見出し画像

第35期女流王位戦挑戦者決定戦

3月15日、女流王位戦の挑戦者決定戦が行われました。紅組で西山朋佳女流四冠(当時)を倒し、4勝1敗で優勝した伊藤沙恵女流四段と、白組で渡部愛女流三段らを破り、5勝0敗で優勝した加藤桃子女流四段の顔合わせとなっています。

両者の対戦成績は、加藤女流四段の14勝8敗(1持将棋)となっています。2人はともに女流棋界二強の牙城を崩す存在として期待が掛かりますが、今年度は伊藤女流四段が女流王位戦、加藤女流四段が女流王座戦で挑戦者になったに留まり、少し物足りない印象は否めません。本局に勝って挑戦権を獲得し、福間女流王位からタイトル奪取したい気持ちは強いと思います。

加藤女流四段の仕掛け

振り駒で後手となった伊藤女流四段が角道を止めて雁木に組むと、加藤女流四段は25分の熟考で▲7八玉と寄って陣形を整えます。伊藤女流四段が7筋の歩を突いて先手の角頭に圧力を掛けると、加藤女流四段は▲6八角と引き、3筋の歩をぶつけて仕掛けます。

伊藤女流四段は袖飛車

伊藤女流四段は7筋の歩をぶつけ、加藤女流四段が3筋の歩を取り込んでから7筋の歩を取ると、飛車を7筋に寄って先手の玉頭を睨みます。加藤女流四段は2筋の歩を交換して角をぶつけ、伊藤女流四段が次の34手目を考慮中に昼休となりました。各3時間の持ち時間の内、残り時間はともに2時間8分で並んでいます。

端角と自陣角

伊藤女流四段は昼休を挟む40分の長考で△2三歩と打ち、加藤女流四段が角を交換してから▲6八金と角を打ち込まれる隙を消すと、飛車を走って王手します。加藤女流四段は銀を上がって受け、伊藤女流四段が飛車を引くと、▲4六銀と右銀の活用を図ります。伊藤女流四段は△3六歩と垂らして先手の動きを牽制し、加藤女流四段が24分の熟考で銀取りに▲1六角と端角を打つと、△4三角と自陣角を打って銀を支えます。

千日手模様を伊藤女流四段が打開

加藤女流四段は▲5八金上と陣形を整え、残り1時間となった伊藤女流四段が角取りに△2五銀と出ると、▲4九角を引きます。伊藤女流四段は銀を引き、加藤女流四段が▲1六角と戻して千日手模様の繰り返しとなると、8筋の歩を伸ばして打開します。加藤女流四段は▲3五銀と上がり、伊藤女流四段が3筋の歩を成り捨てて桂取りに△3六銀と反発すると、構わず▲4四銀と角にぶつけます。

激しい駒の取り合い

伊藤女流四段が△3七銀成と桂を取って飛車に当てると、加藤女流四段は角銀交換してから▲2六飛とかわします。伊藤女流四段は△2五銀と打って先手の飛車を押さえ込み、加藤女流四段が▲3四歩と桂頭を叩くと、桂を諦めて△2四歩と銀を支えます。加藤女流四段は▲2五飛と銀を食いちぎり、王手成銀取りに▲1五角と打って成銀を取ります。駒割りは飛車と角銀の交換となり、形勢は加藤女流四段に傾き始めたようです。

垂れ歩の応酬

伊藤女流四段は5筋の歩を突いて自玉の懐を拡げ、16分の考慮で残り1時間を切った加藤女流四段が▲7四歩と垂らすと、8筋の歩を突き捨ててから△8七歩と垂らして先手陣に嫌味を付けます。加藤女流四段は▲5七桂と打って後手の玉頭に利かせ、伊藤女流四段が7筋の飛車を走って攻め掛かると、▲4五銀と王手で玉を引かせます。

自陣角の活用

伊藤女流四段は飛車を8筋に寄せ、加藤女流四段が6筋の歩を突いて自玉の懐を拡げると、△4四歩と打って銀を追います。伊藤女流四段が5筋の歩をぶつけて桂頭を狙うと、加藤女流四段は▲6五桂と跳ねて王手し、▲5九金と引いて働きの弱かった自陣角の利きを通します。伊藤女流四段は△7五銀と前進しますが、加藤女流四段が角の利きを活かして▲8五歩~▲7六歩と受けると、△6四銀と戻して辛抱します。

加藤女流四段が飛車を捕獲

加藤女流四段が5筋の歩を取り込んで桂の活用を図ると、伊藤女流四段は△6五銀と桂を食いちぎり、△5四飛と回して金に当てます。加藤女流四段は▲5六歩と受け、伊藤女流四段が△7三桂打と角成を防ぐと、▲5六歩と伸ばして飛車に当てます。横に逃げると捕獲されてしまうので、伊藤女流四段は△5三飛と引きますが、加藤女流四段は▲5四銀と畳み掛け、金銀交換してから▲5五銀~▲8四金と飛車を捕まえます。

お互いに相手玉に迫る攻め合い

伊藤女流四段は金銀両取りに△6五桂と跳ね、加藤女流四段が飛車を取ると、△5七桂成と金を取って攻め込みます。加藤女流四段は▲8二飛と王手し、伊藤女流四段が桂で合い駒すると、歩と銀で後手玉に迫ります。伊藤女流四段は△9四歩と金を補充しつつ先手玉の上部脱出路を狭め、加藤女流四段が▲8一飛成~▲6二"と"と詰めろを掛けると、△5六飛と攻防に放ちます。

お互いに1分将棋の攻防

1分将棋に突入した加藤女流四段が▲5一"と"と王手し、▲3三歩と詰めろを掛けると、伊藤女流四段も1分将棋となり、△8八金から連続王手で迫ります。加藤女流四段が丁寧に応じて▲8六玉とかわすと、先手玉は詰まず後手玉は受けなしとなっており、伊藤女流四段は投了を告げました。

まとめ

本局は加藤女流四段が3筋から仕掛け、伊藤女流四段は7筋から反発しました。千日手模様の局面が現れましたが、伊藤女流四段が打開して激しい駒の取り合いとなり、駒得となった加藤女流四段がわずかに優勢となりました。伊藤女流四段は決め手を与えず先手陣に迫りましたが、加藤女流四段は自陣角の利きを通して守りに利かせ、強引に飛車を捕獲して後手玉を寄せ切りました。
加藤女流四段は、第31期以来2度目の女流王位挑戦権獲得となりました。対局後は体調不良のため、インタビューも感想戦も行われなかったとのことで心配されますが、4月下旬に開幕する五番勝負では、福間女流王位との好勝負を期待したいと思います。

女流王位戦は新聞三社連合が主催しています。棋譜は下記サイトをご確認ください。
http://live.shogi.or.jp/joryu-oui/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?