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「観る将」が観た第15期マイナビ女子オープン五番勝負第三局

5月14日、マイナビ女子オープンの第三局が神奈川県藤沢市の「時宗総本山 遊行寺」で行われました。第二局に勝った西山朋佳女王が防衛に王手を掛けるのか、先手番の里見香奈女流四冠が勝ってタイトル奪取に王手を掛けるのか、注目の一局となりました。前日に行われた関係者の顔合わせで、西山女王は「明日はいつも通り一生懸命頑張りたい」、里見女流四冠は「明日は自分の力を出し切れるように精一杯頑張りたい」と抱負を語っています。

戦型は相振り飛車

里見女流四冠が藤色と白のグラデーションの着物に紫色の袴で入室し、西山女王が似たようなデザインで藍色と白のグラデーションの着物に水色の袴で入室します。先手の里見女流四冠が3手目に中飛車に振ると、西山女王も4手目に三間飛車に振り、3日前に行われた女流王位戦第二局と同じ出だしになりました。18手目に西山女王が手を変え、6筋の玉の左右を金銀で守る陣形を敷きます。里見女流四冠が飛先の歩を交換して六段目に引くと、西山女王も飛車を四段目に浮きます。

挑戦者の仕掛け

里見女流四冠が自玉の傍の歩を▲2六歩と突くと、西山女王は少し手を止めて考えてから△2六同歩と応じます。里見女流四冠が飛車で歩を取って2筋に転回すると、西山女王は△2四歩と打って防ぎます。里見女流四冠が25分の熟考で▲7九角と引き2-3筋への援軍を送ると、西山女王は△4五歩と突いて飛車の横利きを通します。里見女流四冠が▲2五歩と合わせて飛交換を誘いますが、西山女王は△3三銀と上がって2-3筋を支えます。里見女流四冠が12分考えて▲3六歩と玉頭の歩を突き決戦を挑み、西山女王が次の46手目を考慮中に昼休となりました。形勢はわずかに里見女流四冠が押し気味のようです。各3時間の持ち時間の内、残り時間は西山女王が2時間16分、里見女流四冠が1時間46分となっています。

女王の反撃

西山女王は、昼休が明けるとすぐ△8四飛と回ります。里見女流四冠が飛成を受けずに▲3五歩と伸ばしますが、西山女王も構わず△8七飛成と竜を作ります。里見女流四冠が▲2四歩と伸ばして歩成を目指すと、西山女王は歩で飛車を引き付けてから桂で追い返します。西山女王は銀を引いて角道を通し、里見女流四冠が26分熟考して歩で遮ると△5五同角と食いちぎります。この角はタダで取れそうですが、取ると歩で飛車を取り返されてしまうので、里見女流四冠は▲5七角と上がって銀に紐を付けます。

形勢傾く

西山女王は34分の長考で△3七歩と玉頭を叩き、里見女流四冠が銀で取ると角で食いちぎって△5六銀と角取りに打ちます。里見女流四冠が手抜いて▲2三歩成と"と金"を作ると、西山女王は△5七銀不成と角を取ります。里見女流四冠が▲5七同金と取ると後手の攻撃は切れ模様で、立会人の木村九段が「急に差が付いたように見えます」と解説しています。西山女王は竜を敵陣に潜らせ先手玉を睨みますが、里見女流四冠は▲5八金~▲5九歩と金底の歩で遮断します。

攻防の角の応酬

西山女王は竜で香を取り金取りに△5六香と打ちますが、里見女流四冠は▲4八金とかわし更に持ち駒の銀を投入してがっちり受け止めます。西山女王は攻防に△7六角と打ちますが、里見女流四冠は落ち着いて12分考え▲5七歩と打って香の利きを止めます。西山女王は銀取りに△6七角成と馬を作りますが、里見女流四冠が攻防に▲4四角と打った手が、銀に紐を付けつつ後手玉を睨む絶好の一手になります。西山女王は16分の熟考で角取りに△4三金と上がって先手からの桂打ちを防ぎ、両者の残り時間が30分を切りました。

女王の勝負手

里見女流四冠は▲2二飛成と飛び込み、角を取ると竜で寄せられてしまう西山女王は馬で銀を食いちぎり、竜取りに△3一銀と打つ勝負手を放ちます。里見女流四冠が冷静に角に紐を付けて▲2四竜と引くと、西山女王は少ない残り時間を投じて△5七香成と食い下がります。里見女流四冠が銀香交換に応じてから▲1一角成と取られそうだった角を逃げると、1分将棋に突入した西山女王は金取りに竜を引いて攻め続けます。

落ち着いた受けから一気の寄せ

里見女流四冠は慌てずに竜を自陣に引いて受けると、金銀の田楽刺しに▲4四香と打って寄せに入ります。西山女王がやむなく△4四金と取ると、里見女流四冠の▲4四同馬が再び後手玉を睨む絶好の位置になります。西山女王は馬取りに△4三香と打ちますが、里見女流四冠は30数手前に自陣に打った桂を王手で▲5四桂と跳ねます。里見女流四冠は慎重に2分考えてから馬を切り、竜を再び後手陣に飛び込ませて寄せ切りました。

第三局を制したのは

本局は里見女流四冠が序盤から積極的に動いてポイントを奪うと、慌てずに少しずつリードを拡げて勝利を掴み取りました。本シリーズは挑戦者の里見女流四冠が2勝1敗となり、女王奪取に王手を掛けました。対局後に第四局への抱負を聞かれ、里見女流四冠は「やってくる対局をこなしながら、コンディションを整えられたらと思います」、西山女王は「コンディションを整えて、しっかり準備したいと思います」と話しています。並行して行われている女流王位戦も含めた両者による十番勝負は、ここまですべて先手番が勝っています。次局は先手番となる西山女王の巻き返しに期待したいと思います。

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