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女の勘とは何か考えてみた

「全然彼女とうまくいかないんです」

以前も書いたが、大学の助手さんに当時の彼女とのことをよく話していた。しかし実際に彼女が誰かまでは話しておらず、助手さんは誰が私の彼女が気になっていたらしい(彼女も助手さんの部屋によく出入りしている学生のひとりだった)。

ある日、

「さっきいたあの子が邪悪くんの彼女じゃない? 私の女の勘」

と助手さん。「女の勘」とは大時代な。昔のアニメではよく聞くワードだったが、今では死語である。

「うーん、違いますね」

その後も探りを入れていたが、助手さんは結局一度も当てることができなかった。


あの時思った。そもそも女の勘とは何なのだろうか? 「女性の勘は当たる」と言うが、最近はあまり聞かなくなったし、ただのデマなのではなかろうか。

今改めて「女の勘」でググってみると「女性は脳梁が男性よりも太い」などとかなり疑わしい理由づけがちらほら。

※これを見ていただければ男女の脳の違いなどないことはご理解いただけるかと思う。
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/17/020800002/021400005/?ST=m_labo

男性脳と女性脳に違いはないという研究結果が数年前に発表された時、ネットでは「科学で証明されても私は個人の感覚として信じない」というツイートをしている人がいて、なるほど現実とは作られるものだなと思った。

私は男性/女性脳も左/右脳も信じていないが、それを口にする時はさすがに相手を考えている。科学で違いはないと証明されていると口にしただけで「理屈っぽい」「空気が読めない」などと嫌われてしまうことはよくあるので、正直どうでもいい相手には「ふーん、そうなんだね」とかわすことがほとんどである。

どうしても言い返したい場合はシャーロック・ホームズばりの観察力・推理力で相手の秘密を見抜いて「なんでわかったの?」→「男の勘よ」という流れに持っていって間接的に否定すればいい(したことないけど 笑)。


さて、ところで「勘がいい」とはどういうことか。調べてみると大筋ではこんな感じである。

・男の嘘にすぐ気づく
・浮気していることにすぐ気づく。

なるほどこういうのを「勘が鋭い」というわけか。
ところでそれは勘が鋭いことになるのだろうか?

自分の勘が当たった経験は誰しもあるだろう。私もいくつかある。

突然財布を開いて中身を確認しだした友人に「なに帰りにサー○ルKに寄ってジュース買っていこうと思ってるの?」と尋ねたらびっくりした顔で「なんでわかったん?」と聞かれたし、ずいぶん顔を合わせていなかった女の子に彼氏がいたことを告白されてそれになんとなく気づいていたこと、相手が誰かわかっていたことを伝えたこともある。

後者のネタを明かすと彼氏ができたことはLINEのやりとりでなんとなくわかっていたし、私はその彼氏を一度しか見たことがなかったが、たった一言の会話でもただならぬ雰囲気がわかったものである。その後付き合い出した日まで当てたらさすがにドン引きしていたが。

これは私の勘が鋭いのではなくて、相手を如何に見ているかの話ではあるまいか。そして女の勘が鋭いのではなく、女が男をよく観察しているという話に過ぎないのではないか。

お笑い芸人の磁石のネタに、女の子とのやりとりに文句を言うこんなやり取りがある。

「女の勘はね、鋭いんだからね」
「女の勘!? お前らずっと疑ってるだけじゃねーか! そんなに勘が鋭いんなら競馬の予想をしてみろよ!」
「え〜ギャンブルはちょっと」
「はぁ!?」

これが「女の勘」の正解ではないかと私は思っている。例えばある男性とある女性が付き合っていることが発覚した時、「私そうだと思ってたのよ」という人がいるが、私も意外とわかっていることがある。というよりおそらくみんなそうではあるまいか?

そのカラクリは、誰かと誰かが仲良くふたりで話しているシーンを見かけるたび、そのすべてに「あ、あのふたり怪しい」とマークしておけば、実際に交際が発覚しても「だと思った!」と言えてしまうということだ。手当たり次第さまざまな組み合わせの馬券を1枚ずつ買って、ひとつでも当たれば「勘が当たった!」と言えばいいだけの話である。ようするに「勘が鋭い人」というのはずっと周囲の人を疑いの目で見ている人なのだろう。

何度も顔を合わせればその人の異変には気づくものである。最近ラジオで「夫は隠し事をしている時は○○と言うくせがあるのです」と投稿している女性がいた。長年の付き合いになれば癖も見抜いてしまうのだろう。

私は全国を飛び回っていた経験があり、ネットで交流のある相手の言葉に混じった僅かな方言などから相手の出身に気付くことがある。これも私の勘が鋭いのではなくて、単に知識として知っているだけの話に過ぎないだろう。また会話中にこれまで相手が発したことのない語彙が出てきた場合は、「最近深い付き合いの相手ができたな。彼氏かな?」と思うものである。私は言葉に敏感なタイプなのかもしれないが、誰しも共感できる話ではあるまいか。

女の勘はおそらく存在しないと思われる(上記のようなものをそもそも勘と言うのだとしたらごめんなさい)。
もちろん女の勘を否定して女性を貶めようなどとは毛頭考えていない。ようするに勘の鋭い女性たちは「疑り深い」ないし「よく物事を観察している」ということなのではないだろうか。

疑り深いことは悪いことだろうか? 私はそうは思わない。『LIAR GAME』で秋山深一の台詞にもあるが、人を疑うということは相手をより知ろうとする行為とも言える。本当にまずいのは信頼という名の無関心ではないだろうか。

女の勘と呼ばれるものは相手を深く知ろうとする行為から培われるものであり、何も生まれつきの能力ではないのだと思う。だが、それのなにが悪いというのか。注意深くよく観察しているし、私はむしろ尊敬に値すると思うのだが。

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