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消防士になるためには【受験情報】

 火災や災害現場など緊急時の消防防災活動の第一線で活躍する消防士。119番通報を受け、傷病者に緊急処置をしながら医療機関へ搬送したり、事故現場から救出したり、災害時など緊急事態が発生した際に現場にいち早く駆けつけ人命救助を行ったりと、大切な人命や財産を守る仕事です。また、火災などの災害を未然に防ぐ活動もとても重要な仕事です。



【1】 消防士の業務  

 消防士の業務はさまざまですが、大きく以下の6つに分けられます。

・消火活動
・救助活動
・救急業務
・火災予防
・危険物規制
・その他の災害への対応


【2】 消防士になる進路  

 消防士になるためには資格や免許を取得するのではなく、消防士採用の公務員試験に合格する必要があります。各自治体で行われている採用試験を受け、合格すれば消防士になることができるのです。試験は最終学歴により区分されている場合が多く、個々それぞれに適した区分にて受験することが可能です。東京都での受験については、市町村ではなく「東京消防庁」という東京都の組織の所属になります。また、総務省管轄の「消防庁」という国の機関がありますが、ここでは消防士の採用は行っていませんので注意が必要です。

 消防士採用試験に採用後は消防学校に入校し、約半年間に渡り座学や実科など消防業務の基礎を修得します。消防学校を卒業した後は、消防署に配置されて実務経験をさらに約半年間学び、初任教育の仕上げを経て、専門知識や技術を蓄えながらそれぞれのキャリアへと進んでいきます。


【3】 消防士に向いている性格・適性・能力  

(1) 強調性とチーム力  

 消防士の仕事は常にチーム行動であり、1人だけで行動するものではありません。消防士採用試験に採用された後に入校する消防学校で、寮での集団生活を通して「集団で行動する大切さ」を含めて学びを深めていきます。1人でサクサクと仕事をこなしていきたいという考え方の人よりは、協調性がありチーム一丸となって仲間と共に協力しながら成長していきたいという考え方を持っている人の方が向いているといえるでしょう。

(2) 激務に耐えられる忍耐力  

 消防士は過酷な現場で重い防火服や酸素ボンベを身につけ、さらに火災現場の熱さに耐えながら、時には50キロ近い放水ホースを持ち消火活動を行ったり人命救助を行ったりします。体力的に大変厳しい仕事であることは、簡単にイメージができます。また、厳しい訓練を乗り越えた後も、火災現場や災害現場など人命に関わる現場で任務を遂行することも多く、自分自身がトラウマを抱えるような危険な目に遭うことも少なくありません。体力だけではなく精神力も強くなければ務まる仕事ではありません。

(3) 冷静な判断力  

 いつも同じ状況や環境の現場で活動するわけではなく、日々変化する状況や環境の中で仕事をします。時には、自分の想像をはるかに超える危険な場面にも出くわします。あらゆる場面でパニックを起こすことなく、その時々に応じて常に冷静沈着に判断し行動しなければいけません。普通ならパニックになってしまうような場面であっても、冷静さを失って取り乱すことなく冷静に判断できる力が必要だと言えるでしょう。


【4】 消防士になるための学校の選び方  

 「この学校に入ったから消防士になれる」という学校は存在しません。また、消防士採用試験を受験するのに大学・短大の学部・学科が問われることはありません。そのため、自身の好きな学部や学科を選んでよいでしょう。大学・短大だけではなく、専門学校にも公務員系や消防士を目指すコースが備わっているところもあるので、学校選びの選択肢は多岐にわたります。

 ただ、消防士採用試験は、Ⅰ類・Ⅱ類・Ⅲ類と分類されており、

Ⅰ類:大卒程度
Ⅱ類:短大卒程度
Ⅲ類:高卒程度

とレベル分けされているので、学校選びの参考にするとよいでしょう。


【5】 消防士採用試験の概要  

 消防士は地方公務員です。そのため、採用試験は地方公務員試験に準ずる内容となっています。主に、1次試験と2次試験が行なわれ、1次試験を通過した受験者のみが2次試験に進める仕組みです。

 教養試験や面接試験以外の実施の有無や、どの試験を1次、2次で行うのかなど詳細は自治体によって異なります。ここでは、よくある例をご紹介していきますので参考にしてください。なお、最新情報については、各自治体の公式サイトで必ず確認しましょう。


(1) 1次試験  

教養試験/論文試験/適性検査

 教養試験は、大きく分けると「一般知識」「一般知能」から出題されます。

一般知識は、

・社会科学(政治・法律、経済、社会)
・人文科学(世界史、日本史、地理、思想、芸術)
・自然科学(数学、物理、化学、生物、地学)

一般知能は、

・数的処理(数的推理、判断推理、資料解釈)
・文章理解(現代文、英文、古文)

など、多くの科目を勉強しなければいけないことが一目瞭然です。公務員試験を受ける以上、教養試験は決して避けては通れないので、偏ることのないよう満遍なく勉強しなければいけません。

 論文試験は、多くの場合、課題文に対して60~120分間・800字程度の記述が求められます。専門的な課題というよりは、課題文に対し適切に答えることができているのかを問われます。基本的な小論文の書き方やさまざまな分野の課題に臨機応変に対応できる力を身につけておきましょう。


(2) 2次試験  

面接試験/体力・身体検査

 面接試験は、志望動機など面接での定番の質問だけではなく、コミュニケーション能力や人となりを見られるような質問など、さまざまな角度から質問される傾向にあります。面接の準備は1日や2日で完了するような簡単なものではないので、甘く見ることなく面接練習も気を抜かずにしっかりと準備して挑みたいところです。

 体力・身体検査では、消火や人命救助などの災害活動に欠かせない体力や、胸部X線・血圧・BMI・尿検査・心電図・視力・聴力などを検査されます。


【6】 消防士採用試験について  

 消防士になるための主な試験対策としては、教養試験対策の他、小論文対策や面接試験対策も必要だということは前述の通りです。中でも小論文対策は、課題の趣旨を理解する読解力や分析力、そして論理的思考力、実践力、人間力が問われます。その他にも、どのような消防士になりたいのか、どのようなキャリアを積んでいきたいのかをアピールできる機会でもあります。

 小論文試験は、多くの地域の消防士採用試験で配点が高いため小論文対策を疎かにするのはとても危険です。文章を丸暗記したり誰かが予め用意した文章で対応したりといった付け焼き刃の方法では、採用する側には見抜かれてしまうでしょう。1つの方法として丸暗記が上手く行く場合もあるかもしれません。しかし、採用する側が何のために小論文試験を課しているのかを考えた場合、消防士として働くうえでの対応力や人間力、またひとりひとりの考え方など必要な能力をはかるための試験であることは明らかです。

 試験当日にどのような課題を出されたとしても対応できる能力を身につけておけば何も心配する必要はありません。そして、そのような対応力や論理的思考能力は、ただ採用試験を乗り越えるだけのものではなく、消防士として仕事をする中で自分自身の糧になることは間違いないでしょう。

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