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第1回ABEMA師弟トーナメント予選Aリーグ1位決定戦

12月31日、ABEMA師弟トーナメント予選Aリーグ1位決定戦が放映されました。ともに1回戦を3勝0敗で圧勝した、チーム深浦「大地球」とチーム畠山「熱風」の顔合わせとなっています。

■一局目 佐々木大地五段 〇 vs ● 畠山鎮八段
1回戦と同様、チーム深浦は弟子が、チーム畠山は師匠が一局目に登場です。先手の畠山八段が角換わりに誘導し、相腰掛け銀の将棋となりました。畠山八段が上着を脱いで▲4五桂と仕掛け3筋と6筋の歩を突き捨てると、佐々木五段は△3三桂と跳ねて催促します。畠山八段が▲1八角と自陣に打って遠く後手の飛車を睨むと、佐々木五段は1分ほど手を止めて△8二飛と角のラインから外します。畠山八段は飛先の歩を交換し、飛車を引く前に▲6四歩と打って後手の銀を引かせます。畠山八段は更に▲7五歩と後手の桂頭を狙いますが、佐々木五段は飛車を浮いて受けます。畠山八段が▲3三桂成と角道を開けながら桂交換し▲7五桂と6筋突破を狙うと、佐々木五段は金取りに△3六桂と打って角道を遮断します。佐々木五段は△3三角と自陣に打ち、△8五歩から待望の反撃です。畠山八段は▲6三歩成から清算しますが、佐々木五段は△8六歩と取り込み先手の玉頭に攻め掛かります。佐々木五段は△4六桂と角金両取りに打ち、△5八桂成と金を取りますが、畠山八段も▲4六桂から銀を取って後手玉に迫ります。佐々木五段は△2五歩と打って先手の飛車を追い返し、最後に△7八銀と打って寄せ切りました。

■二局目 深浦康市九段 ● vs 〇 斎藤慎太郎八段
チーム深浦は1回戦と同様、二局目に師匠が登場します。先手の深浦九段は最近のエース戦法雁木の駒組みを進め、斎藤八段は△3三桂と跳ねて菊水矢倉に構えます。深浦九段は▲6五歩と角道を開け飛車を4筋に回しますが、斎藤八段は低い陣形のまま相手からの攻めを待ちます。深浦九段が3筋の歩を突いて仕掛けると、斎藤八段も銀取りに5筋の歩を突いて反発します。深浦九段が▲3五歩と金頭を叩くと、斎藤八段も△4八歩と飛頭を叩きます。お互いに手抜いて金と飛車を取り合い、深浦九段が▲4三金と角取りに打ち込みますが、斎藤八段はこれも手抜いて金取りに△4八"と"と引きます。深浦九段は▲4五桂と跳ねて後手の玉頭に戦力を集めますが、斎藤八段は1分30秒ほど考えて残り12秒のところで△4九飛と打って後手玉に迫ります。深浦九段も残り9秒まで考えて▲3三歩成から後手玉に迫り▲2六銀と打って詰めろを掛けると、斎藤八段は△8九金と王手で桂を取って△4三桂と打って凌ぎます。詰むや詰まざるやの際どい攻防となりましたが、時間に追われた深浦九段は寄せ切れず、斎藤八段が即詰みに討ち取りました。深浦九段としては、対局後に弟子に「何やってんすか」と言われてしまう悔しい逆転負けとなりました。

■三局目 佐々木大地五段 〇 vs ● 畠山鎮八段
両チームとも順番を変えず、一局目と同じ顔合わせになりました。先手の畠山八段が作戦を変え相掛かりに誘導すると、佐々木五段も受けて立ちました。佐々木五段が△7五歩と伸ばして先手が角道を開けるのを妨げると、畠山八段は▲4五銀と出て後手の3筋の歩を狙います。佐々木五段は△4四角と出て飛車を追い、8筋の歩を突き捨ててから△6六歩と先手の玉頭の歩をぶつけます。畠山八段は▲4五歩と突いて角を追い、飛車を4筋に回します。佐々木五段は△8四飛と銀取りに引き、畠山八段が銀を引くと△2四飛と回ります。畠山八段は▲5五銀から後手の玉頭を攻めますが、佐々木五段は1筋の端攻めから"と金"を作って△2九"と"と桂を取ります。佐々木五段が王手角取りに△7六桂と打って角を取りますが、畠山八段も王手金取りに▲4四桂と打って金を剥がします。佐々木五段は△6六銀のタダ捨てから△4四飛とぶつけますが、畠山八段は▲4二金の王手から後手玉に迫ります。佐々木五段も飛車を交換して△6六飛から詰めろを掛けますが、畠山八段は△3二飛から連続王手で先手の角と飛車を取って詰めろを解除します。佐々木五段は入玉を果たして自玉の安全を確保すると、小駒の攻めで寄せ切りました。

■四局目 深浦康市九段 ● vs 〇 斎藤慎太郎八段
四局目までに1人2回対局を行うというルールになっており、必然的に二局目と同じ顔合わせになりました。先手の深浦九段は前局と同様に雁木の駒組みを進め、前局の序盤は作戦負けだった斎藤八段は右玉に構えて5筋から仕掛けます。深浦九段が7筋の歩を伸ばして後手の陣形を乱すと、斎藤八段は△6三銀と引いて引き締めます。斎藤八段が8筋の歩を突き捨て△8七歩と垂らすと、深浦九段は▲4五銀~▲3四銀と2筋突破を狙います。金銀交換の後、お互いに竜を作って攻め合いますが、時間に追われた深浦九段が▲2一竜と桂を取ると、斎藤八段は△3一歩と打って竜の横利きを止め△7七"と"と先手玉に迫ります。深浦九段は懸命に後手玉に迫りましたが、斎藤八段は落ち着いて対処し、最後は即詰みに討ち取る快勝となりました。

■五局目 佐々木大地五段 ● vs 〇 斎藤慎太郎八段
フルセットとなり、両チームともこの試合で2勝を挙げている弟子同士の対決となりました。あらためて振り駒が行われ先手となった斎藤八段が相掛かりに誘導し、佐々木五段も受けて立ちました。佐々木五段が飛先の歩を交換して四段目に引き7筋の位を取ると、斎藤八段も飛先の歩を交換して最下段に引きます。斎藤八段が3筋の歩を突き捨て右銀の前進を狙うと、佐々木五段は△6五銀と出て飛車の横利きを通します。佐々木五段が△5五角と歩を取ると、斎藤八段は飛車を3筋に寄せて後手の浮き駒の金を狙い、△3三桂と跳ねさせてから角を追います。佐々木五段が△3七角成と桂を食いちぎると、師弟会議室の深浦九段は「大丈夫か大地」とつぶやきます。佐々木五段が飛車を2筋に回して竜を作ると、斎藤八段は飛角銀で3筋突破を狙います。佐々木五段は竜を引いて3筋を守ると、△6五桂から先手の玉頭を攻めます。斎藤八段は▲2五歩で竜飛交換を強要し、佐々木五段が△6九飛と打ったのに構わず、▲6一飛と打ち込んで詰めろを掛けます。佐々木五段は自陣に銀を投入して詰めろを解除しますが、斎藤八段の▲6三歩成が厳しく、無念の投了となりました。

【チーム畠山 3勝 vs チーム深浦 2勝】
チーム畠山は弟子の斎藤八段が1人で3勝を挙げ、チームの勝利を牽引しました。特に二局目ではお互いに時間に追われる中、難しい終盤戦を制したことで波に乗ったように思います。これで本戦進出を決めましたが、斎藤八段がこの勢いを維持し、師匠の攻め将棋が炸裂すれば、優勝も狙えるチームだと思います。
チーム深浦は弟子の佐々木五段が2勝して奮闘しましたが、最後は弟子同士の対決で力尽きました。1回戦では相手のエースを倒す活躍を見せた師匠が、この試合では勝ち星に恵まれず涙を飲むこととなりました。まだ次の2位決定戦に勝てば本戦進出となりますので、気を取り直して頑張って欲しいと思います。

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