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古文字あれこれ【簪(かんざし)】その3

こんにちは、書道玄海社・師範の加藤双涛です。
こちらでは、シリーズで「古代文字あれこれ」について綴っていきたいと思います。

「才と在」の古文字

 白川静によると、「風邪(かぜ)も“ふうじゃ”という神さんです」といいます。邪神ですが神様なので大切に扱わなくてはならない。しばし滞在いただいて、丁寧にお見送りし、お帰りいただく。古い時代の日本では、山や川、石ころに至るまでどこにでも神さんはいました。仏さまも神さまも一緒で総ての“もの”に宿り、人々を謙虚にし、畏(かしこ)くする。

コロナも風邪の一種と考えると、これとも末永くつきあっていく必要がありそうです。

 「才」の古文字は、十字架の形をしています。先の尖った棒を標木として地面に突き立て、横木をつけ、その縦横の交わった個所に祝禱(しゅくとう)を収める器をつけた形です。

 偶然とはいえ、才や在を書の作品に使おうとしたときに、“十字架”と同じというところに東洋と西洋の不思議な縁を感じました。

 才(さい)は、“ある”とも読まれ、在の意に用いられるといいます。

 「標木を立てることにより、その地は祓い清められ、神の支配する所となり、場所的にも時間的にも清められたものとして在ることを意味します。簪が魔除けに使われたように、先の尖った棒には邪気を払い、厄を退ける力があります。」(『字統』白川静より)

才の甲骨文と さい

 「在」は才の繁文といいます。才に「士」の形を加えたもので、“ある、おる”と読まれています。「士」の古文字は、小さな鉞(まさかり)の刃部を下にしておく形で、士の身分を示す儀器と言われ、鉞の大きいものは王、小さなものは戦士という具合です。「在」のもともとの意味は、鉞を聖器として士を守るものといわれています。

士と在の古文


 「𢦏(さい)」は、才と戈とに従い、戈(ほこ)に呪符としての才をつけて戈を祓い清める形です。軍事を始めるときの儀礼を表すといい、日本人の最も根元的な思想、ミソギ、ハラエ、キヨメの意を表し、“もの”の初めの意を表すとされています。

さいの甲骨文


“天地人(てんちじん)三才” (三才は三材とも書く)という言葉がありますが、これは最も根元的な存在を意味し、転じて宇宙の万物を指すといいます。天を宇宙とし地を地球とすれば、人は、太陽を中心とする地球上のありのままの自然の中に存在するヒトを含む万物を意味するともとれます。


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