「観る将」が観た第15期マイナビ女子オープン五番勝負第四局
5月30日、マイナビ女子オープンの第四局が東京将棋会館で行われました。カド番に追い込まれた西山朋佳女王が勝ってタイスコアに戻すのか、奪取に王手を掛けた里見香奈女流四冠が一気に決着を付けるのか、注目の一局となりました。両者の対戦成績は西山女王の16勝18敗ですが、ここ数週間で里見女流四冠が4連勝しています。
戦型は相振り飛車
西山女王が白地に青灰色の柄の入った着物に臙脂色の袴で入室し、里見女流四冠が明るい萌黄色の着物に濃緑色の袴で入室します。先手の西山女王は珍しく初手に1分程時間を掛け、気息を整えてから三間飛車に振ります。両者の対局で前例のある出だしとなりましたが、西山女王が11手目に角を交換して前例を離れます。里見女流四冠が飛車で馬を取り向かい飛車にすると、西山女王も飛車を8筋に振り直して相向かい飛車となりました。西山女王が先に飛先の歩を交換して最下段に引くと、里見女流四冠も飛先の歩を交換して最下段に引きます。
お互いに工夫の陣形
西山女王がここ数局見せている▲2八銀~▲3八金という陣形を敷くと、里見女流四冠は△4二金~△5二金上と、金無双の金を1列ずつ左に寄せた形に構えます。西山女王が自玉近くの3-4筋の歩を突くと、里見女流四冠は3筋の歩をぶつけて反発します。西山女王が▲3四歩と桂頭を叩くと、里見女流四冠は△2五桂と跳ねて先手の玉頭を狙います。西山女王が自ら玉頭を攻めさせている形になっており、次の51手目を考慮中に昼休となりました。各3時間の持ち時間の内、残り時間は西山女王が1時間42分、里見女流四冠が2時間19分と30分以上差が付いています。
激しい攻め合いに
昼休が明けるとすぐ、西山女王は3筋の歩を成り捨て▲6五桂と跳ねます。歩を成り捨てた効果で5三の地点が薄くなっていますが、里見女流四冠は力強く△4六銀と前進して攻め合います。西山女王が桂取りに▲2六歩と伸ばすと、里見女流四冠も△7三桂と跳ねて桂交換を図ります。西山女王は銀取りに▲4七歩と打ちますが、里見女流四冠は構わず△3七歩と金頭を叩きます。互いに金と銀をかわしてから、西山女王は▲7三桂成と桂を交換して銀取りに▲6五桂と打ち、里見女流四冠が銀と上がってかわすと▲7五歩と追撃します。
女王の大技
里見女流四冠も3筋の歩を成り捨ててから銀取りに△3六桂と打って反撃しますが、西山女王は手抜いて▲7四歩と取り込みます。里見女流四冠は26分熟考して△6五銀と桂を食いちぎり、△2八桂成と銀桂交換してから△2六銀と出て先手の玉頭を押さえます。西山女王は14分の少考で▲2二歩と飛頭を叩き、▲3一角と飛車取りに打ち込みます。里見女流四冠が角取りにかわすと、後手の歩頭に王手金取りで▲6四桂と打ちます。
電光石火の寄せ
里見女流四冠は歩で取るしかありませんが、西山女王は▲6四同角成と後手玉の傍に馬を作って詰めろを掛けます。里見女流四冠は△6一玉と逃げますが、西山女王は▲8三飛成と竜を作って詰めろを続けます。里見女流四冠は△7二銀と打って詰めろを逃れますが、西山女王が豪快に▲7二同竜と取った手を見て投了を告げました。
第四局を制したのは
本局は西山女王が積極的な動きを見せ、わずかな隙を捉えての強烈な一撃で勝利を掴み取り、対里見戦の連敗を止めました。本シリーズは2勝2敗のタイとなり、決着は次の最終第五局に持ち越されました。
里見女流四冠は先週、棋王戦本戦進出と同時に棋士編入試験の受験資格を得て、体力的にも精神的にも、多少疲れがあったのかもしれません。
2人による春の十番勝負は大詰めとなり、来週には同時並行で行われている女流王位戦の第四局があります。両者が万全の体調で臨み、好局となることを期待したいと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?