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小室哲哉氏の残したもの

・はじめに

最近日本の音楽シーンは以前にもまして新陳代謝が激しくなってきた印象を受ける。10年あたり前なら「パッと出」であっても数年は表舞台に出ていた印象だが、今はTiktokやらyoutubeやらの影響で「デビュー」が容易だからか、「運よくバズれば」あっという間につかの間のブームになることができる。

その分そこから続くのも難しく、例えばYOASOBIは昨年の「夜に駆ける」以降はどうも、、、という状態であるし、ヨルシカ、ずっと真夜中でいいのに。あたりもすでに緑黄色社会、マカロニえんぴつらに(書いていて思うが、本当にバンド名がアレだな)押し出され気味な印象である。

ではアイドルはいかに。ジャニーズは嵐以降は「誰がどこ」なのか、ファン以外はたいして良く分かっていないのではないか。秋元ファミリーは3坂道グループが堅調だが(白石麻衣や平手友梨奈がいなくなった後も何とかよく頑張っている)、AKBグループはかつての勢いを取り戻せていない。

SNS時代のJポップ(この言い方も古いか)は百花繚乱時代となるか、なんて考えていたら、こんなニュースを見つけた。

小室哲哉氏がTM NETWORKを再始動させる予定であるとのことだ。

・日本中を圧倒した小室ファミリー

小室氏の業績は言わずもがなであるが、ざっと振り返っておきたい。
早稲田実業から早稲田大学を中退し、当初TM NETWORKのメンバーだった小室氏は、1990年代よりダンス・ミュージックに着目しあまたのアーティストをプロデュースし、数多くのヒット曲を矢継ぎ早に生み出した。当時はまだCD全盛期であったことから、CDが100万枚以上売れるという「ミリオン・セラー」などという言葉も生まれた時代であり、私も当時は(高校生~大学生)夢中になり、小室氏のCDを数多く持っていた(今考えれば当時の子供たちは今の子よりカネがあったんだなー、なんて思う)。一番好きだったのがglobeだったが、多分に漏れずTRF、華原朋美、安室奈美恵などなど、土曜の夜はCDTVを毎週こまめにチェックしていた。そもそも学校での話題も音楽に関することが非常に多かったため、ヒットチャートに精通していないと学校での話題についていけなかったのである。オリコンの雑誌も毎週駅で立ち読みしていたことも思い出す。

その後小室氏は2000年代以降、徐々にヒット曲を生み出せなくなってきたことに加え、自身の逮捕騒動や女性問題で存在感を失っていった。そんな小室氏の作ったあまたの曲は今どのような評価なのだろうか。

・小室ファミリーの今

私の年齢が年齢だからかもしれないが、小室氏絶頂期の曲は上記に上げた今のバンドやアイドルの曲よりも印象的かつ優れた曲が多い、と思っている。実際小室氏の曲のYoutubeを見ると、当時をタイムリーで知らないはずの若い10代の方のコメント等も目立つ。だからこそ、時代を経て残り続ける「スタンダード・ナンバー」が多く存在してほしいものである。

ただ、かつてシングルCDで200万枚を超える売り上げを見せた
globe「DEPARTURES」

安室奈美恵「Can You Celebrate?」

これ以外にも元ファンなら「いとしさとせつなさと心強さと」「EZ DO DANCE」「I’m proud」などいくらでも曲名が出てくるが、いずれもスタンダード・ナンバーとして今に残る曲ではなく、完全に懐メロの類となってしまっているのが非常に寂しいところなのである。まあ浮き沈みの激しい現代ではあの「パプリカ」ですら霞んできているわけだから、それもまた仕方ないのかもしれない。

・唯一の例外?

とはいえ、やはり「例外」はある。小室氏の曲の中で、今一番「残っている」のはこれではないか。

H Jungle with t「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント」

ダウンタウン浜田雅功とのコラボで発表されたこの曲、浜田自体が歌うことは滅多にない。しかしごく最近になってもDISH//やAOAにカバーされたり、CMに使われたりプロ野球選手の出場BGMに使われたりと、ちょくちょく耳にする機会もある。そう、これこそがまさに「スタンダード・ナンバー」なのだ、という感じである。「詠み人知らず」になっても日本中の人々の根底に残り続けるような曲を小室氏はしっかり提供してくれている。

この曲の魅力は親しみやすい音楽もさることながら、なんと言っても秀逸な歌詞にある。

(前略)
温泉でも行こうなんていつも話してる
落ち着いたら仲間で行こうなんてでも
全然暇にならずに時代が追いかけてくる
走ることから逃げたくなってる
(中略)
流れる景色を必ず毎晩見ている
うちに帰ったらひたすら眠るだけだから
ほんのひと時でも自分がどれだけやったか
窓に映ってる素顔を誉めろ
(中略)
いつの間にやら仲間はきっと増えてる
明日がそっぽを向いても走りまくれよ
そうしてたまには肩を並べて飲もうよ
Getting Better Begin to  Make  it  Better

これを見るだけで是非とも末永く歌い継いでいってほしい曲と思う。

・最後に

そんなこんなで「復活」するらしい小室哲哉氏。一体どんな曲を聞かせてくれるのか。是非とも「もう1曲」スタンダード・ナンバーを!!と言いたいところだが、それはなかなか難しいのかもしれない。しかし今の時代に少しふっと心が軽くなるような曲を提供してくることを期待したい。
ちなみに私はglobeが復活してKEIKOの歌声ももう一度聞けることを期待していたのだが、どうもそれは叶わぬ夢となりそうである。まあ「ここらへん」もうちょい節度(というか、、、)があれば、小室氏の業績もまた変わっていたのかも、などと思ったりもするが、そんな無意味なタラレバはよそう。ただ一人のファンとして、静かに見守るだけである。

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