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「観る将」が観た第14期マイナビ女子オープン五番勝負第五局

6月1日に東京将棋会館で行われた、マイナビ女子オープン第五局を観た感想です。ここまで2勝2敗のタイとなり、本局で西山朋佳女王が勝てば4連覇、伊藤沙恵女流三段が勝てば初タイトル獲得となる大一番となりました。西山女王は薄黄色の地に花柄の着物、伊藤女流三段は桜色の地に花柄の着物で登場です。

本局はあらためて振り駒が行われ、先手となった西山女王は第三局と同様初手▲3八飛で三間飛車を選択します。これを見た伊藤女流三段は、第三局とは作戦を変え2手目△8四歩と居飛車を明示します。西山女王が石田流に組み美濃囲いに構えると、伊藤女流三段は左美濃から銀冠に組み替えます。

西山女王が5筋の位を取ると、伊藤女流三段は更に堅く穴熊に囲います。この瞬間を捉え、西山女王が6筋から仕掛けて先に竜と"と金"を作ります。伊藤女流三段は5筋の位を奪還しますが、西山女王は▲6六角と上がって相手の飛車の動きを牽制します。伊藤女流三段も銀で相手の竜の動きを牽制し8筋の歩を成り込みましたが、西山女王は▲6五桂~▲5三桂成と気持ちよく成り捨て"と金"を銀と交換し、一気に穴熊を崩していきます。防戦一方となった伊藤女流三段は角で香を取って馬を作りますが、西山女王に歩で馬の利きを遮断されて粘りが効かない形となり、無念の投了を告げました。

本局は伊藤女流三段が穴熊の堅陣に命運を託しましたが、見落としがあったのか一気に攻略され一方的な将棋となってしまいました。西山女王としては自陣にほとんど傷がつかない完勝だったと思います。

この結果西山女王は4連覇を達成し、初の永世女王資格獲得まであと1期となりました。終局後の記者会見で、今年度から転向した女流棋士としての目標を聞かれ「タイトル戦にずっと出られていたらいいなと思います」と答えています。出場できる女流棋戦が増え、里見香奈女流四冠とのタイトル争いも熾烈になってくることを楽しみにしています。

伊藤女流三段は8度目のタイトル挑戦でしたが、惜しくも初のタイトル獲得には届きませんでした。今回は厚い壁に跳ね返された形となりましたが、第一局でねじり合いから競り勝ち、第四局で中盤から抜け出しての快勝と、二強の一角を崩し得る実力の一端を魅せてくれました。近い将来、タイトル獲得の夢を実現することを期待したいと思います。

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