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「観る将」が観た第5期清麗戦第三局

8月8日に第5期大成建設杯清麗戦五番勝負第三局が、大阪市のセンタラグランドホテル大阪で行われました。里見香奈清麗に西山朋佳女流三冠が挑む五番勝負は、ここまで両者1勝1敗と互いに譲らず、勝った方がシリーズ制覇にあと1勝と迫る注目の一局となりました。


戦型は中飛車対四間飛車

挑戦者の西山女流三冠が藤色と黄色のグラデーションの着物と紫色の袴で入室し、里見清麗は白と桜色のグラデーションに小さな花柄の着物と亜麻色の袴で入室します。先手の里見清麗が中飛車に振り、9筋の端歩を突き合ってから、通常は振り飛車の守り駒となる右銀を三段目に繰り出す趣向を見せると、西山女流三冠は四間飛車に振ります。

里見清麗が居飛車に戻して対抗形に

里見清麗は▲5七銀と左銀も繰り出すと、西山女流三冠は4筋の歩を突き、互いに3筋に桂を跳ねて備えます。里見清麗は玉を7筋に移動し、西山女流三冠が玉を8筋に寄せると、2筋の歩を突いてから飛車を2筋に戻します。里見清麗が時々見せる中飛車から居飛車に戻す作戦に対し、西山女流三冠は4筋の歩をぶつけて仕掛けます。

桂交換から飛交換

西山女流三冠は歩交換に続いて桂も交換し、里見清麗が2筋の歩を突き捨ててから▲4六銀直と飛車に当てると、△2五飛とぶつけて飛車も交換します。お互いの読みと意地が真っ向からぶつかり合い、早くも激しい駒の取り合いになっています。

西山女流三冠の角

里見清麗が角取りに▲2三飛と打ち込むと、西山女流三冠は角を1筋に上がって受けます。里見清麗が1筋の歩を突いて角を追うと、西山女流三冠が次の46手目を考慮中に昼休となりました。形勢はまだほぼ互角、各4時間の持ち時間の内、残り時間は里見清麗が2時間23分、西山女流三冠が2時間39分と拮抗しています。

里見清麗の馬

ここで角を見捨てて4筋から攻め込む手も有力だったようですが、西山女流三冠は昼休を挟む13分の熟考で自重し、角を2筋に上がってかわし、里見清麗が飛車を成って角に当てると、△5三角と要所に引き付けます。里見清麗は角道を開け、西山女流三冠が取られそうな香を浮いてかわすと、▲3三角成と馬を作ります。形勢はわずかに里見清麗に振れてきたようです。

熟考の応酬

西山女流三冠が21分の熟考で銀を上がってようやく美濃囲いを完成させると、里見清麗は4筋に歩を垂らして"と金"攻めを狙います。西山女流三冠が歩で受けてから、更に25分熟考して逆に3筋に歩を垂らすと、里見清麗は17分の考慮で構わず5筋の歩をぶつけます。西山女流三冠は△8四桂と打って先手の玉頭攻めを狙いますが、里見清麗は5筋の歩を取り込んで角を引かせてから、6筋の歩を突いて馬の利きを自陣に通します。

銀得

西山女流三冠が△4九飛と先手陣に打ち込むと、里見清麗は6筋の歩を伸ばして銀に当てます。西山女流三冠が銀を見捨てて△7六桂と跳ねると、里見清麗は▲5九金寄と飛車を追ってから歩で銀を取ります。西山女流三冠は3筋に"と金"を作り、里見清麗が歩で後手の竜の横利きを止めると、竜をぶつけて交換します。形勢は大きく里見清麗に傾いてきたようです。

高い城壁

里見清麗が取った銀を桂取りに▲7七銀と打つと、西山女流三冠は5筋の銀頭を歩で叩いて馬で取らせ、△4四角と働きの弱かった角を攻撃に参加させます。里見清麗が▲5五銀と出て角に当てると、西山女流三冠はやむなく1筋にかわして馬を作ります。5筋に金金銀馬銀歩と高くて強固な城壁を造った里見清麗は、玉頭に迫る桂を銀で取って駒得を拡大します。

駒柱

里見清麗が▲1一飛と打ち込むと、西山女流三冠は△5三歩と打って城壁を崩しに掛かります。里見清麗が構わず7筋を歩で攻めて▲8六桂と後手陣の急所を突くと、西山女流三冠は5筋の金底に香を打って先手の飛車の横利きを止めます。里見清麗が▲7四桂と王手すると、西山女流三冠は数分考えましたが、次の手を指さずに投了を告げました。5筋に立った駒柱がそのまま残る、珍しい投了図となりました。

まとめ

本局は中飛車から居飛車に戻した里見清麗に対し、西山女流三冠が積極的に仕掛けて駒をぶつけていきました。里見清麗は一歩も引かずに桂交換と飛交換に応じ、先に竜と馬を作ってからは丁寧に後手からの攻め筋を消しました。西山女流三冠は駒損を厭わず攻撃の糸口を探りましたが、里見清麗は強固な城壁を築いて後手からの攻撃を封じ、持ち時間を1時間以上残しての快勝となりました。
対局後のインタビューで、里見清麗は「次局も先後が決まっているので、一生懸命頑張りたいと思います」と話し、防衛にあと1勝となった余裕を感じさせました。
西山女流三冠は「本局はひどい内容を指してしまったのですが、できるだけ切り替えて次局に挑みたいなと思います」と話しており、先手番となる次局での巻き返しに期待したいと思います。

大成建設杯清麗戦は大成建設が主催しています。棋譜は下記サイトをご確認ください。


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