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「ワンダーカクテル」出版記念トークショー&サイン会【#イベントレポ】

こんにちは!ライターの三橋です。今回はデビュー45周年を迎えた人気漫画家わたせせいぞう先生の「『ワンダーカクテル』出版記念トークショー&サイン会」に参加してきました!

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第一部 作者・わたせせいぞうさん、黒田さんによるゲストトーク

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第一部では、株式会社アップルファームの代表でもある黒田善孝さんが司会者となり、わたせせいぞうさん自身についてのお話や、『ワンダーカクテル』の制作秘話など、様々なお話しを聞かせてくださいました。お付き合いの長い黒田さんだからこそできるちょっとおどけた質問やつっこみのおかげで、参加者のみなさんも和やかな雰囲気のなかリラックスして楽しくお話を聞くことができました。ここでは、そんなお話の一部をご紹介します。


■若さの秘訣

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黒田さん(以下、「黒」):いつも、お会いするたびに「お年を感じさせない人だな」と思うんですけどね。実年齢と全然ちがう、このすごく爽やかな感じ。何からくるんですか、この爽やかな感じは。いま入ってきただけで、これから冬なのに春風が流れたような雰囲気なんですよ。
わたせさん(以下、「わ」):こればっかりは、ほんとになんといわれても説明のしようがないですね。食事も普通にしてますし。洋服のサイズが変わらないってことが嬉しいですね。全然変わっていないです。
黒:いつから?小学校から?
わ:いや、またそんな、違いますよ。大学、社会人になって、結婚して……やっぱり変わらないですね。新陳代謝がいいってよく言われるんですよ、病院の先生に。それからやはり、毎朝、腕立て伏せを51回やって、スクワットをまあ同じくらいやって……。
黒:51回の「1」ってなんなんですか。
わ:50だとそのまま終わっちゃいそうだけど、51だと明日につながる気がするので、あえて。自分自身の気持ちの問題ですね。
黒:61でもいいんですね。
わ:はい、61でもいいです。それをね、もうほんとに何十年もやってるんですよ。それで、ある時息子に「じゃあ100回やれるね」って言われた瞬間、当然できるだろうと思いましてね。
黒:そうですよね、毎日51回もやってるんですもんね。
わ:ところがですね、体が覚えてるんですね。「あんたは51回だよ」と。51回を過ぎると、「あれ?」ってくらいぐっと辛くなるんですよ。拒否反応みたいに。
黒:52回、53回になるともうかなりしんどくなる?
わ:さすがにその辺はまだいけるんですけどね。あるところでぐっとくるんです。でも、これが長くやった賜物かなと思うんですよね、逆にいうと。
黒:なるほどね。じゃあ必ず毎朝運動することが健康の秘訣?
わ:そうですね。あとやっぱり、毎日毎日絵を描くことが好きで、それをできていることが一番の秘訣だと思いますね。

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黒:お仕事というよりも、絵を描くことが好きなんですね。
わ:好きです。はい。
黒:小さい時から、いつも絵を描いていたんですか。
わ:小さい時から、まあ紆余曲折がありましたけど、いまだに描いていますね。
朝事務所に行きますよね、そしてブラインドを開けます。そうすると、自分の机が白紙の状態です。ケント紙を置くと、そのケント紙にどんな絵を描くのか、どんなコミック、ストーリーを描くのか、となんかそこで待っていてくれる感じがして。その瞬間、「あ、今日もこういう場に立ててる」っていうのがものすごく嬉しいんですよね。「ここで絵が描けるってことは幸せだな」って、毎日そう思ってから、事務所に入ります。
黒:じゃあお仕事でもあるんだけども、同時にほんとに自分の生きがいというか、人生というか。絵を描くことがすべてって感じですよねえ。
わ:まだ会社務めをしている時は、月曜から金曜まで営業の仕事をしていまして、土日に絵を描いていたんですね。でも、たとえば仕事中に絵のアイデアを考えてみても、ろくな考えが浮かばないんです。それで、ある時からもう月曜から金曜はちゃんと働いちゃおう、と思ったんですね。そして心残りなく土日に入ろうと。営業マンですから、当然いろんな夜のおつきあい、ありますよね。二次会、三次会、カラオケもあります。そういうのにしっかり行って、そしてもうやり終えた、っていう気持ちで土日に入ると、すーっと絵の仕事に入れるんです。
でも、あるとき絵を描いていて、日曜に「月曜から金曜まで絵を描けたらどんなに幸せだろう」と思ったんですよ。で、それがいまだに続いているってことなんですよ。嬉しいなと思います。

■『ワンダーカクテル』のこれまで、そしてこれから

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黒:去年から始まった、この『ワンダーカクテル』。いいですねえ。
わ:『ワンダーカクテル』を引き受けることになったのはですね、小学館のKさんという方がきっかけでして。彼が『Precious』の担当になりまして、「わたせさん、一度『Precious』でコミックを描きませんか」と声をかけられたんです。「テイストはずっと大人、英国のジェントルマンの香りのするやつをやってください。『キングスマン』みたいな感じがいい。」と。あの映画では洋服屋がエージェントの家業なんで。
いろいろ話したうえで、これは4ページで連載していた『ハートカクテル』よりもう少し読みごたえがあって、大ゴマでいろんなことができそうな8ページのカラーでやりたいと言ったんです。今雑誌がどんどん売れなくなっていて、8ページのカラーページを毎回同じ作家がとるということが難しくなっているんですけど、Webだからできる、ということで始めました。
黒:これを描くにあたっての苦労談などありましたか?
わ:そうですね……。よく「スランプってありますか」って聞かれるんですが、スランプと意識してしまうとなんかな、と思って常に「スランプじゃない」と思うことにしているので、そういうことは特にないです。強いていえば、毎日新しいものを作るって考えたときに、『Precious』って雑誌に出てくるいろいろなアイテムを題材に描こうと思いまして。『ハートカクテル』が20代の彼・彼女の生活の範囲だとすると、『ワンダーカクテル』はもっと大人の話ですから、やはりちゃんとしたものを見て描けるようにするというところで少し苦労しました。
黒:もちろんグッズから入っているという点もよくわかるのですが、自分の経験から描かれている点もありますか?

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わ:『ワンダーカクテル』は大人の恋愛を描こうと思っています。僕のコミックっていうのは、修羅場なんかは描かなくて、それが冷めた何年後かを描いていて、「あの時電車を見逃したら、彼女に一言言えて、その言葉はひょっとしたらそのあとも関係をつないだのかな」とか……。
黒:そういう経験があったわけですね。
わ:うーん(笑)。 まあ恋愛はしないとだめですね。ただ、A地点からB地点の悲しい恋愛は実際にしているんですが、B地点より後は創作なんです。「あの時こう言ったら、C地点にいけたんじゃないだろうか」とか。
黒:なるほど、そこからは想像するわけですね。おそらくここにいらっしゃる方ほとんどが、いつもわたせさんが男女の愛を描かれている、それも普遍の愛、いわゆる純愛を描かれているというイメージが強いと思うのですが、やはり純愛は大切にされているんですか。
わ:純愛とハッピーエンドですね。いろんなことがあっても、最後はハッピーエンドというか。見返すとつらい話も多いんですけどね。その後2人がどうなったかは読者の想いに託しているところもあります。
黒:これからの展開はどうされますか。
わ:これからの展開は、僕がまだ見ぬ大人の世界に出会いつつ、「あ、この話で描いた主人公をもう少し動かしてみたいな」と思った人を出していってもいいかなと考えています。
黒:ここまで出てきた人がもう一度でてくる、と。
わ:うん。今15話あるんですけど、それぞれの主人公のお話がずっと続くといいなと思っています。もう1回この人の話を描いて、と言われたり、自分がいいなと思ったりしたら描きたいなと。

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この他にも、わたせ先生の生い立ちや絵の世界に進むか会社勤めを続けるかを選択した時の苦悩、わたせ先生お気に入りの回の解説など、知ることのできない内容を、黒田さんが「これでもか!」というほど聞き出してくださり、ファンにとってかけがえのないひとときとなりました。

第二部 サイン会

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第二部では、わたせせいぞう先生のサイン会が行われました。今回のイベントのきっかけである『ワンダーカクテル vol.1』を片手に列に並ぶ方もいれば、当日の物販会場で発売されていたウイスキーを片手に並んでいる方も。みなさん並んでいるうちから、わたせ先生になんと挨拶しようか考えたり、サインにどう名前を入れてもらおうかを考えたりとわくわくしている様子でした。希望者のみなさんそれぞれに丁寧に受け答えをされたり、一緒に写真を撮られたりというわたせ先生の紳士的な接し方は、まさに黒田さんのいう「爽やかな雰囲気」そのものでした!


内容盛りだくさんのトークショーとサイン会という豪華な2本立てで開催された今回のイベント。作者のわたせ先生のプロフェッショナルでありながらも優しい人柄や作品制作の裏側について知ることで、わたせ先生の作品がもっと好きになりました。実際に作者のお話に耳を傾けたり、サインをいただけたりする機会はなかなかないと思うので、気になる方のイベントを見つけたら、迷わず参加してみてください!

撮影/栗城翔太 文/三橋七緒 編集/小川利奈子
2020.3.25 作成

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