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【コラム】歯科医院は年商1億円で儲かるの?利益率をあげる秘訣を解説

コンビニエンスストアより多いといわれる歯科医院。年商1億円は、「儲かっている」といえるのでしょうか。

たとえ年商が1億円でも、経費が多くかかっていれば利益が少ないため、安定した経営とはいえません。今回は、歯科医院が利益をあげる秘訣について解説します。

1. 歯科医院経営の実態

まずは、歯科医院経営の実態を把握する必要があるでしょう。

2019年に厚生労働省が実施した「医療経済実態調査」によれば、全国の歯科医院のうち約12.2%は赤字経営となっています。

帝国データバンクが公表した2023年度の「医療機関の倒産動向調査」でも、休廃業・解散した歯科医院の数は、過去最高の110件を記録しました。

なかには、赤字経営で民事再生や破産などの法的手続きを申請する必要のある歯科医院も多く、経営難の医院は増加傾向にあります。

1-1. 主な売り上げ

歯科医院の主な売上は、大きく分けて次の2つです。

1.保険診療の売上
内容:虫歯治療・プラスチック製入れ歯・歯周病治療・親知らず治療など

2.自由診療の売上
内容:審美歯科・インプラント・ホワイトニング・入れ歯・マウスピース矯正・セレック・メンテナンスなど

2021年に中央社会保険医療協議会が発表した「医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」では、個人開業の保険診療の平均売上は約82.2%、自由診療等では17.6%でした。

今後、個人開業を含め、歯科医院が利益を上げるためには、自由診療の売上を伸ばす必要があるでしょう。

1-2. 必要経費

歯科医院経営に必要と考えられる主な経費は、大きく分けて6項目あります。

また、各項目における割合の平均値は次のとおりです。

1.人件費(約29.2%)
歯科医・歯科助手のスタッフ・パート・アルバイトにかかる人件費など

2.医薬品費(約1%)
うがい薬・鎮痛剤・抗生物質・消毒剤・エタノール製剤など

3.歯科材料費(約7.8%)
金属(金・銀・パラジウム・銅)・セラミックス・レジンなど

4.委託費(約7.9%)
歯科技工など

5.減価償却費(約6.0%)
衛生設備・口腔撮影用カメラ・事務机・椅子・歯面清掃器など

6.その他(約18.9%)
家賃・光熱費など

自院の現状と上記の平均数値とを照合し、必要経費がどの程度の割合を占めているのか確認してみましょう。

  2. 業界の平均的な売上と利益

業界の平均的な売上と利益は、個人経営か法人経営かで異なります。

2023年に厚生労働省が実施した「第24回医療経済実態調査」によると、個人経営の売上の平均は約4,700万円で、法人経営では約1億円でした。

ユニット数でいうと、4台以下の歯科医院で約1億円、5〜6台の場合は約1〜1.5億円が平均的な売上です。

「売上=純利益」ではありませんので、売上から固定費や人件費等を差し引く必要があります。差し引く金額は、個人経営より規模の大きい法人経営のほうが多くなるでしょう。

歯科医院の平均利益率については、保険診療中心の医院で約25%、自由診療を取り入れている医院では約45%です。

最低限度の医療を保証する保険診療は、得られる利益が少ないため、当然、利益率も低くなります。

  3. 利益を確保できない歯科医院の特徴

歯科医院の実態をふまえ、平均的な売上や利益を下回っている医院は、原因を突き止める必要があるでしょう。

実は、利益を確保できない歯科医院には、4つの大きな特徴があります。

1.認知が少なく売上が立たない
2.材料費高騰が利益を圧迫している 
3.自由診療の価格設定が低い
4.スタッフが定着しない

3-1.認知が少なく売上が立たない

認知が少なく売上が立たない医院は、利益を確保できません。

地域密着型の多い歯科医院は、エリアマーケティングも効果があります。

新聞の折り込み広告、チラシやポスティング、周辺地域の建物を活用した看板や街頭広告などで露出を強化しましょう。

このほか、ホームページやSNSを活用すれば、遠方地域からも集患を期待できます。

特に、エリア内に複数の医院が所在するような地域は自院の認知を高めて集患し、利益を出していきましょう。

3-2.材料費高騰が利益を圧迫している 

材料費の高騰が利益を圧迫していれば、利益を確保できません。

歯科医院の平均材料比率は平均7〜9%といわれています。

これ以上の割合となっている医院は、改善する必要があるでしょう。

最近は、世界的な情勢もあって金属価格の高騰が著しく、今後の見通しも立っていません。

いろいろな種類の金属をそろえたものの、実際には使用していない材料はないでしょうか。

材料の在庫を消費できず、時の経過で劣化してしまい、処分している医院も多いようです。

自院の在庫状況や価格などを確認し、材料費を見直してみましょう。

3-3.自由診療の価格設定が低い

せっかく自由診療を取り扱っていても、価格設定が低ければ利益を確保できません。

自由診療は、セラミックなどの丈夫で美しい素材を使った高品質の治療です。

矯正やホワイトニングのほか、患者の希望によっては最先端の治療を取り扱うこともあるでしょう。

自由診療の平均利益率が約45%と高いのは、治療内容によっては失敗して患者からの信用を喪失する可能性もあるからです。

自由診療を扱っている医院は、価格設定が妥当かどうかを再度検討してみましょう。

3-4.スタッフが定着しない

スタッフが定着しないのも、歯科医院が利益を確保できない原因のひとつです。

職場環境が悪ければ、辞職したスタッフの替わりを採用しても、またすぐに辞めてしまうでしょう。

次の6つのいずれかに該当する歯科医院は、早急に改善策を講じる必要があります。

1.職場の雰囲気が悪い
2.教育体制が整備されていない
3.評価体制が整っていない
4.各スタッフの担当業務が多い
5.福利厚生や休暇が充実していない
6.スキル・キャリアアップを図れない


新たにスタッフを確保するには、求人や育成にかかる宣伝広告費や人件費、時間的なコストもかかるでしょう。

スタッフ定着率の高い医院では、スタッフがイキイキと働いています。

医院の雰囲気もよく、患者も安心して治療を受けられるでしょう。

日頃から、1on1ミーティングなどヒアリングの機会を定期的に設け、院長がスタッフの不満や不安に耳を傾ける姿勢も必要です。

  4. 歯科医院を開業して年商1億円を達成するには


歯科医院を開業して年商1億円を達成するには、主に4つの方法があります。

1.Webマーケティングを用いて集客する
2.売上に占める材料費の割合を改善する
3.自由診療メニューを充実化させる
4.ユニット(チェア)当たりの稼働率を上げる

4-1.Webマーケティングを用いて集客する

Webマーケティングを用いて集客するのも効果的です。

歯科医院に限らず、必要な情報を得るためにインターネットを活用することは、今や常識といっても過言ではないでしょう。

自院のホームページやSNSで専門分野や治療の流れ、料金の目安などを掲載すれば遠方地域からの集患も期待できます。

ホームページを作成する際は、検索で上位にヒットするためのSEO対策や、Googleマップで正確に表示されるよう「Googleマイビジネス」への登録も重要です。

SNSの場合は、医院の内観やスタッフの紹介に加え、定期的に医院の様子を画像とともに投稿すると、閲覧者も親近感を抱きます。

さまざまなキーワードで検索してもヒットするよう、複数のキーワードとハッシュタグでタグ化するのを忘れないようにしましょう。

4-2.売上に占める材料費の割合を改善する

自院の売上に占める材料費の割合を改善するのも効果があります。

先の調査によれば、材料費の割合は平均して医業収益全体の約7.8%です。

これをいかに抑えて利益につなげられるかが、年商1億円の達成に大きく左右します。

ブリッジやクラウンの切削量を少なくするのもひとつの方法ですが、破折や脱離の原因にもなるため、おすすめできません。

審美歯科に必要な材質や使用頻度の高いコンポジットレジンをメインに残し、金属の種類の見直しを図りましょう。

また、1個あたりの単価は小さくても、患者ごとに替える必要のある消耗品費を抑えると、年単位で見れば節減につながります。

材料費のほか、紙コップやエプロン・滅菌パックなどの価格も見直してみましょう。

4-3.自由診療メニューを充実化させる

自由診療メニューを充実化させるのもおすすめです。

保険診療とくらべて自由診療は利益率が高いため、メニューが多ければ売上もアップ出来る可能性があります。

昨今は、歯並びをよくする矯正だけでなく、ホワイトニングやインプラントへの関心も高まっています。

対応できない診療メニューがあれば、患者の新規開拓はできません。それどころか、保険診療だけでなく自由診療に関心を持っている患者が、競合の医院に流れる可能性もあります。

最先端の治療はリスクを伴うかもしれませんが、自由診療を得意とする歯科医師に依頼すればよいでしょう。

自由診療と保険診療のサイクルを上手に回せば、院全体の売上もアップします。

4-4.ユニット(チェア)当たりの稼働率を上げる

ユニット(チェア)あたりの稼働率を上げるのも効果的です。

ユニット稼働率は、歯科医院の収入に影響します。

どれほど患者数の多い医院でも、ユニットが空いている時間は診療報酬を得られません。

治療ではないメンテナンスや予防措置であれば、歯科医師でなくとも歯科衛生士で対応できます。

1日の1台あたりの平均患者数は、月間収入平均が400万円~900万円の医院で9.58~11.05人程度ですから、年商1億円を達成するには1台あたり15人前後の稼働率が必要です。

受付や歯科衛生士との連携でアポイントの取り方を工夫し、なるべくユニットに空き時間が出ないよう工夫しましょう。

  5.まとめ

法人経営の歯科医院であれば、年商1億円は平均的な数字といえます。

とはいえ、人件費や材料費などの必要経費を抑えなければ、利益は残りません。

売上が平均より低い医院は、利益を確保できない原因を分析し、改善する必要があります。

材料費の見直しやWebマーケティングの活用・自由診療の充実化なども検討し、利益率の向上を目指しましょう。


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