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「あの頃から求めている」Ⅱ.戸惑いの頃①

"あの頃"毎日…

水の干上がった
深い、深い井戸の底から
地上に降りそそぐ陽の光を見上げて
憧れる
蛙そのものだった。

小学生の僕は、とにかく、心が「楽しい!」を求めるままに日々を過ごしていた。
そして、毎日クラスメイトの…特に、誰か女の子が自分の名前を出してガヤガヤ話をしているのが、なんとも快感だった。
それが例え、たんなる場末の芸人のダサいやらかしを話題にしてるだけ…みたいな内容だとしても。ね

6年生にあがったある時期、放送委員だった友達のはからいで、給食の時間に流す用として数人で日々ショートムービーを撮って上映したりもした。
そこで、僕はヒーローに倒される銀行強盗の役をしたり、当時流行っていた玉置浩二さんの「田園」をカメラの前でバカ声で歌ってみたりと、さながらタレント気取りで傍若無人に立ち回っていたのだ。

「あんた、なんであんなアホな事ばっかやってんの〜!?」
「絶対アダマおがしいよ〜」
なんて、クラスの女子たちを中心に言われてしまうことも日常茶飯事。

それでも僕は、勝手に充実してた。
自己満足してた。
そんな生活で色濃く彩られた、小学校時代だった。

そして中学校…
小学の時から"向いてるんじゃないか?"と自他共に考えていた長距離走を本格的にするため陸上部に入り、結果的に3年生の夏にはなんとか県大会の出場は決めることが出来た。

学校対抗の駅伝競走大会でも、サッカー部の同級生らと一緒にタスキをつなぎ、母校の悲願だった県大会出場の切符を二年連続でつかみとるなど、順調に感じた面もたしかにあった。

けれど
陸上競技場の赤茶けたトラックから木目張りの教室に舞台が移ると、その空間で着席をする僕は霞んでいた。
渡り廊下から階段を降りていく時、ふとこちらを見た?睨んだ?先輩男子生徒の鋭い目つき。体育のバレーやサッカーでミスをした時のクラスメイトからの強烈なブーイング。
そして校内のそこかしこで、時に胸ぐらを掴んでまで感情をぶっつけ合う「青春のかたまり」たち…

僕は、ひたすらに怯えていた。怖かった。
そいつを振り払う「何か」を常に求め、必死にすがりつきたかった。
その結果、なぜか"口調を変えよう"という発想にいたった。
当時みていた漫画の主人公が、ハチャメチャだけど優等生、そして口調はなぜか「です、ます」調…
コレでいこうと思った。なぜか

こうしてさらにキワモノ感に磨きが掛かった頃には、すでにクラスでは陰キャ的なポジションにすっぽり収まっていた。
大人になっても、K1デビューを目指して東京でハツラツと頑張っていたKちゃんや、バンドメンバーを率いて全国でLIVE行脚をしていたH君、といった陽キャな学友たちと校内テレビで共演していたあの頃の自分は、もはや見る影もなかった。

そして、俺たち私たちが主役だ!と言わんばかりに迎えた中学3年時の球技大会や文化祭。
同級生がアタックを決め、ゴールを決め、そして一発芸なんかで会場を沸かせて活躍する中…
僕はひとり、体育館の端っこでクラスメイトの活躍をぼーっと眺めていた。
たまに拍手くらいは贈りながら、無気力なアタマでふと考えていた。

『あれ?俺はなんでこんな事になっちゃってるんだろう…』

【つづく】

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