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「観る将」が観た第14期マイナビ女子オープン五番勝負第一局

4月6日、2021年度タイトル戦の先陣を切って、西山朋佳女王に伊藤沙恵女流三段が挑戦するマイナビ女子オープンの第一局が行われました。両者のこれまでの対戦成績は、西山女王5勝、伊藤女流三段1勝となっています。

西山女王は第11期に本タイトルを奪取しており、今期は4連覇に挑む防衛戦となります。奨励会を退会し、心機一転女流棋士として指す初めての対局でもあります。この日は紺地に花柄の鮮やかな配色の着物で登場しました。

伊藤女流三段は初めての女王挑戦であり、今回が8回目のタイトル挑戦となりますが、悲願の初戴冠を目指す番勝負となります。この日は桜地に花柄の春らしい配色の着物で登場しました。

本局は、先手の西山女王が三間飛車に振ると、伊藤女流三段はいきなり角交換し、2七と6七の地点に利かせて△4五角と打ちました。西山女王も6七の地点を守りつつ6三に利かせて▲8五角と打ち、序盤早々乱戦模様となりました。互いに馬を作り、西山女王は7筋から突破を図りますが、伊藤女流三段は金を四段目まで繰り出して守ります。

昼休明け、伊藤女流三段は馬を5四の好位置に引き付けてから△1五歩と端攻めを決行します。西山女王は9筋にいた馬を小刻みに動かし、▲3四馬と前線に飛び出します。伊藤女流三段は△6五銀と中央を制圧し、西山女王は少し苦しい形勢ながらも低い陣形で受けに回っています。

伊藤女流三段は1筋で交換した香を、飛銀の田楽刺しに△7五香と打ちます。西山女王は銀を取らせる間に右銀を繰り出し、攻防に良く利いた相手の馬取りに▲4五銀と出ます。西山女王の攻撃が加速してきましたが、今度は伊藤女流三段がじっと馬を引き自陣に桂を打って守ります。西山女王は執拗に5四の地点を攻め続け、ついに▲5四銀と制空権を取り戻しましたが、その瞬間伊藤女流三段は攻め合いに転じ、飛車を相手の馬と交換します。

両者秒読みとなり形勢も混沌とした激戦となりましたが、西山女王は飛車を敵陣に打ち竜を作って攻め立てます。伊藤女流三段は5筋に2枚の香を設置して、相手の玉頭に狙いを定めます。伊藤女流三段は馬を切って△5五銀と竜飛両取りを掛けましたが、この辺りで形勢を引き寄せてきたようです。

飛車と角の総交換となり、少し苦しくなってきた西山女王は、2枚の角で敵陣に迫ります。伊藤女流三段も敵陣に飛車を打ち、ついに香の2段ロケットを発動させます。西山女王も粘りましたが、自陣の金を2枚剥がされ受けなしとなり、無念の投了となりました。

本局は、伊藤女流三段が序盤から積極的に仕掛け、先に馬を好位置に引き付けて主導権を握ったように思います。西山女王も迫力ある反撃を見せ、互いの大駒が乱舞する激しい将棋となりました。伊藤女流三段は「一手一手考える将棋になった。形勢は難しいと思っていた」と語り、西山女王は「こちらの玉形が詰みやすい形なので、ずっとちょっと苦しかったのかもしれない」と語りましたが、どちらが勝ってもおかしくない激闘だったと思います。

挑戦者が後手番で先勝したことで、本シリーズは俄然面白くなってきたように思います。次局以降も両者が持ち味を出し切り、熱戦となることを期待したいと思います。

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