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「観る将」が観た第33期女流王位戦五番勝負第四局

6月7日に女流王位戦第四局が、徳島市のJRホテルクレメント徳島で行われました。防衛に王手を掛けた里見香奈女流王位が一気に決着を付けるのか、カド番に追い込まれた西山朋佳女流二冠が勝って最終局に決着を持ち越すのか、注目の一局となりました。両者は現在マイナビ女子オープン五番勝負を並行して戦っており、翌週には最終第五局が予定されています。対戦成績も里見女流王位の18勝17敗と拮抗しており、まさに女流棋界を代表する2人の対決となっています。前日のインタビューで、里見女流王位は「急所で腰を落として考えられるように指していければ」、西山女流二冠は「負けてしまうとシリーズが終わってしまうので何とか第五局に繋げたい」と語っています。

戦型は相振り飛車

白いスーツに身を包んだ先手の里見女流王位が中飛車に振ると、濃紺のノースリーブのワーピース姿の西山女流二冠も三間飛車に振り、相振り飛車の将棋となりました。11手目に里見女流王位が▲4八銀と上がる珍しい趣向を見せ、西山女流二冠は4分程手を止めて美濃囲いに構えます。里見女流王位が5筋の位を取ると、西山女流二冠は高美濃に組み替え△5四歩と反発します。西山女流二冠が角を交換し飛車を5筋に回して△6五角と打つと、里見女流王位が長考に沈みます。

挑戦者の踏み込み

里見女流王位は47分考えて▲7八金と上がり、左辺の守りを固めます。西山女流二冠が△5四金と上がって銀と交換すると、里見女流王位は▲5五歩と打って角を攻めます。ここで西山女流二冠が32分考えて昼休となりました。西山女流二冠が午前中から激しい手順を選び、居玉の先手陣に攻め掛かっています。各4時間の持ち時間の内、残り時間は里見女流王位が2時間16分、西山女流二冠が3時間4分と1時間近い差が付いています。

挑戦者の連続長考

西山女流二冠は昼休を挟む42分の長考で△6三角と引きます。里見女流王位が▲2二角と打ち込むと、西山女流二冠は更に38分考えて△1二香とかわします。里見女流王位が▲1一角成と馬を作ると、西山女流二冠は更に16分の考慮で△3三桂と跳ねて攻撃への活用を図ります。里見女流王位が▲3二金と銀取りに打つと、西山女流二冠は飛車で銀に紐を付けます。ここで里見女流王位は28分の熟考で▲2三馬と引き、更なる駒得を図ります。

激しい駒の取り合い

里見女流王位が金銀交換して▲3三馬と桂を取って飛車に当てると、西山女流二冠は飛車を見捨てて△4六歩~△4七歩成と銀を取って攻め掛かります。駒割りは飛桂香と銀の交換となり、先手が大きく駒得となっています。西山女流二冠が26分考えて△7四角と出ると、里見女流王位は手厚く▲5六銀と打って守ります。西山女流二冠が銀取りに△4五銀と打ちつけると、里見女流王位は▲4三飛と攻防に打ち込みます。

必死の防戦

西山女流二冠が19分考えて銀を交換し、飛馬両取りに△5二金と打つと、里見女流王位は馬を金と交換し▲4一飛成と竜を作ります。西山女流二冠は金底の歩を打って竜の利きを遮断しますが、里見女流王位の▲5四香が痛打となります。西山女流二冠はやむなく持ち駒の銀を埋めて凌ぎますが、里見女流王位は9筋からの端攻めで挟撃態勢を作ります。

勝負手の成否は

西山女流二冠は端を手抜いて、竜取りに△2四角と打つ勝負手を放ちます。里見女流王位は慎重に9分考え▲4五竜とかわしますが、西山女流二冠は構わずもう1枚の角で金を食いちぎり竜取りに△4六金と打ちます。里見女流王位が▲9四歩と伸ばして詰めろを掛けると、西山女流二冠は歩を打って詰めろを逃れます。ここで里見女流王位が4分の考慮で竜を金と刺し違えたのが決め手となりました。西山女流二冠は角で竜を取るしかありませんが、後手玉には即詰みが生じており、里見女流王位は▲9三角から連続王手で迫ります。西山女流二冠は数手指し続けましたが、89手目の銀の王手を見て投了を告げました。

第四局の結果

本局は後手の西山女流二冠が居玉の先手陣に積極的に仕掛けましたが、後手の角を押さえ込んだ里見女流王位が着実に駒得を拡大して優勢になりました。西山女流二冠は思い切った攻撃で先手陣に迫りましたが、冷静に見切った里見女流王位が最後は鮮やかな即詰みに討ち取りました。
この結果、里見女流王位は3勝1敗となり4期連続8期目の女流王位防衛を果たしました。対局後には「女流王位戦は何とか結果を出せました。今後にもいい影響を与えられるように頑張っていきたい」と語りましたが、先日は棋士編入試験の受験資格を得るなど、充実ぶりは著しいものがあります。
西山女流二冠は初出場の女流王位戦でしたが、惜しくも奪取はなりませんでした。対局後に「いろいろな展開の将棋を指して、何とか課題を克服できるようにやっていたので、そういう意味では学びの多かったシリーズかなと思います」と話しており、来週にはマイナビ女子オープンの第五局が予定されていますので、気持ちを切り替えての好局を期待したいと思います。

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