見出し画像

「観る将」が観た第1期白玲戦七番勝負第一局

9月11日、いよいよ初代白玲を決める七番勝負がグランドニッコー東京 台場で開幕しました。西山朋佳女流三冠は、順位決定リーグD組を6勝1敗で1位通過し、順位決定トーナメントで加藤桃子女流三段と加藤圭女流二段を破り七番勝負に進出しました。渡部愛女流三段は、順位決定リーグE組を6勝1敗で1位通過し、順位決定トーナメントで石本さくら女流二段と里見香奈女流四冠に勝って七番勝負に駒を進めています。BSフジの番組「白玲 ~初代女流棋士No.1決定戦~」では、西山女流三冠は「豪腕」、渡部女流三段は「天才肌」と紹介されていました。両者は意外なことに、本局がが初めての対局となりました。

渡部愛女流三段が華やかな水色にピンクや紫の花柄の着物で入室し、続いて西山女流三冠が凛々しい黒とベージュの着物で入室します。振り駒で先手となった西山女流三冠は、初手▲5六歩からゴキゲン中飛車に構えます。渡部女流三段が穴熊を目指すと、西山女流三冠は3筋から仕掛けた後、自玉も穴熊に囲います。

渡部女流三段が△8四飛と飛車の横利きで角頭を守ると、西山女流三冠も▲5六飛と浮いて角頭を守ります。渡部女流三段が△7三桂と右桂の活用を図ると、西山女流三冠は強く▲3七桂と玉側の桂を跳ねます。渡部女流三段が角を引いて桂の当たりを事前に避けたところで昼休となりました。残り時間は西山女流三冠が2時間45分、渡部女流三段が2時間16分となっています。

昼休明け、渡辺女流三段は△6五桂と跳ね、西山女流三冠も▲4五桂と跳ねます。西山女流三冠は更に▲5三桂成と成り捨て、後手陣の金を囲いから離してから角交換します。渡部女流三段は飛車取りに対して△4五飛と金と刺し違え、先に△5七角と敵陣に打ち込みます。西山女流三冠も構わず▲7二飛と敵陣に打ち込み、▲3四桂と後手玉に迫ります。後手陣の金銀を剥がした西山女流三冠は、竜を切って▲4二角と詰めろ金取りに打ち込みます。渡部女流三段は△3九角成と詰めろを掛けて形を作り、西山女流三冠の105手目▲4四馬を見て投了を告げました。西山女流三冠は持ち時間を57分残しての完勝となりました。

本局は、渡部女流三段が先に右桂を五段目まで跳ねましたが、先手からの目標にされてしまい取られるだけの駒になってしまいました。一方西山女流三冠は玉側の桂を跳ねる強気の構想を見せ、後手陣の金の守備力を弱める成果を上げました。飛車と金の交換になって、西山女流三冠が後手陣に飛車を打ち込んでからは、瞬く間に穴熊の堅陣を崩壊させ、そのまま鮮やかに寄せ切りました。渡部女流三段は桂跳ねの後に何か誤算があったようで、力を出し切れない将棋となってしまいましたが、次局以降の巻き返しに期待したいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?