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第2回女流ABEMAトーナメント予選Aリーグ第一試合

10月9日、第2回女流ABEMAトーナメントの開幕戦が放映されました。今回は女流のABEMAトーナメントにも団体戦が適用され、この日はチーム里見「不動」とチーム山根「ひよっこ」の顔合わせとなっています。

■一局目 里見咲紀女流初段 〇 vs ● 塚田恵梨花女流初段
振り駒で先手となった里見女流初段が得意の中飛車に振り、対抗型の将棋となりました。若手同士らしくきびきびと指し手が進み、里見女流初段が美濃囲い、塚田女流初段が左美濃に囲った辺りでは持ち時間を6分前後に増やしています。塚田女流初段は飛車を5筋に寄せると、△7三桂~△6五銀と銀をぶつけて開戦します。塚田女流初段が先手の飛車を押さえ込みますが、里見女流初段は自陣に持ち駒の銀を投入して粘ります。塚田女流初段が先手の角を捕獲しますが、里見女流初段は角を取られる間に▲2五桂~▲2六桂と玉頭から迫ります。塚田女流初段は竜を作って玉頭の守りに加えますが、里見女流初段も押さえ込まれていた飛車を攻撃に参加させて竜を作ります。塚田女流初段は時間に追われながら竜取りに命運を託しますが、里見女流初段は手抜いて後手玉に迫るとそのまま寄せ切りました。

■二局目 清水市代女流七段 ● vs 〇 和田あき女流初段
先手の和田女流初段が相掛かりに誘導し、清水女流七段も受けて立ち先に飛先の歩を交換して四段目に引きます。清水女流七段が棒銀で8筋を攻めると、和田女流初段は▲6六角と飛車取りに飛び出して受けます。和田女流初段は4筋の歩を交換し、▲4三歩と絶妙の叩きを入れます。この歩を金で取ると飛車成を許してしまうため、清水女流七段は銀で取って▲5三角成を甘受します。清水女流七段は馬取りに角を引きますが、和田女流初段は▲4二歩と焦点の歩を放ち、馬で銀を食いちぎって飛車を成り込みます。清水女流七段は△1三角と王手で覗いて角のラインで先手玉に迫りますが、和田女流初段はこの角を執拗に攻めて凌ぐと、3三の地点に攻め駒を集めて突破し寄せ切りました。

■三局目 里見香奈女流四冠 〇 vs ● 山根ことみ女流二段
両チームとも順番通り、リーダー対決が実現しました。先手の里見女流四冠は初手▲7八飛と三間飛車に振り、山根女流二段も向かい飛車に振って相振り飛車の将棋となりました。里見女流四冠が先に飛先の歩を交換して六段目に引くと、山根女流二段も飛先の歩を交換し五段目に引きます。里見女流四冠は美濃囲い、山根女流二段は金無双に構えます。山根女流二段が1筋の位を取ると、里見女流四冠は飛車を5筋に回して▲5四歩と仕掛けます。角交換から銀交換でお互いの駒台に角と銀が乗ります。山根女流二段が先に敵陣に角を打ち込み馬を作り、里見女流四冠は▲8六角と打って飛車角による中央突破を図ります。山根女流二段は飛車取りに打った銀を取らせる間に桂を取り、角で飛車を取られると馬で取り返して自陣を引き締めます。里見女流四冠は敵陣に飛車を打ち込み竜を作りますが、山根女流二段は銀を自陣に投入して決め手を与えません。里見女流四冠は後手の玉頭から攻め掛かり、山根女流二段は上部に逃走して粘ります。最後は山根女流二段が入玉を果たしますが、里見女流四冠が即詰みに討ち取りました。

■四局目 里見咲紀女流初段 ● vs 〇 塚田恵梨花女流初段
一局目と同じ顔合わせになりました。先後が入れ替わりましたが、先手の塚田女流初段は居飛車で左美濃、里見女流初段は中飛車で美濃囲いと、前局と同様の駒組みを進めます。里見女流初段が木村美濃に組み替えると、塚田女流初段も銀冠に組み替えます。飛車を2筋に振り直した里見女流初段が△2四歩と仕掛けると、塚田女流初段は角を切って▲2四歩と取り込み2筋を突破して"と金"を作ります。里見女流初段も敵陣に角を打ち込み馬を作りますが、塚田女流初段は香を取って▲4九香と馬取りに打ちます。塚田女流初段も馬を作って▲4六馬と急所に引き付けると、里見女流初段は飛車をぶつけて馬と交換します。最後は塚田女流初段が▲6四歩から反撃して後手陣の金銀を剥がし、▲5二飛から即詰みに討ち取りました。

■五局目 里見香奈女流四冠 〇 vs ● 和田あき女流初段
今大会で初めて設けられた監督を呼んでのタイムアウトをチーム里見が要求し、作戦を確認しての対局となりました。先手の里見女流四冠が初手▲5六歩から中飛車に振り、和田女流初段は左銀を前進させ銀交換します。里見女流四冠が7筋の歩を伸ばすと、和田女流初段は手抜いて8筋の歩を伸ばし先に"と金"を作ります。里見女流四冠は▲9五角と飛び出した角を取らせる間に7筋を突破し、▲5四桂と金の両取りから後手陣を薄くします。和田女流初段は攻防に△7五角と打ちますが、里見女流四冠は▲6六銀とがっちり受け、▲8五金と飛角両取りに打ちます。和田女流初段は角と金の交換に応じ、飛車を5筋に回して守りに利かせます。里見女流四冠は三度▲4四歩と打って後手陣を崩すと、▲5一角から一気に寄せ切りました。

■六局目 清水市代女流七段 〇 vs ● 山根ことみ女流二段
チーム山根がタイムアウトを要求し、相手の戦型に対する作戦を確認しての対局となりました。先手の山根女流二段は四間飛車に振り、美濃囲いに構えます。清水女流七段が5筋の位を取り△6五歩と仕掛けると、5,8,7筋の歩もぶつかり両者慎重に時間を使って指し進めます。角と銀桂の2枚替えとなり、駒得になった山根女流二段は持ち駒の銀を▲8七銀と打って後手の飛車を追い返します。清水女流七段は敵陣に角を打ち込み馬を作りますが、山根女流二段は▲4五桂と跳ねて攻撃の拠点を作ります。両者時間に追われる中、難解な終盤戦となりましたが、馬を見捨てて先手玉に迫った清水女流七段が即詰みに討ち取りました。

■七局目 里見咲紀女流初段 ● vs 〇 山根ことみ女流二段
リーチを掛けられたチーム山根は、リーダーの連投です。先手の里見女流初段が三間飛車、後手の山根女流二段が向かい飛車と、相振り飛車の将棋となりました。先に里見女流初段が飛先の歩を交換し六段目に引くと、山根女流二段も飛先の歩を交換し五段目に引きます。里見女流初段は美濃囲い、山根女流二段は金無双に構え仕掛けを探ります。角交換の後、山根女流二段が飛車を8筋に回して飛車成を狙いますが、里見女流初段は手抜いて▲6六角と飛車取りに打って角成を狙います。山根女流二段は△4四角と打って飛車角交換に応じ、里見女流初段は▲3一飛と敵陣に打って竜を作ります。山根女流二段は△5五角打から飛車角交換し、先手玉のコビンを開けると△5五馬と王手銀取りを掛け先手の攻撃の拠点となっていた銀を取ります。里見女流初段は懸命に攻撃の足掛かりを作りますが、山根女流二段は丁寧に受けてから先手玉に攻め掛かり、上下から挟撃態勢を作って寄せ切りました。

■八局目 里見香奈女流四冠 〇 vs ● 塚田恵梨花女流初段
チーム里見はリーダー自ら決めに行きます。後がないチーム山根はタイムアウトを要求し、迷ったときは攻めていくことを確認しています。後手の里見女流四冠は中飛車に振り、美濃囲いに囲ってから先に飛先の歩を交換します。塚田女流初段は▲3五歩と突き捨ててから飛先の歩を交換します。ジリジリした中盤戦となり、塚田女流初段は穴熊に組み替えます。両者残り時間が1分を切り、塚田女流初段は6筋の歩を突き捨て▲7七角と打開します。里見女流四冠は落ち着いて△4四歩と催促して桂交換しますが、塚田女流初段は時間に追われながら後手の玉頭から攻め掛かります。里見女流四冠は先手の攻めを凌ぐと9筋から端攻めを決行します。激しい玉頭戦となりましたが、里見女流四冠は玉を3筋まで逃がして即詰みに討ち取りました。

【チーム里見 5勝 vs チーム山根 3勝】
日頃あまり観ることのない女流棋士の対局姿が新鮮で、特に清水女流七段の魅せる噂通りの美しい所作は、長年女流棋界を牽引してきたレジェンドとしての貫録を感じました。
チーム里見はリーダーが3連勝と圧巻の強さを示し、チームを勢いづけました。里見(咲)女流初段も緊張する一局目を制し、清水女流七段も六局目に相手のリーダーを破ってチームに大きく貢献しました。清水女流七段の対局中に里見姉妹がモニタにかじりつくように応援する姿は微笑ましく、清水女流七段も謙虚に里見姉妹を立てる姿勢がチームの結束力を高めているように思います。中村太地監督は作戦会議で細かい分析に基づく指導を行い、メンバーの迷いを断つ好采配を見せたと思います。
チーム山根はメンバー3人が揃って1勝ずつ挙げ、展開次第で勝てる実力を示しました。同世代の3人ということでチームの雰囲気は良く、次戦での巻き返しに期待したいと思います。森内俊之監督は、オーダー会議では相手のオーダーをほぼ完璧に読み切って主導し、若い3人の良い点を引き出す采配を見せたと思います。

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