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「観る将」が観た第10期女流王座戦第五局

12月14日に行われた女流王座戦五番勝負第五局を観た感想です。ここまで両者2勝2敗となり、本局の勝者が第10期女流王座となります。西山女流王座の初防衛か、里見女流四冠のタイトル奪還か、楽しみな一局となりました。

注目された戦型は、振り駒で先手となった里見女流四冠が初手▲5六歩から中飛車に、西山女流王座は4手目△3二飛と三間飛車に振りました。第三局と同じ出だしでしたが、先手の▲7七角を見た西山女流王座は角交換して飛車を2筋に振り直します。里見女流四冠もすぐに8筋に飛車を振り直し、先後は逆ですが第四局と同様相向かい飛車の将棋となりました。

里見女流四冠が飛先の歩を交換して▲2九飛と一段目に引くと、西山女流王座も飛先の歩を交換して△2四飛と浮き飛車に構えます。西山女流王座は自陣の整備を保留して、先に銀を繰り出して仕掛けます。里見女流四冠は銀交換から▲4六角と攻防の角を打って凌ぐと、▲1七銀~▲2六銀と相手の飛車に圧力を掛けます。西山女流王座は△1五角から角を切っての猛攻に出ましたが、里見女流四冠は丁寧に受け止めてから▲2一飛と敵陣に打ち込み反撃に出ます。

玉が薄い西山女流王座の王は素人目には絶体絶命に見えましたが、△1三飛の王手角取りで詰めろを逃れ、2枚の角で立て続けに両取りを掛けて逆襲します。細い攻めをなんとかつなぐ西山女流王座でしたが、龍取りに打った△2一香が遠く相手玉の近くに利いて、ついに形勢は混沌としてきました。西山女流王座は、更に△2八銀不成~△3九龍と相手玉に迫り、△2七香成で待望の詰めろが掛かります。里見女流四冠は、玉を盤面中央まで逃がしますが、こうなると西山女流王座の攻めは止まりません。最後は西山女流王座が自陣近くまで逃れてきた相手玉を受けなしに追い込み、里見女流四冠の投了となりました。

本局は、多少強引に仕掛けた西山女流王座の攻撃を、里見女流四冠が受け切り勝勢かと思われる局面もありましたが、最後は諦めずに攻め続けた西山女流王座に勝利の女神が微笑みました。里見女流四冠としては、対局後に本人も語っていた通り、優勢になってから慎重になりすぎたのかもしれません。

この結果、西山女流王座は昨年奪取したタイトルの初防衛を果たしました。昨年は奨励会三段リーグで次点に輝き、第92期棋聖戦では女性初の一次予選突破を果たすなど活躍が続く西山女流王座ですが、女流三冠を維持しつつ四段昇段という夢を叶えることができるか注目していきたいと思います。

里見女流四冠は、タイトル戦では昨年から西山女流王座に4連敗となってしまいましたが、両者の実力が拮抗していることを示すシリーズとなりました。現時点で女流タイトル獲得通算42期は、清水女流七段の持つ歴代1位の記録にあと1期に迫っており、抜き去るのは時間の問題と思われます。今後も女流棋界を牽引する第一人者として、「出雲のイナズマ」と称される力強い将棋を魅せてくれることを期待しています。

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