を取りにいきますが、渡辺五段は△4五銀と出て許しません。梶浦七段が飛車角交換に応じると、渡辺五段は△2八飛と打ち込みます。梶浦七段も▲1一角成と香を取って馬を作り、▲5五角と打って金桂との2枚替えで後手陣を乱します。渡辺五段が△7九角~△6五桂と攻め掛かると、梶浦七段は馬で香を食いちぎって凌ぎます。渡辺五段は角で銀を食いちぎり△5九角から先手玉に迫ると、梶浦七段の反撃をかわして寄せ切りました。
チーム渡辺:4勝 - チーム天彦:2勝

七局目:近藤誠也七段 vs 佐々木大地七段

後がなくなったチーム天彦は「気分を変えて後手番で」佐々木七段を送り出し、四局目と同じ顔合わせになりました。先手の近藤七段が矢倉に構えると、佐々木七段は右銀を繰り出して5筋から仕掛けます。佐々木七段が飛車を5筋に回し、銀を成り捨ててから銀を取ると、近藤七段は▲5五金と前進して盤面中央を制圧します。佐々木七段が自陣に銀を打って受け止めると、近藤七段も▲2五銀と打って圧力を掛けます。佐々木七段は角で金を食いちぎって飛車を走りますが、近藤七段も角を飛び出して▲9一角成~▲8一馬と桂香を拾います。佐々木七段は竜を作って飛車を追いますが、近藤七段も歩の技で後手陣を乱します。佐々木七段は△8五桂と打って先手玉を上部から押さえ込むと、△7九銀と打って先手玉に迫ります。両者時間に追われる中、近藤七段は桂香を打って後手の玉頭から攻め込みますが、佐々木七段は金銀4枚の堅陣で崩れません。佐々木七段は猛攻を凌ぎ切ると、△5七竜と金を食いちぎって先手玉に襲い掛かり、鮮やかに寄せ切りました。
チーム渡辺:4勝 - チーム天彦:3勝

八局目:渡辺和史五段 vs 梶浦宏孝七段

チーム天彦はリーダーの一存で梶浦七段を送り出し、3局続けて同じ顔合わせになりました。先手の梶浦七段が再び相掛かりに誘導し、六局目と同じ進行をたどります。梶浦七段が▲8七金型の陣形を敷くと、渡辺五段は渡辺名人に指摘されていた△7八角を実行します。梶浦七段は1分半程考えて▲9八角と受けますが、渡辺五段は9筋の歩を突き捨てて馬を作ります。梶浦七段は金銀を前進して後手の飛車に圧力を掛けると、馬取りに▲8九飛と地下鉄飛車を発動します。渡辺五段が歩で近づけてから桂交換し、△9五馬と飛車に当ててかわして飛車を引かせます。渡辺五段は更に△5四歩と銀取りに突きますが、梶浦七段は9筋の歩を突いて馬に当てます。梶浦七段は角で銀を食いちぎって竜を作りますが、渡辺五段も飛車で金を食いちぎって王手銀取りに△7六角と打ち銀を取ります。梶浦七段はもう1枚の飛車を逆サイドに打ち込みますが、渡辺五段は金を投入してがっちり守ります。渡辺五段は馬と角に桂を絡めて先手陣の金桂を剥がし、△5五馬と引いて竜に当てますが、梶浦七段は▲5三香から後手玉に迫ります。渡辺五段は時間に追われながらもギリギリで凌ぎ、桂で先手陣の銀を削ってから馬を飛車と交換します。渡辺五段は△4九飛と打ち込み先手玉を追い詰めたかに見えましたが、梶浦七段は▲8二竜と王手馬取りで馬を抜き息を吹き返します。どちらが勝つのかわからない大激戦となりましたが、渡辺五段は冷静に竜を吊り上げ△7六銀と打ち、△7九金のタダ捨てから鮮やかな即詰みに討ち取りました。
チーム渡辺:5勝 - チーム天彦:3勝

2回戦第四試合の結果

チーム渡辺は、渡辺(和)五段が3戦3勝と圧巻の活躍で準決勝への進出を決めました。予選ではリーダーの渡辺(明)名人から愛のあるダメ出しを受けていましたが、チームの戦力として大きく成長したと思います。一方でエースとして期待された近藤七段が1勝2敗と負け越し不安を感じさせましたが、本来の実力を発揮すればチームは優勝に向けて大きく近づくと思います。
チーム天彦は、リーダーの佐藤(天)九段が2戦2勝と気を吐きましたが、恐らく大会史上初めて予選から無敗のまま姿を消すこととなりました。梶浦七段と佐々木(大)七段は最後まで前向きに伸び伸びと指していましたが、この日は残念ながらチームの勝利に貢献することはできませんでした。リーダーを中心として若い2人が存分に力を発揮し、和やかな雰囲気を失わない好チームだったと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?