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「観る将」が観た第4期清麗戦第二局

7月22日に第4期大成建設杯清麗戦五番勝負第二局が、新潟市のホテルオークラ新潟で行われました。第一局を落とした加藤桃子清麗が勝ってタイスコアに戻すのか、挑戦者の里見香奈女流四冠が勝って一気に奪還に王手を掛けるのか、注目の一局となりました。両者がタイトル戦で顔を合わせるのはこれが10回目で、里見女流四冠が7勝、加藤清麗が2勝となっています。

清麗の穴熊に挑戦者が仕掛け

里見女流四冠が早めにクリーム色に花柄の着物に紫の袴で入室し、加藤清麗は紺色の着物に黄土色の袴で入室します。先手の里見女流四冠が中飛車に振り美濃囲いに構えると、加藤清麗は穴熊を目指します。里見女流四冠は飛車を4筋に振り直し、本来守りの駒になるはずの右桂を▲1七桂と端に跳ねます。加藤清麗が18分の熟考でじっと守りを固めると、里見女流四冠も21分考えて▲2四桂~▲4五歩と攻め掛かります。

挑戦者の長考

加藤清麗は飛車を浮いて受けますが、里見女流四冠は23分考えて4筋の歩を取り込み、金で取らせてから▲5四歩と突いて後手の飛車の横利きを止めます。加藤清麗が金で歩を取ると、里見女流四冠は1時間近い長考に沈み、次の43手目を考慮中に昼休となりました。各4時間の持ち時間の内、残り時間は加藤清麗が3時間6分、里見女流四冠が1時間56分と1時間以上差が付いています。

端攻めの決行

里見女流四冠は昼休を挟む64分の長考で、1筋からの端攻めを決行します。里見女流四冠が▲1三歩と打って桂で取らせてから▲1四香と走ると、加藤清麗は△4四歩と打って先手の角のラインを遮断します。1筋で互いに桂香を取り合い、里見女流四冠が角取りに▲2六香と打つと、加藤清麗は自然に△7九角成と馬を作ります。里見女流四冠は29分の熟考で▲5五歩と打って後手の守りの金を戦場から遠ざけますが、加藤清麗は△2一玉と寄って先手の角のラインから外れて凌ぎます。残り時間の差が2時間近くに拡がっています。

清麗の反撃

里見女流四冠は銀を前進して攻めをつなぎますが、加藤清麗は△4四香と打って銀と交換し、飛車取りに△5七銀と打ち込みます。金銀交換の後、飛馬交換となり、里見女流四冠は歩で後手陣の銀を上ずらせてから▲4四角と飛び出します。加藤清麗は30分の熟考で先手の玉頭を狙う△5五桂と打ちますが、里見女流四冠は構わず▲1三角と打って後手玉の可動域を狭めます。加藤清麗は王手で△4七歩と打ち、銀で取らせて空いた空間を狙って△1八飛と王手で打ち込みます。

急転直下の終局

里見女流四冠が銀を引いて受けると、加藤清麗は再度王手で△4七歩と打ちます。里見女流四冠が今度は▲5七玉とかわすと、加藤清麗はノータイムで△2三銀と自陣に手を戻します。この手は敵陣に打った飛車も守りに利かす味の良い手にも見えましたが、里見女流四冠は▲2二銀と打って瞬く間に後手玉を受けなしに追い込みます。加藤清麗は角で王手し、15分程考えていましたが、次の手を指さずに投了を告げました。

まとめ

本局は里見女流四冠が積極的に攻め込みましたが、加藤清麗が凌いで少し優勢になった局面もありました。終盤に加藤清麗が自陣に手を戻した一手が受けになっておらず、一瞬の隙を突いた里見女流四冠の寄せが見事に決まりました。1時間以上残していた加藤清麗としては、悔いの残る一着だったかもしれません。
本シリーズは里見女流四冠が2連勝となり、前期のリベンジにあと1勝となりました。加藤清麗はカド番に追い込まれましたが、対局後には「苦しいですけど、また納得のできる将棋が指せるように頑張りたい」と話しており、巻き返しに期待したいと思います。

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