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第63期王位戦挑戦者決定リーグ 伊藤匠五段2回戦

3月15日、お~いお茶杯王位戦の挑戦者決定リーグ(王位リーグ)紅組で、伊藤匠五段と近藤誠也七段との対局がありました。伊藤五段は藤井聡太竜王と同学年で、今年度新人王戦に優勝した注目の新鋭です。今期王位戦は初参戦で、予選で永瀬王座を降して王位リーグ入りを果たしました。近藤七段は予選で佐々木(勇)七段や八代七段を破っており、2期連続の王位リーグ登場となります。両者とも1回戦に勝ち、勝った方が優勝に一歩近づく重要な一局となりました。

先手の伊藤五段が相掛かりに誘導し、近藤七段も受けて立ちます。伊藤五段が先に飛先の歩を交換し、近藤七段も飛先の歩を交換します。伊藤五段が1筋の位を取ると、近藤七段は銀を繰り出し棒銀で攻めます。伊藤五段が角を交換して銀交換を甘受すると、近藤七段は更に9筋の歩を伸ばして端攻めします。お互いに桂を取り合い"と金"を作りますが、近藤七段は"と金"を犠牲に△9九香成と香を取ります。伊藤五段が飛車取りに角を打つと、近藤七段も金を睨んで角を合わせて防ぎます。

激しい中盤戦に突入し、形勢は両者の間を揺れているようです。伊藤五段は▲2六桂から銀桂交換の戦果を挙げ、2枚の銀で後手の飛車を追います。近藤七段は手抜いて△6七香の王手から先手玉に迫ります。伊藤五段は飛車を取りますが、近藤七段は銀を取り更に△6七角~△3五桂と挟撃態勢を作って飛車取りに△2七銀と打ちます。伊藤五段は取られそうな銀を成り捨て、後手陣を乱してから▲2七飛と銀を食いちぎり、▲4一飛と敵陣に打ち込んで反撃します。

近藤七段は△3二馬と引き付けて守りますが、伊藤五段は▲6一飛成と金を取って竜を作ります。近藤七段が△4八歩と叩きを入れてから△4一香と攻防に打つと、伊藤五段はこの香と自陣の成桂の両取りに▲6三角と打ちます。この角打ちにより自陣の守りにも効いていた先手の竜の縦利きが止まったため、近藤七段の△6七桂が痛打となりました。王手なので銀で取るしかありませんが、△6七同歩成と"と金"を作られ取り払うことができません。自陣の受けがなくなった伊藤五段は形づくりに▲3四桂と王手しますが、近藤七段が玉を逃がしたところで無念の投了となりました。

本局は近藤七段の積極的な仕掛けから伊藤五段も果敢に攻め合い、好調の両者らしく形勢が二転三転する熱戦となりました。最後に伊藤五段が抜け出したかと思われたところで、近藤七段が一瞬の隙を逃さず逆転勝利を掴みました。

近藤七段は2勝0敗となり、紅組優勝に向け一歩前進しました。伊藤五段は1勝1敗となりましたが、まだまだ可能性は残されており今後の対局に期待したいと思います。


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