見出し画像

無料で楽しめる!浮世絵マスターコバチュウ先生が初心者向けに語り尽くす浮世絵講座が開講!

突然ですが、浮世絵ってなぜこんなにも私たち現代人に強烈な驚きやインパクトを与えてくれるのでしょうか?

それは、浮世絵に描かれた200年以上前の江戸庶民の生活や風俗が、まったく今の私たちとかけ離れているからです。昨今、青少年向けのライトノベルでは「異世界モノ」が全盛と聞きますが、浮世絵の中を覗いて見ると、そこはもう異世界同然。

さて、そんな異世界への冒険を始める時は、わかりやすい攻略本が欲しいものですよね。浮世絵の世界は、SNSなどで「へーっ、こんなのもあるんだ」と直感的に楽しむこともできますが、少しでも背景知識を得ることができればもっともっと楽しめます。その最強の攻略本となるのがウイークリーブック「週刊 ニッポンの浮世絵100」です。

そして、同書の創刊を記念してオンラインで開催された記念講演会の動画が12/25から約1年間の【期間限定】で楽しめるようになりました!

本講演に登壇されたのは、「週刊 ニッポンの浮世絵100」の監修を務める小林忠先生こと「コバチュウ先生」です。

浮世絵2

コバチュウ先生は水墨画や桃山美術、若冲、琳派といった江戸絵画など非常に幅広い得意分野をお持ちです。中でも、研究を極め尽くしたのが「浮世絵」なのです。

そんなコバチュウ先生が浮世絵の魅力を語り尽くしたのが今回のオンライン動画が今回の記念講演会「ニッポンの浮世絵~世界最高のポップ・アートの魅力~」なのです!

まずは早速聞いてみましょう。

いや、これはわかりやすい!
約30分とコンパクトに編集された動画の中では、葛飾北斎、歌川広重、喜多川歌麿といった、有名な浮世絵師を次々にピックアップ。

「なぜこの絵は出来上がったのか?」
「この絵師はどうしてこんな作風なのか?」

という本質的な疑問について、歴史や文化などのつながりを踏まえて、浮世絵の成り立ちや発展も含めながら解説してくださっています。

では、早速僕が2回視聴して、特に印象深かった”注目ポイント”を、コバチュウ先生のコメントを引用しながら3つ挙げておきましょう。

①風景画の両巨匠、北斎と広重を鑑賞するコツは全く違う!?

メトロポリタン

欧米でも「グレートウェーブ」というタイトルでも知られる、世界で最も著名な浮世絵「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を描いた葛飾北斎。作品の正式名称を知らなくても、日本人ならさすがに本作を見たことがない!という人はいないはずです。

ですが、この絵の意味するところや、鑑賞ポイントとなるとどうでしょうか?案外、細かいところまでは見えていなかったりしますよね。

では、この絵をコバチュウ先生はどのように見ているのでしょうか。少し長いですが、そのまま抜粋してしまいます。

今、ここにご紹介している葛飾北斎の神奈川沖浪裏という絵は、おそらく世界で最も有名な日本の絵画的作品。これは版画ですけど、1枚のささやかな版画で日本を美しく紹介してくれた作品であろうと思います。
(中略)
なぜ、これほど有名なのかということなのですが、大きな波に三艘の舟が大勢で櫓を漕いでいる、自然と人との一種の争いでしょうか。自然に立ち向かう人間の営み。それを遠くの富士山が、静かに見守っている。富士山は当時は霊山。神の山として江戸庶民に尊ばれていましたので、自然と人と神の三位一体が小さな版画に表されているわけですね。これは、私たち日本人も感動しますが、世界中の人に通じていく。大変、日本のイメージをアップしてくれた作品だと思います。

なるほど!「自然と人と神」の三位一体の絶妙なバランスや関係性がこの一つの絵の中に凝縮されているわけですね。世の中の森羅万象を描こうとした北斎の絵には、じっくりとした深い読み解きが可能なのですね。

さて、北斎と並び賞される風景画の大家といえば歌川広重です。コバチュウ先生は、広重の絵の味わい方もしっかり解説してくださっています。まずは広重の代表作「東海道五拾三次」シリーズで屈指の人気を誇る「蒲原夜之雪」を見てください。

ひろしげ

北斎に対してはコンセプチュアルな解釈をしていたコバチュウ先生ですが、広重の絵に対しては一転して感覚的な味わい方をされています。

粉雪が降る、宿場の夜の情景ですね。おそらく、笛を吹いて宿場の人が按摩客を呼んでいる。あるいは旅人が、雪に包まれた坂道を下り上りして行き来している。深々と降る雪の寒さや、宿で寝静まっている旅人、あるいは通行人など、様々な情景がこの絵1枚から浮かんでくる。見る人に、物語を作らせる、詩を感じさせる、風景画の作品だろうと思っております。

浮世絵版画を世界中に広めた北斎・広重の両巨頭ですが、コバチュウ先生の解説は非常に対照的。

私たちが絵を鑑賞するときも、北斎の絵と向かい合う時は謎解きをするような理詰めのアプローチが、広重の絵には絵からストーリーを連想しながら想像を膨らませて楽しむのが良いのかもしれませんね。

②意外!?西洋美術の影響を大きく受けている浮世絵

江戸時代、徳川政権の鎖国政策によってガラパゴス的な独自発展を遂げたかのように見える浮世絵ですが、コバチュウ先生の講義を聞くと、実は全くそんなことはなかった、、、ということがわかってきます。

たとえば、教科書にも掲載されたこの有名な喜多川歌麿の作品を見てみましょう。ビードロ(あるいはポッピン)というおもちゃのガラス細工を口に含んだ若い女性の半身像やが描かれています。

ポッピン

こうした半身像のことを浮世絵では「大首絵」と呼ぶのですが、歌麿の革新性は、浮世絵史上はじめて半身像をクローズアップさせた美人画を描いたことでした。

浮世絵の黎明期から約150年間もの間、美人画には一貫して全身を描いた作品しかありませんでした。そこへ突如歌麿が「大首絵」をはじめたのです。当時の江戸庶民には相当なインパクトを与えたことでしょう。

ですが、コバチュウ先生は、こうした歌麿の新趣向には、ちゃんとネタ元があったのだといいます。

それが、西洋絵画です。

もなりざ

ご存知の通り、西洋絵画では「モナ・リザ」をはじめとして歌麿の生きた時代の何世紀も前から上半身をクローズアップさせた肖像画はずっと描かれていました。それが、18世紀になると長崎の出島を通じて日本に入ってきていたわけです。

実際、あのエレキテルの復元で有名な蘭学者・平賀源内も歌麿の少し前に「西洋婦人図」という油絵を描いているのですね。

画像7

それを見たのか見ていないのかはわかりませんが、歌麿も西洋の肖像画を見て、浮世絵に応用した可能性は高いのだといいます。

もう一つ、コバチュウ先生が挙げてくださったのが、歌川派の中で広重のライバルでもあった歌川国芳の”だまし絵”です。

元々風刺的、戯画的な絵を得意としていた国芳のもっとも風変わりな作品が、こちらの「寄せ絵」と呼ばれる作品群「人をばかにした人だ」「みかけはハこハゐがとんだいゝ人だ」です。

ばかに

みかけは

一見、奇妙な男性の大首絵に見えますが、よく見ると、アクロバティックな姿勢をした小人が寄り集まって、一人の男の顔を作っている。人を寄せて絵を作るから「寄せ絵」ですね。

画像10

コバチュウ先生は、当初このあまりにも奇抜な「寄せ絵」は国芳自らが考案したオリジナルの戯画だと思っていたそうです。

助成ぬーど

しかし、研究が進むにつれ、この作品にも西洋絵画の元ネタがあることがわかってきました。これには、コバチュウ先生も相当驚かれたようです。

私は右側の絵の存在を知って大変驚きました。これは、西洋の遊び絵で、女性のヌードなんです。いい男、洒落男。この絵と同じようなヨーロッパの遊び絵を国芳は知っていたんだ。国芳のことを証言してくれている記録には、彼は数百枚のヨーロッパの絵を集めていたというのですね。

このように、著名な浮世絵師はみな多かれ少なかれ西洋美術の影響を受けて、、、というより、積極的にそれらを自らの作風に取り込んでいったということなのですね。これはちょっと驚きでした。

講演の中では、他にも西洋美術から浮世絵が影響を受けていた例がいくつか解説されています。ぜひ、動画をじっくり紐解いてみてください。

③浮世絵は西洋美術にも大きな影響を与えていた!

明治時代に入ると、富国強兵など欧化政策が進む中、浮世絵は急速に衰退に向かいます。しかし開国をきっかけとして、浮世絵はヨーロッパで大ブレイク。「ジャポニスム」という大旋風を西欧にもたらします。皮肉なことに、日本人が捨てた江戸庶民のエッセンスが詰まった浮世絵は、海外で非常に高く評価されていたのです。

その動かぬ証拠が本講演でも紹介されている、こちらのゴッホの油絵です。

ごっほ

うん??!浮世絵みたいですね?!

そう、こちらは歌川広重「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」をゴッホが模写しているのです!

かめいど

それでは、こちらもコバチュウ先生の解説を聞いてみましょう。

・・・そうした広重の絵をゴッホが写しているんです。先程の夕立の絵を、日本の漢字も真似て描いているんですね。実は、印象派の父であるエドゥアール・マネなども、漢字を写したりしている。如何に日本趣味が19世紀後半のヨーロッパに受け入れられていたか。「ジャポニスム」という動きが広がるのですが、その最も大きな影響源は浮世絵だったのですね。

日本の庶民がささやかにあがなっていた、購入していた娯楽的な絵画が、西洋の革新的な画家たちに受け入れられ、彼らが影響を受けた。そのことを若い時に知って、私は大変驚いて、浮世絵というものの魅力にハマってしまった。そういうきっかけにもなったんですけども。

浮世絵入門にぴったりの講座、おすすめです!

浮世絵研究の分野において大御所中の大御所なのに、初心者にも親しみやすくてわかりやすい。なぜコバチュウ先生の解説はこれほどにもスッと入ってくるのでしょうか。

それは、おそらくコバチュウ先生が浮世絵の面白さを、歴史や文化の繋がりの中で、様々なものと比べながら説明してくださるからです。浮世絵師や作品についてのちょっと変わったエピソードや、知られざる驚きのストーリーなども知り尽くしていらっしゃいます。

このコロナ禍の中、何か新しい趣味を見つけてみよう、という方や、美術館に通えない分自宅でアートを楽しみたい、という方にぜひオススメの講演動画です。視聴は完全無料なのも嬉しい。ぜひ楽しんでみてください!

コバチュウ先生監修!「週刊 ニッポンの浮世絵100」も刊行中です!

浮世絵3

今回の30分の動画をきっかけに浮世絵に興味が出てきたら、ぜひコバチュウ先生が動画ラストでお話されていた小学館のウイークリーブック「週刊 ニッポンの浮世絵100」を手にとってみてください!

浮世絵についての最新情報や意外な楽しみ方が満載された全30冊のウイークリーブックです。その最大のオススメポイントは雑誌とは思えないクオリティの高さ。

宿場

毎週発行される週刊誌なのに高級専門書並みに手の混んだ編集工程を経てできあがっているので、解説の正確さや図解・ビジュアルの美しさは業界随一です。ふりがなの徹底、ミニコラムの充実など、ビギナー向けの配慮も行き届いています。

刊行される全30冊の中で大量50名もの浮世絵師を特集するという意欲的な取り組みはおそらく業界初。初心者だけでなく浮世絵マニアにも大納得だと思います!

 「週刊 ニッポンの浮世絵100」特設ページはこちらから!

クリップボード1-8

▼「週刊 ニッポンの浮世絵100」特設ページhttps://www.shogakukan.co.jp/pr/ukiyoe

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?