見出し画像

「観る将」が観た第29期倉敷藤花戦三番勝負第一局

11月1日、第29期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負が関西将棋会館で開幕しました。里見香奈倉敷藤花は既にクイーン倉敷藤花の資格を持ち、今期は7連覇が懸かるシリーズとなります。挑戦者の加藤桃子女流三段は、今期の予選トーナメントでは準々決勝で前期挑戦者の中井広恵女流六段、準決勝で伊藤沙恵女流三段、決勝で野原未蘭女流初段を破って挑戦権を獲得しました。

両者の対戦成績は里見倉敷藤花の24勝8敗だそうです。両者のタイトル戦は現在進行中の清麗戦を含め9シリーズ目となりますが、里見倉敷藤花が6勝1敗と圧倒しています。里見倉敷藤花は現在本棋戦を含め4棋戦でタイトル戦を同時並行で戦っています。里見倉敷藤花が加藤女流三段の挑戦を跳ね返して西山女流四冠からタイトルを奪取するのか、加藤女流三段が里見女流四冠からタイトルを奪取して二強に割って入るのか、注目の対局が続いています。

【参考】進行中の女流タイトル戦
清麗戦五番勝負   里見香奈清麗1勝-挑戦者加藤桃子女流三段2勝
女流王将戦三番勝負 西山女流王将1勝-挑戦者里見香奈女流四冠1勝
女流王座戦五番勝負 西山女流王座0勝-挑戦者里見香奈女流四冠1勝
倉敷藤花戦三番勝負 里見香奈倉敷藤花-挑戦者加藤桃子女流三段

振り駒が行われて加藤女流三段が先手となり、里見倉敷藤花が中飛車に振り対抗型の将棋となりました。加藤女流三段は超速3七銀戦法で迎え撃ち、銀対抗の形になります。里見倉敷藤花が銀冠に組むと、加藤女流三段は6筋の位を取って中央に厚みのある陣形を敷きます。里見倉敷藤花が△3二金と上がってバランス良く構えると、加藤女流三段は積極的に▲4五銀とぶつけて開戦します。

里見倉敷藤花が銀交換に応じると、加藤女流三段は▲5三銀と打ち込みます。角と銀桂の2枚替えになりますが、加藤女流三段は飛先の歩を交換してから▲8六角と覗いて攻め掛かります。里見倉敷藤花が手堅く持ち駒の銀を△3三銀と打って受けると、加藤女流三段は3筋の歩を伸ばして後手の銀を動かし▲4二角打と飛車取りに打って攻め続けます。里見倉敷藤花が△4一飛とかわしたところで昼休となりました。各時間の持ち時間の内、残り時間は里見倉敷藤花が1時間11分、加藤女流三段は51分となっています。

昼休明け、加藤女流三段は▲7五角引成といったん退却して馬を作ります。里見倉敷藤花は△9五歩~△7四銀打と先手の角と馬に圧力を掛け、△6六桂と王手を掛けて先手陣の金を1枚剥がしますが、加藤女流三段も4筋の歩を伸ばし▲4四歩と銀を取り返します。里見倉敷藤花は飛車を6筋に回してから△9七歩成と端を突破し、加藤女流三段は角を切って凌ぎます。里見倉敷藤花は△4五角と王手で打ち、△6七金と打ち込んで寄せに入ります。

加藤女流三段は後手の飛頭に▲6二歩と叩きを入れますが、里見倉敷藤花は手抜いて△9五歩と挟撃態勢を作ります。加藤女流三段は飛車を取って下駄を預けましたが、里見倉敷藤花の△9七角のタダ捨てが決め手となりました。里見倉敷藤花が△8九角成と馬を作ったところで先手玉は必至となり、加藤女流三段は無念の投了となりました。

本局は加藤女流三段が積極的に仕掛けて攻め込みましたが、里見倉敷藤花は先手の2枚角を押さえ込んで反撃に転じ、端攻めを絡めて挟撃態勢を作って鮮やかに寄せ切りました。短期決戦の倉敷藤花戦は、早くも里見倉敷藤花が防衛に王手を掛けました。第二局は11月20日に予定されていますが、加藤女流三段が勝てば最終第三局は翌21日に行われますので、第二局を制することができれば流れを引き寄せることも可能です。また、倉敷藤花戦第二局の前には、清麗戦の第四局と第五局が予定されており、清麗戦の結果が倉敷藤花戦に影響を与えるのは間違いありません。両者のダブルタイトル戦の行方に注目していきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?