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a new musical 雑感


※以下は、昨年9月に書いたまま放置していたものを改めて少し整えた文章です。すごく今更な内容ですが、あらためて感想を残しておきたくなったので。それでは、2023年9月にタイムスリップだ!※


「そうだ、ミュージカルつくろ」と思い立って実際にやり遂げる人間はこの世にどれだけいるのでしょう。

だって大きな事務所のバックアップと集客を見込めるネームがあるもんねと言われれば、まあそれは事実なんだろうけど、舞台に関しては全くの素人のいちミュージカルファン(失敬)が「ミュージカルが好き」という気持ちひとつを原動力に「つくりたい!」と立ち上がり、あれだけの仲間たちを大きく巻き込んで実際に大プロジェクトとして動かしてしまう信頼を獲得するまでの25年間のことを思うと「ネームがあるもんね」のひとことではちょっと終わらせられないのがファン心というもので。

病めるときも健やかなるときもいつだって、新曲だして、プロモーションして、ライブやって、新曲だして、プロモーションして、ライブやってをやり続けて、不本意なこと思い通りにならないことにももがきながらずっと第一線で戦い続けてきたからこその”今”なんですものね。

だから正直、まずはシンプルにポルノグラフィティ新藤さんのファンとしての「よかったねえ、晴一さん」がいちばんの感想でした。幕、ほんとに開きましたね。ヴァグラント、観に行ってきました。

私は大阪の大千穐楽を観に行ったのですが、実は中止になってしまった東京公演を本来なら観に行く予定にしていたこともあり、目の前で「幕があがった」という事実だけでもう結構感動してしまっていました。ずっと楽しみに進捗を追っていたミュージカル、本当に観に行けてよかった。

当日のキャストさんはこちら。

平間さん佐之助・小南さんトキ子回

ダブルキャストの佐之助役は平間壮一さん。さすがの主人公、誰よりも華があったなと。躍動感がすごい。不吉な存在として差別を受ける立場であり傷や恐れを抱えながらも、パワフルで一生懸命で愛くるしく、健気にヒトに関わっていく佐之助のこと、すごい好きになっちゃいました。ニカっと笑った時のお口が大変かわいらしいですねこのお方。

トキ子役は小南満祐子さん。すごく凛としたお声と佇まい。さすが、野外フェスでの第一声で公園中のカラスを飛び立たせる歌声。アクションもかっこよかった!

キャストさんのなかで特に好きだなと思ったのは、譲治役の上口耕平さん。ものすごく綺麗な高音で歌唱シーンが本当に素晴らしかったし、無骨で熱い男!な演技とのギャップがよかったです。目力すごい。ソロ曲「おふねのえんとつ」良い曲でしたね。ここではないどこかへ行くことを夢見るミュージカルナンバー、好きなんですよね。NEWSIESの「サンタフェ」を少し思い出したりしました。

あともうひとりの特に好き俳優さんは、桃風役の美弥さま!身のこなしがとても麗しかったですね。宝塚のファンの方が熱狂的になる理由がちょっとわかった気がします。

政則役の水田さんも絶妙な情けなさがよかった。みんなが炭鉱の現場で顔や手まで真っ黒にしてるなかでひとりぴっかぴかに真っ白なスーツ。あんなにイケメンなのになぜあんな情けなさが出せるのか不思議。情けないけど良い奴なんだよなあ。

アケミママ玉置さんはセクシーだけどチャーミングで強い女感が素敵でした。終盤の超ロックなソロ曲かっこよかったな!

あとチサ役ほのかちゃんが思っていた以上にたくさん歌っていてソロ曲もあり涙腺が刺激されて大変でした。おばちゃん子どもたちの頑張りに弱いからすぐ泣いちゃうのよ。天国のおかあさんわたし偉いでしょ〜とか歌わせるのほんと勘弁してください。チサちゃんお歌上手だったなあ。


さてキャストさんへの言及はひとまずこんな感じで、作品自体は、全体を通して「これがエンタテインメントだ!」感が強くとても楽しかったです!演劇なんだけどショー見てるような感覚でもライブ見てるような感覚でもあり、まさに総合芸術。私自身まだそんなにたくさんのミュージカルを観ているわけでも詳しいわけでもないですが、晴一さんが「僕の見たいと思うミュージカルをつくった」と言っておられた意味が、実際に観劇するとよく理解できました。王道のミュージカル的デュエットあり、酒場でのゴージャスなダンスシーンあり、一幕終わりの大ナンバーではリプライズの嵐でレミゼさながら錯綜する登場人物たちの想い。うんうん、ワクワクするよねこういうの!がいっぱい。

たくさんの劇中音楽も、ポルノグラフィティ自体が楽曲の幅広さがひとつの強みなだけあり、いろんなジャンルの音楽が出てきて楽しかったです。フラメンコ調になるやつとか、ラップとか、盛りだくさんで楽しかったな。舞台の映像演出でも歌詞が映し出されたりして、ミュージカルのアプローチとしては多分珍しいシーンが多かったですよね?ポルノグラフィティの主戦場であるライブを意識した演出が多かったのかなあと。

特に印象的だったのは2幕のはじめの1曲。オールキャストがステージに集結し、100年前の明治時代から現在の客席にいる私たちに歌い問われる「あんたに聞くよ」。ステージ上の登場人物たちの間でやり取りされる歌でなく、明確に客席にいる私たちに向けて語りかけてくる2幕の始まり。メインで歌い継ぐのがアンサンブルキャストさんたち演じる名もなき(たしか。ついてたらごめんなさい)ヤマの人々なのがまた良かったですね。ミュージカル畑じゃないところで生きてきたポルノ新藤晴一がミュージカルをつくる面白みと、この作品に「a new musical」と名付けたヴァグラントチームの想いを感じた1シーンでした。

物語の展開としては、飲んだくれの男たちの設定は(息抜きシーン必要なのはわかるけど)生活に苦しむ炭鉱夫にしてはちょっと軽いかなとか、ダイナマイトで脅して勝利っておい政則けっきょく暴力じゃね〜か!とかもちょっと思ったりもしたのですが。時代背景をちゃんと予習せずに行ったし、1回しか見てないから理解し切れてない部分もあると思うし。

なにより、大輪の花火が打ち上がりみんなが輪になって歌い踊ってフィナーレに向かうシーンはディズニー映画のラストシーンの怒涛のハッピーエンドのような雰囲気があり、晴一さんがやりたかったであろうファンタジー要素が存分に感じられて綺麗でよかったなあと(私の大好物ジャンルでもあります)。だってはじまりはメリーポピンズだもんね。

以前晴一さんが好きとおっしゃっていた伊坂幸太郎さんの小説「重力ピエロ」に出てくる言葉「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」を思い出しました。それを実現できるのが、晴一さんが信じるポップの力であり、エンタテインメントの力なんだなとあらためて。そもそもミュージカルは人々が歌って踊りだすという結構陽気な表現方法なわけで、ポップやファンタジーというオブラートに包んで大切なことを伝えることをやり続けている晴一さんの表現とミュージカルの表現はぴったりなのかもしれないなあと。

「お前の人生の主人公はお前」「良いことにも悪いことにも区切りをつけて、ただまた進む」というメッセージ、晴一さんらしくて大好きでした。「丸をつけましょう」は、区切りをつける=。(読点)をつける= 丸をつける =◎(ハナマル)をつける のダブルミーニングってことであってますよね?うーん、節々にガッツリにじみ出てくる新藤晴一印!最高ですね!

明日からまた生きていく上で、よし、いっちょやってやりまっか!という気持ちにさせてもらえる作品でした。ただ続いていく私の日常生活にも区切りをつけてもらったみたいです。

ハルイチシンドウミュージカル、2作目もあるのかな。きっとあるのでしょう。是非期待したいです。自分の「好き」とか「楽しい」とかに従って歩き始めたら、いつの間にかいろんな方面のプロフェッショナルであるたくさんの仲間たちに囲まれていました!的なソロ活動をそれぞれにしていらっしゃる今のポルノグラフィティさん、すごく楽しそうで無敵感があって、わたし大好きです。これからの2人のソロ活動もバンド本体の活動も、すごく楽しみですね!


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