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「IVS2024 LAUNCHPAD」 優勝秘話と、スタートアップ業界に対する想い。

RENATUS ROBOTICS Inc.(レナトス ロボティクス)の安藤(@shocolt)です。私たちは、東京大学発の米国・物流・ロボティクススタートアップです。ボードメンバーにアメリカ人を含め、US法人親会社・日本法人子会社の2拠点で事業を展開しております。創業3期目、Nasdaq上場を目指しています。

私たちは、先日行われた、起業家の登竜門「IVS2024 LAUNCHPAD KYOTO」のピッチイベントにて、300社以上(海外比率20%)の応募から選ばれた15社の決勝進出者の中、「スタートアップ京都国際賞(優勝:賞金1,000万円)」、そして「オーディエンス賞」のW受賞をする事ができました。

IVSピッチ大会、自動倉庫のレナトスロボティクスが優勝-日本経済新聞

日本経済新聞さんをはじめ、テレ朝さん、フジテレビさん、NHKさん、KBS京都さんなどの数多くのメディア様に取り上げて頂きました。

年々、注目度の高まるIVSの凄さに感銘を受けると同時に、素敵な機会をご提供頂いたIVS運営の方々に、まずは感謝申し上げたいと思います。

今回は、そんな「IVS2024 LAUNCHPAD」に臨んだ私たちの裏側と、私個人がスタートアップの世界に浸かっている中で、日頃考えていることについて書こうと思います。


01. IVS LAUNCHPADに出て良かったこと

思いの丈をピッチに乗せた瞬間。こんなグシャグシャな顔している自覚は無かったです。笑

いきなりですが、IVS LAUNCHPADに出場させて頂いて、1番良かったと感じでいる事について書きます。

それは、「自分たちの挑戦を、初期から応援してくれている方々に対して、恩返しができること」です。本当にこれに、尽きます。

優勝した後に、お声がけをして下さる方々もたくさんいます。 もちろんとてもありがたい事ですし、大変光栄な事です。

ですが、まだプロダクトもまともに無い頃から、私たちのビジョンに共感して、ガツンと投資してくれたVCさん。そして、前の輝かしいキャリアを捨てて集まってきた、エンジニアの皆さん。

他の選択肢も、無数にある中で RENATUS ROBOTICSに賭けてくれた方々には、本当に頭が上がらないですし、 「RENATUS ROBOTICSを選んで良かった」と思って貰う必要があると、私は考えています。

・「あのRENATUS ROBOTICSに、初期に投資したあのキャピタリストの方ですか!」
・「あのRENATUS ROBOTICSに、初期にジョインしてたエンジニアの方ですか!」

みたいに、RENATUS ROBOTICSに関わった方々の人生を、ブチアゲていけるような状態を作る。

そして、こうやって周囲に何かを配れるようになる為にも、会社をもっと強くしていく。

この積み重ねこそが、更なる応援を集め、「次なる大きな挑戦への切符」をもたらすと考えています。

02. ピッチで意識した「感動体験の創造」

ピッチの中で意識したことは無数にありますが、自分がピッチに向き合う姿勢として、特にユニークだったなと思うことは

「6分という持ち時間の中で、オーディエンスに最高の感動体験を与え、興奮して帰ってもらうこと」です。

ピッチはあくまでピッチです。ピッチで勝ったからと言って、事業の成功が確約されるものではありません。

私はむしろ、ピッチコンテストとは、

・アイドルのオーディション
・フィギュアスケート
・漫才

などエンタメ・スポーツに分類されるべき競技だと認識していました。

ピッチの会場。横幅20mほどの大きなステージ。夏フェスのようでした。

今回のLAUNCHPAD終了後、「これは、起業家のM-1だった」と何名かがSNSで発信されていましたが、全くその通りだと思います。

上記の前提の中で、意識したことは2つです。

1つ目は、「ドラマのようなストーリー性」です。

私たちの事業は、ロボティクスという、文字通り機械的で無機質な事業です。だからこそ、人の心が動く「エモさ」をどのように表現すべきかを考えました。

具体的には、私たちの創業のきっかけや、私たちが切り開く未来について、登場人物やセリフを交えながら、まるで6分間の一つの「ショートドラマ」をお見せするような気持ちで、ピッチの構成を組み立てました。

そして、それをより臨場感を持って皆様に伝えられるよう、BGMやジェスチャーなどをフル活用し、五感を最大限に刺激するような演出を心がけました。

2つ目は、「声のプロの方々への擬態」です。

私は、表現のプロではありません。そこで、声で生計を立てている「その道のプロを何人か思い浮かべ、彼らに擬態すること」を意識しました。

具体的には、

①バラエティ番組・スポーツ番組のアナウンサー

(今回は、川平さんを吸収。)

②夏フェスで会場を魅了するアーティスト

(さいたまスーパーアリーナでのフェスの最後に出てきたVaundyを連想。)

③アニメ映画の声優さん

(エヴァンゲリオンの碇 シンジの大人Ver.だという意見を頂きました。笑)

④選挙に出馬した街頭演説者

(都知事選挙があったので、これはタイムリー。)

あたりの話し方を研究し、擬態してみました。

「ムムッ!」「いいんです!」「くぅ〜!」などでお馴染みの川平慈英さん

実際、上手く出来てたとは全く思いませんし、なんならだいぶ滑り倒していたのですが、プロを真似るという意識によって、「本気で人に情報を届けるんだと言う意識」が高まったことが、良い結果に繋がった要因になったと思います。

その他の細かなスライドの構成や、枝葉のテクニック論については、過去のツイートにまとめていますので、ご覧下さい。

▼「実際のピッチ動画」と「徹底したこと」

▼G-STARTUPのピッチで工夫したこと

03. ピッチは「経営のメタスキル」

私がピッチで工夫したことは、「あくまでピッチで成果を出すための方法論」に過ぎないなと思います。

一方で、ピッチは「経営のメタスキル」の一つだとも捉えています。

というのも、

・エンプラ向け営業で、大きな金額の決裁を獲得すること
・マーケティング施策で、バズらせること
・投資家を説得し、大型の資金調達を成功させること
・強い人材を口説き、採用すること

これらで要求されることと、ピッチで要求されることとの間に、本質的な差異はないと考えているからです。

先輩企業を見ていても、「ピッチで勝てる会社こそ、PMF後のエグゼキューション力も高く、粘り強く事業を伸ばしていっている」という印象があります。

そういった思いで、今回のLAUNCHPADは、入念な準備をして臨みました。

04. 「確定未来」の中で、やるべきことを淡々とこなす

ピッチを見てくださった方は、ご存知かも知れませんが、私たちのピッチの最後の決め台詞に"物流の「完全無人化」は、確定未来"というフレーズがあります。

私たちのピッチの最後の決め台詞"物流の「完全無人化」は、確定未来"

これは、「物流作業がロボットに代替される未来は確定的であり、私たちは、この当たり前の時代の流れに逆らうことなく、必要とされるものを淡々と作っているだけ」という意味です。

Amazon CEOのジェフ・ベゾス氏も、「未来とは戦わない。確実に来る未来を起点に、事業を作るべきだ。」と言っています。

弊社は、「経営とは、不確実性を削減していくゲーム」だと考えています。もっといえば、「他人にとっては一見不確実性が高いが、自分達にとっては不確実性が低い状態を作るゲーム」だと考えています。

とにかく経営をラクにする為に、不確実性との対峙を極力避ける。確定未来の中で戦う。その上で、自分達にしか出来ない手法で、Moatを作る。

私たちのような技術ファーストになりがちなディープテック企業こそ、これは非常に重要な視点だと考えています。


また、余談ですが、大変ありがたいことに、「確定未来」というフレーズは、ちょっとだけミーム化しました。笑

その根源は、審査員であるインキュベイト・ファンドの赤浦さんが「レナトスのデカコーンは、確定未来‼️」とコメント頂いたところから始まっていそうです。

審査員の赤浦さん

▼2:32:40頃から、赤浦さんの審査員コメント
https://www.youtube.com/watch?v=4cZPv9zw4uA&t=9165s

その後、Twitter(X)やオフラインで、色々な方がイジってくれました。ありがたいです。

ちなみに、「確定未来 大喜利」もやってます!ぜひ、こちらのツイートにリプライする形で、ご参加下さい。

05.  「CEO以外」の人物がピッチに出る意義

敢えて、賛否両論ありそうなテーマを投げ込むのですが、今回ピッチに登壇した私は創業メンバーではありますが、CEOではありません。

RENATUS ROBOTICS inc. COOの安藤です。

もし私が投資家の立場であれば、はっきり言って、ピッチの場では「CEO、出てこいやァ!」と思うに違いありません。

しかし、それは裏を返せば、あくまで投資家の都合に過ぎないと考えています。

前提として、CEOには、色々な形があります。

スタートアップが会社の時価総額を上げていく為には、経営戦略/営業/開発/採用/広報・マーケティング/資金調達・IR/コーポレート…の全てをこなす必要があります。

そして、時々によって重要な経営課題も異なります。

そうした全体最適を考えた時に、全ての会社にとって、CEOがピッチをすることが必ずしもベストであるとは言えないと、私は思います。

投資家が感じている以上に、「CEO、出てこいやァ!」と顧客は思っているかも知れません。

組織全体の状況を踏まえ、今は会社として顧客やプロダクトに向き合う時間を大切にするべきだという考えのもと、今回はCEOでない私が登壇しました。

私個人としては、「むしろこれが、スタートアップのピッチコンテストのデファクト・スタンダードになるべきではないか?」とさえ考えています。

特に、ディープテック領域は、あまり表舞台に立つことを好まないタイプの経営者も多いと感じます。

アカデミアの世界でも、本質的な研究の成果ではなく、「研究費を引っ張るのが上手い人」や、「政治が上手い人」が評価されてしまうのが現状です。

しかし、そう言った研究シーズこそが、本当に日本を変え得ると思いますし、本当の意味で、顧客・プロダクトと向き合っているスタートアップこそが、このようなピッチの場で日の目を見るべきだと考えています。

06. 日本から、「場外ホームラン」を狙う起業家を増やしたい

私は、RENATUS ROBOTICS の一員であると同時に、「日本のスタートアップ村の一員である」という自意識が非常に強いです。

私自身、スタートアップ界隈の方々を集めて、100人規模のイベントを定期開催していたり、日々、積極的にSNSでスタートアップに関する自分なりの考えを発信していたりします。

Twitter(X)では、たまにこんな思考実験をしていたりもします。

▼国内で時価総額1,000億円に到達し得るシナリオ

▼Web3、AI、ディープテックのどれで起業すべきか?という問い

▼CEOが根暗な場合の、経営陣の配置について

前提として、こういったエコシステムを形成する活動が、自社の経営に活かされる場面は、非常に多いと実感しています。

しかし、私はそれ以上に「日本からユニコーン、デカコーンが誕生するには、日本のスタートアップ・エコシステムはどうなっていくべきか?」というテーマに非常に関心があり、どちらかというと後者のモチベーションで、このような活動を継続しています。

日本では、

  • 大きな挑戦をする起業家の母数が圧倒的に少ない

  • 大きな挑戦に人材・資金・情報が集まる土壌が整っていない

と思います。

その主な原因は、「大きな挑戦をし、成功するスタートアップの事例が身近に少なく、イメージが湧きにくいから」だと考えています。

私達、RENATUS ROBOTICS は、大きな挑戦をします。

  • 「あの会社のように、自分も大きな挑戦してみよう!」

  • 「あの会社がうまくいっているから、この会社も成功するかも!応援しよう!」

そんな場外ホームランのモデルケースとなることで、日本のスタートアップに貢献できればと考えています。

長くなりましたが、「IVS2024 LAUNCHPAD」に臨んだ私たちの裏側と、私個人がスタートアップの世界に浸かっている中で、日頃考えていることでした。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

私たちは、これからもバッターボックスに立って、バットを大振りし続けます。

デカコーンを「確定未来」にする為に。


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