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「観る将」が観た第46期棋王戦挑戦者決定二番勝負第二局

12月28日に行われた棋王戦挑戦者決定二番勝負第二局を観た感想です。
敗者復活戦を勝ち上がった糸谷八段が第一局に勝ったため、勝者組優勝者の広瀬八段のアドバンテージがなくなり、本局の勝者が渡辺棋王への挑戦権を獲得することとなりました。あらためて振り駒が行われ、勝者組決勝、挑決第一局に続き、またしても糸谷八段が先手となりました。

戦型は前局と同様、角換わりとなりました。糸谷八段がやはり早繰り銀を採用すると、前局では腰掛け銀に構えた広瀬八段は作戦を変え、早繰り銀から先に仕掛けました。糸谷八段も2筋を継ぎ歩から抑え込んで飛車を中段に浮き、▲6五飛と飛車成りと銀取りを狙って激しく開戦しました。広瀬八段は取られそうな銀を桂と刺し違えた後△7四角と攻防に打ち、自陣に引き成って守りを固めます。両者ともに研究範囲のためか昼休までに66手と超早指しの展開となりました。

昼休明け、糸谷八段は金を前に進めて敵陣に圧力を掛けていきます。広瀬八段は△6七歩~△7六歩と手裏剣を飛ばして敵陣を崩し、馬も切って相手の守備駒を金1枚にして攻め込みます。糸谷八段は▲6四桂~▲8五角と反撃しますが、広瀬八段も更に龍を作って攻め立てます。

一見、広瀬八段の攻撃が相手陣を崩壊させたように見えましたが、糸谷八段の玉は上部が広く、意外に捕まりにくい形になりました。AIもの形勢判断も糸谷八段に大きく振れています。ここで糸谷八段が▲6三歩~▲6二銀と王手すると、広瀬八段は10分程考えて次の手を指さずに投了を告げました。居玉のまま戦ってきた広瀬陣は、まだ金2枚と飛車が守っており直ちに詰む形ではありませんが、上部を制圧されて退路が狭く、受け切れないと判断したようです。

この結果、糸谷八段は渡辺棋王への五番勝負を挑むこととなりました。タイトル挑戦は、2016年の王座戦以来となります。今回は敗者復活戦を含めて先手番を引き続けた幸運もありましたが、角換わり早繰り銀を連採して強豪の永瀬王座や広瀬八段を破っての挑戦権獲得は見事でした。
2月に開幕する五番勝負でも、角換わりの深い研究を魅せてくれるはずですので、楽しみにしたいと思います。

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