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左利きの生徒さんへの書道の指導①ー池山光琇の場合

こんにちは、書道玄海社・師範の池山光琇です。
東京都世田谷区で約30年、光栄書道会を主宰しております。

教室をやっていて行き当るのが、利き手の問題です。
左利きのお子さんをお持ちの親御さんの中には、書道は右手で書かせた方がよいかどうか、悩まれている方もいらっしゃると思います。

冬休みといえば、小学校3年生からは毛筆での書き初めの宿題がでて、ご家庭での指導は難しいというお話を耳にし、単発での書き初め指導をお引き受けしています。
今回もその中に、小学5年生の男子で左利きのお子さんがいました。

<そもそもなぜ毛筆は右手で書いた方がよいのか>
歴史的背景:
 漢字の起源は古代中国で、現存する最古の漢字は紀元前1300年ごろの甲骨文です。それ以降、祭祀用の青銅器に鋳込まれた金文、秦の始皇帝が公式書体として制定した小篆、それを簡略化して速く書けるようにした隷書に変化していきました。そしてここまでは、横画は水平であり特に右利きが有利という字形にはなっていません。
 その後、さらに簡略化が進み、草書・行書が生まれ、4~5世紀ごろには楷書の成立へと進展しました。そしてこの楷書が現在における基本書体となっています。
 この長い年月をかけて 発展してた楷書の字形の特徴である、『右上がりの横画』、『右払いの独特な形状』 などは、右手で書きやすい形になっています。
 また日本で独自に発展した仮名文字も右回転のものが多く、これを左手で書くと、字を左手で隠してしまい、書きづらくなります。
 つまり、文字が発展してくる過程において、圧倒的に右利きの書き手が多かったため(世界的にも9割は右利きといわれている)、必然的に右利きが書きやすい形状に定着したと考えられます。

矯正することによるデメリット: 
(精神面)
無理やり右手で書かせて大丈夫?
親御さんが一番心配されるのが、左利きのお子さんに対して無理に右手で書かせることにより精神的なストレスを 与えてしまうのでは、ということではないでしょうか?
無理やり右手で書くことを強要すれば、お子さんにストレスを与えかねません。

(機能面)
利き手でないと力がはいらず、うまく書けないのでは?
毛筆は硬筆とは異なり筆圧を強くかける必要がありません。ですので利き手でないと力がはいらなくてうまく書けない、という心配はいりません。
両手で書く訓練をすることは、脳の新たな分野を刺激するのでその活性化に役立つという話も聞きます。
 
<私の左利きのお子様を指導するにあたってのポリシー>
 まずは、親御さんとお子さんの意向を伺い、本人の意思を尊重します。
迷われている場合には、私は毛筆は右手で書くことをお勧めします。
 毛筆の基礎点画(運筆・払い・止めなど)は右利き用に培われてきたものなので、左手で角度や紙のおき方を調整して書くというやり方もあるようですが、最初から右手で書いた方が上達が早い印象です。

 
ただし、小筆で名前などを書く場合に、本人が左手で書きたいという希望があれば、OKにしてます。 毛筆で書く最初の段階では、右利きの人でも新たな技術を習得するという意味で同じスタートラインに立っているわけですから、右利き・左利き関係なく、右手で始めれば、問題ないと考えています。
 
 冒頭に出てきた小5のお子さんも、最初に
「僕は左利きなので右手で書くと「な」の最後の部分がつぶれてしまうんです」 
と言っていましたが。それは運筆の仕方を知らないからで、右手でも筆の持ち方・書き方のコツを教えたら、きれいに潰れずに書けました。
 ただ、小さい名前のところは右手では書きにくいということだったので、そこは左手で書いてもらいました。

 このポリシーは私独自のものであって、書道玄海社が一律この様なポリシーで指導しているというわけではありません。
それぞれのお教室の先生が、独自の考えで指導していらっしゃいますので、どうぞ直接ご相談してみてください。

 この 『左利きの生徒さんの指導』 について、他の指導者の先生方は、どのようにされているのか、ご指導を受けた生徒さんたちはどのように思われているのか、とても興味をもっています。
 そこで、このテーマについて、インタビュー形式で、このあとそれぞれのお教室のお話をレポートしていきたいと思います。

ご期待ください!!


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