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#恋はいつも文庫版解説文

 林伸次さんの書籍、『恋はいつもなにげなく始まってなにげなく終わる。』の文庫版が出ます。心から、おめでとうございます。
文庫本化にあたり、noteで解説文を募集されています。
私はnoteのおすすめをきっかけに林さんとこちらの本を知りました。素敵な本に出会えたお礼の気持ちも込めて、私なりの解説文を書いてみようと思います。

“すべての恋はいつか消える”
なんだか寂しさを感じてしまうけれど、実際そうだと私も思う。出会い、恋をし、別れ、いつの間にか消えてゆく。

ここにあるのは作者である林伸次さんが営むバーで語られた21の恋のおはなし。

なにげなく始まってなにげなく終わってしまう誰かの恋を、そっと大事にしまってくれていたような本です。

1話完結型なので気になるタイトルから読み進めても楽しめます。
正確にいうとおはなしは“完結”していないものもあります。
え、そのあとどうなったの?このひとは幸せになれたの?なんて思うかもしれません。

結末はわからないものもあります。特別なところに踏み込み過ぎずに、きっとマスターである林さんは語られた恋の一部を寄り添うように聞いていたんだろうなと想像します。

季節やその日の風の気分に合わせて選ばれたレコード。私もこの心地よい音楽を聴き、丁寧につくられたであろうそのお酒を想像しながらページをめくりました。

読み進めていくうちに、エピソードによって自分の立ち位置を変えていることに気がつきました。あるときは彼を想う女性に、あるときはカウンターの隅に座るお客目線で。

その時々の自分の心情や状況によって捉え方や考え方に変化があって、何度読み返しても贅沢な時間を味わえます。

『恋愛には四季がある』としたら、私はいま冬を過ごしています。
付き合って3年が過ぎ、お互い気を許しているけど少し気遣いが足りなくなってしまう頃。

結婚の話も出ているけれど、私の大事にしたいポイントと彼との価値観のずれにモヤモヤを抱える日々。

そんなときにこの本に出会って、私たちの春や夏を思い返しました。彼のことは好きだし、私はちゃんと恋していると気づくことができました。

それでも考えてしまう。この恋はこのまま進んでいいのだろうか。
雪国育ちのおかげで私は今この長く続きそうな冬を耐えることができている。

季節を逆戻りすることはできないけれど、もう一度彼と季節を巡らせることは可能だろうか。そう願いたい。

この恋が過去のものになったとき、どんな春を迎えたのか聞いてほしい。

Bar Bossaのカウンターについて、

「マスター、聞いていただけますか?」


noteで全文公開されています。おうち時間にも、いつもの通勤時間にも、家事の合い間にも、ぜひ。

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