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第1回ABEMA師弟トーナメント予選Bリーグ2位決定戦

2月12日、ABEMA師弟トーナメント予選Bリーグ2位決定1回戦が放映されました。チーム谷川「飛翔」とチーム中田「博多侍」の顔合わせとなっています。ここまで両チームとも師弟がともに白星を挙げており、目が離せない勝負となりそうです。

■一局目 都成竜馬七段 ● vs 〇 佐藤天彦九段
両チームとも弟子が先陣を切ります。振り駒で後手となった都成七段が四間飛車に振り、佐藤九段が角交換すると向かい飛車に振り直します。佐藤九段が左美濃から銀冠に組み替えると、都成七段も穴熊に囲います。佐藤九段も穴熊に潜り、1,6,2筋の歩を突き捨ててから1筋の香を走り、香で取らせてから▲1二角と打ち込みます。佐藤九段は▲2二飛成と竜を作り、▲4四角成と馬も作って攻め込みます。都成七段は自陣に角を打って凌ぎ、金底の歩を打って竜の横利きを緩和します。佐藤九段は馬で金を食いちぎり、"と金"で金を追って底歩を取り除きます。両者時間に追われる中、都成七段が△8二香と攻防に打つと、佐藤九段は一度自陣に引いた竜を再び敵陣に戻して攻め込みます。都成七段は敵陣に△2七角と打って自陣の金に紐を付けますが、佐藤九段は相手の歩頭に▲3六銀と打つ妙手で角の利きを遮断します。激しい玉頭戦となり詰むや詰まざるやの攻防が繰り広げられましたが、最後は佐藤九段が玉を盤面中央方面に逃げ込み都成七段の投了となりました。

■二局目 谷川浩司九段 〇 vs ● 中田功八段
お互いに師匠が出陣し、師匠同士の対決となりました。後手の中田八段が三間飛車に振ると、谷川九段も向かい飛車に構えて相振り飛車の将棋となりました。中田八段は美濃囲いに構えて、飛先の歩を交換します。谷川九段も飛先の歩を交換して六段目に引き、金無双に構えます。中田八段が△4五銀とぶつけると、谷川九段は7筋の歩を突き捨ててから香取りに▲5五角と飛び出します。中田八段が手抜いて△5六銀と銀を取ると、谷川九段は▲9一角成と飛び込みます。中田八段は銀を成り捨て△4五桂~△5七銀で攻めをつなぎます。谷川九段は▲4六香と打って角道を遮断しますが、中田八段は構わず△5七金と打ち込んで攻め込みます。谷川九段が▲4五香と桂を外すと、中田八段は△6八角成と馬を作ります。先手陣もかなり危険な状態になりましたが、谷川九段は▲8三飛成から猛攻を仕掛けます。中田八段は銀2枚を自陣に投入して粘りましたが受けなしとなり、馬を切っての反撃も届かず投了となりました。

■三局目 谷川浩司九段 〇 vs ● 佐藤天彦九段
チーム谷川は弟子の要請で師匠が連投です。先手の佐藤九段が矢倉を選択し、谷川九段は急戦調の駒組みを進めます。佐藤九段が3筋から仕掛けて飛先の歩を交換すると、谷川九段は強く△2三金と上がって追い返します。佐藤九段が銀をぶつけて交換し▲3二銀と金取りに打ち込むと、谷川九段は△3四銀と打って紐を付けます。佐藤九段が▲2四角と上がると、谷川九段は角と金銀の2枚替えを甘受し△4七角成と馬を作ります。駒得となった佐藤九段が▲4二飛成と竜を作ると、谷川九段はタダで取られる位置に△5七桂と勝負手を放ちます。王手金取りなので佐藤九段はやむなく銀で取りますが、谷川九段の△4七馬と引く手が絶好の一着となります。谷川九段は馬で桂を取ると△6五桂打から先手陣の銀を剥がし、△4三銀と打って竜を追い返します。佐藤九段も▲3八香~▲4五金と打って後手の馬を追い返しますが、谷川九段は銀を香と刺し違えて△6四香と先手の玉頭から攻め掛かります。佐藤九段も▲4三金から後手陣に殺到し、どちらの寄せが速いかという激戦になりました。谷川九段が先手からの攻撃を凌いで△4五桂と打つと、先手玉はあっという間に寄り形になります。受けがないと見た佐藤九段は連続王手で後手玉に迫りましたが届かず、谷川九段が鮮やかな光速の寄せを魅せて即詰みに討ち取りました。

■四局目 都成竜馬七段 〇 vs ● 中田功八段
カド番となったチーム中田は、師匠が「まだ終わってねーから」と言って出陣します。先手の都成七段が3手目に9筋の歩を突き、二局目の師匠と同様相振り飛車を匂わせると、中田八段は1筋の位を取って牽制します。お互いに飛車の位置を決めない駆け引きになりましたが、都成七段が玉を左に動かしたのを見て、中田八段は四間飛車に振ります。都成七段が5筋から仕掛けて飛車を5筋に回すと、中田八段も△6二玉と上がって居玉を解消します。都成七段は3筋の歩を伸ばして桂得となりますが、中田八段は代償に竜を作ります。都成七段は▲5三歩と金頭を叩いてから6筋の歩を伸ばし、飛車で銀を食いちぎって▲5二銀~▲6四桂と後手陣に殺到します。中田八段は△2二角と引いて先手陣を睨み、△8八銀と打ち込んで攻め合います。お互いに時間に追われながらの寄せ合いとなりましたが、最後は都成七段が即詰みに討ち取りました。

【チーム谷川 3勝 vs チーム中田 1勝】
チーム谷川は、師匠の連投での連勝で流れを掴み、予選2位通過を果たしました。特に三局目は序盤に大きく形勢を損ねましたが、2度に渡る桂の好手で大逆転となりました。ご本人は序盤を恥じていましたが、往年の谷川九段の力強さを感じさせる頼もしい勝ち星となりました。弟子の都成七段は一局目を落としたものの、決着局となった四局目では師匠の逆転勝ちの勢いに乗り、思い切りの良い指し手で勝ち切りました。このチームはレジェンド谷川九段がこの日のような強さを見せれば、本戦以降も充分期待できると思います。
チーム中田は、1回戦で2勝した師匠が1位決定戦以降白星に恵まれず、弟子の佐藤(天)九段も個人通算で負け越しと最後まで調子が上がらず、残念ながらここで敗退となりました。師匠が弟子を絶対的に信頼する師弟関係が感じられ、温かみのある好チームだったと思います。

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