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「アウティング(outing)」とは【小論文の用語】  

 小論文の添削指導の際によく間違いとして見受けられるフレーズや、外来語由来の用語があります。その中でも、最近頻繁に海外・国内メディアで取り上げられている「アウティング(outing)」の意味や用語に対する考え方について解説していきます。


【1】 「アウティング(outing)」の意味  

 「アウティング(outing)」とは、下記の通り。

 英語で「暴露する」という意味を持つことから、本人の了解を得ることなく、本人が公表していない個人情報、例えば性的指向(どの性を好きになるか)や性自認(自分の認識する性)などを第三者に暴露する行為を表す言葉として使用されています。

大阪同和・人権問題企業連絡会

 つまり、人のSOGI(性自認、性的指向)を、LGBTQ+当事者の了解を得ずに、他の人に言いふらしたり、SNSなどに書き込みむなど秘密を暴露する行動のことをいいます。


【2】 英語「outing」の意味  

 英語で「遠足・遊覧・行楽」「(野球)出場、投手の登板」「野外活動日」などの他にも、「(本人の意思に反して)ある人が、第三者が当人の意向を無視して勝手に性的指向(性的マイノリティであること)などを暴露すること」との意味の「outing」。現在、日本で使用されているのと同じ意味が英語にもあります。


【3】 注目を集めた「一橋大学アウティング事件」

 日本で「アウティング」との用語が広がったことのひとつに、「一橋大学アウティング事件」と呼ばれる裁判があります。

 2015年、東京都国立市に位置する一橋大学法科大学院で起こりました。男子学生Aが、同級生の男子学生Bに対し恋愛感情を告白。その2か月後、Aは同性愛者であることをクラスメイトが参加するLINEグループでBに暴露されます。本人(A)の意に反して第三者に暴露する行為、いわゆる「アウティング」です。Aは精神的なショックを受け、パニック発作を発症。教授やハラスメント相談室に一連の出来事や症状を相談していたものの、2015年8月に大学の校舎から転落死しました。

 Aの遺族は、アウティングした学生と大学を相手に2016年3月に提訴。同年8月の裁判に関する報道は、大きな注目を集めました。2018年1月に、遺族と学生は和解。

 遺族側は、Aがアウティングの被害を申請した後、大学側がクラス替えなど適切な対応を取らなかったと主張。大学側はAの転落死は突発的なものであり予見できず、対応に落ち度はなかったと主張。遺族側と大学側が争っていましたが、2020年11月、東京高裁は「大学の安全配慮義務違反は問えない」と結論づけ、一審の東京地裁に続き遺族の請求を棄却しました。

 遺族側の請求は棄却されたものの、4年間にわたる一連の事件と裁判は広く報道されました。2018年には、一橋大学がある東京都国立市では全国で初めて「アウティング禁止」を条例に盛り込むなど、「アウティング」との言葉、その意味、対応策を考える大きな契機となりました。


【4】 小論文.comの対策  

 ただカタカナ用語を暗記したり、「なんとなく」みんなが使っているから、ニュースで聞いたからと、言葉の本質を捉えずに使用するのは避けたいところです。その言葉の語源を探り、正確に意味を理解した上で自分自身の「言葉の引き出し」に落とし込みましょう。

 また小論文においては、その用語が使用されている時事問題にも目を通し、その問題に対して「自分はどう考えるのか」を常に頭に入れておくようにすると、自ずと小論文対策にも繋がります。海外でどのように報道されているのかも確認できれば、それぞれの問題を比較することが可能になります。できる限り日本で報道されているニュースだけではなく、海外のニュースにも目を向けて広い視野で物事を捉えるよう意識しましょう。

小論文.comでは、小論文.comのX(旧twitter)【小論文の時事】において特に最新の海外時事情報(特にイギリス、アメリカ、ドイツ、スウェーデン)を中心に速報でお送りしています。すべて日本語訳でお送りしておりますので、ぜひご利用ください。

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