短歌連作30首 「大学5年生」

 ふとメモ帳を見返した時に、過去に作った連作を見つけたので載せます。2年前に詠んだ50首から、いらない部分を少し削った30首になります。完成度の低さはご愛嬌。作風もかなり暗め。あの頃は青かったなぁ。なお、今もケツは青いままです。



「大学5年生」


行きつけの定食屋には俺よりも行きつけている常連の声

割り箸も上手く割れないまま生きる そしてこのまま死ぬんだろうな

常連と店主の会話聞きながらいつものやつを急ぎめに食う

後輩に挨拶をする後輩が俺の名前を覚えてなくても

実家には雪が積もっているらしい 正月さえも帰らなかった

提出が間に合わなかったレポートのまとめ部分がずっと空白

将来の夢を探して 404 not found 生き辛いよな

やりがいはやりがいだったこの先の生き方とかは自分で決める

代わりなどいくらでもいるはずだけど俺しか俺を務められない

正解かどうか死ぬまで分からないLINEグループ抜けて夕焼け

監督が唯一俺を引き止める誰も泣かない引退宣言

ずぶ濡れのままで向かった一次会 各々で取るシーザーサラダ

とりあえずビールだなんて言わないでビールがいいとはっきりと言う

好きだって言われて好きになっている作用反作用みたいなノリで

肯定が死に挟まれて思考停止 自分で決めた生き方なのに

駅前のミスド潰れて恒例のドーナツ会も2回で終わり

風船が道に落ちてる 自力では飛べないタイプの風船でした

Fの数だけ強くなる はずもなく大学5年の春は来たれり

散らかった部屋に一人で立ちおれば雨が屋根打つ音の大きさ

最新の俺に更新され続け頼んでもないサブスクリプション

お茶漬けの味が濃いとこ薄いとこ一人で眠る日曜もある

心にも骨があるから折れるたび太く歪んでいくのだろうか

いつの間にか冷やし中華が終わってて別れはいつもそんな感じで

言葉とは不確かなもの不確かなもので世界を確かめている

安過ぎて逆に不安な弁当屋やきにく弁当その肉の味

思い出の中で静かにしててくれ勝手に雪解けしてんじゃねぇよ

折れている傘の持ち手を握りしめ雨が止まない大阪の街

いつだって明るい未来信じたい割引券を大事にしまう

未来への不安は初めて乗る電車みたいな辿り着くかどうかの

この文は無くても良いと推敲で消される文のように生きるよ

卒業の要件単位が足りなくて俺はずうっとこの街にいる

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