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オーダーメイド靴の価格のこと

オーダーメイドの靴は、みなさんご存知の通り決して安いものではありません。

それは、1足ずつ手間をかけて既製品ではとてもできないような効果的な手法をたくさん用いて、とても丁寧に作られているという理由もあります。

その反面、既製品に比べると作業効率が良くないということもあって、価格が高くなってしまっていることも否めません。

そんな条件の中で、私たちのようなオーダーメイド靴の作り手は、どのように価格を設定しているのか、そのひとつのケースとして私どもが価格を設定したいきさつをお伝えしたいと思います。

まず、セオリー的な話になりますが、商品の価格は販売したら利益が出るような設定にします。たくさん利益を出すのであれば、1足あたりの利益を大きくするか、またはたくさんの方に買っていただけるようにするのか、もしくはたくさんリピートして買っていただけるようにします。

私たちの場合は、回転型で、つまり1足あたりの利益は小さくして、それをたくさんのお客様に買っていただき、適度にリピートしていただくという方向で行くことにしました。

それには理由がありまして、販売する靴の性格を普段使いできるものとして打ち出しているので、価格の高い商品ではその性格に合わないためです。

そもそも、私が靴の仕事を始めたことは、日本の靴の文化を向上させたい、みんながちゃんと快適な靴を履いて、みんなが健やかに過ごせるようにあってほしいという気持ちがあっての靴工房でしたので、自ずと価格は普及を意識したものになります。

ただ、お客様からすると価格が安いということは、嬉しい反面心配な部分もあるはずで、私たちがどのようにして安くしているのかということもしっかりとお伝えするようにしています。

そのメカニズムは、まず工房の立地です。工房が郊外のどう見ても商売をやっていくのに向いていなさそうな場所にあり、さらにその建物は身内の所有で安く借りられるということで、固定費がかなり抑えられています。

そして、製作において機械を使ってもクオリティが落ちない部分(例えばミシンをかけるとか、漉きとか、あとはだし縫いや削りなど)においては積極的に機械を使い、作業時間をとことん短縮して製作コストを下げる反面、

手作業でないとクオリティを保てない部分(ラスティングやウェルティング)においては、じっくりと時間をかけて丁寧なモノづくりをバランスよく実施しています。

さらに、私たちの場合は外注を使う部分が非常に少なく、製作においてはだし縫いのみ、ウェブサイトの制作や管理、商品の輸入業務は私どものスタッフが行っていますので、そのあたりでも十分に費用が抑えられています。

そのような環境の下で、比較的リーズナブルだけどお客様には納得していただける商品を提供できるシステムが成り立っています。

コストのことを言ってしまえば、本当は正解なんてなくて、かつてはマーケティングの手法としてのブランディングで、利幅を大きくするという考えが当たり前だった頃もありますが、果たしてそれが正しかったのか、今でも正しいのかはわかりません。

ビッグデータを使って世の中の流れを把握して、その先で待っているような手法もありましたが、それもちょっと...。

私たちのような、資本力がない極めて小規模な事業者は、とことん真面目に、お客様一人一人と向き合って丁寧に接して行くのが好ましいはずで、飛び道具的な作戦は合わないと思っています。

なので、お客様を欺くことなく、地道に行くためにも比較的リーズナブルという価格設定は、私たちのような小規模な工房に今のところは適しているのだと思います。

繰り返しになりますが、このやり方が正解なのか否かは全くわかりませんし、それ以前にビジネス的に成功すること自体が正解なのかもわかりません。

もしかしたら、貧しくてもス気ままにのんびりとやって行くことがあとから見たら正解なんてこともありますから。

まぁ、わからないことを突き詰めるのはナンセンスなのでそれはそのうち何かの時にわかるとして、私たちはたくさんの方々に快適な靴を履くことでの心地よさを知ってほしいということから、頑張ってこの価格を維持しています。

言ってみれば、価格も技術のうちですから、リーズナブルな価格で提供できることは、良いことでしょう。

作り手は、皆それぞれ考えがあってその価格で販売しているのですから、それをずっと継続できているところは今のところは正解と言えます。

ひとつ思うのは、その価格だけ見ると高すぎるとか安すぎると思えることも、その商品の本質と比べてみた時に、意外にも割安だったり割高だったりすることが往々にしてあるということ。

私たちは、お客様と永くお付き合いできるよう、またあそこの靴屋でオーダーしようと思っていただけるよう、納得して喜んでいただける商品を納得の価格で提供すると決めています。

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