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スタディングの税理士講座「簿財2科目合格コース」を受けてみた

2021年の税理士試験の受験者です。初受験です。

スタディングの「簿財2科目合格コース[2021年度合格目標]」を受講し、簿記論と財務諸表論の試験に臨みました。

学習期間は2020年6月から2021年8月の15ヶ月。結果はと言うと、自己採点では、

 簿記論→不合格

 財務諸表論→黒に近いグレー(≒不合格)

という感触です。

「スタディングでは合格できない」などと言うつもりはなく、スタディングの税理士講座(簿財2科目)を受講してみた率直な感想を書いてみたいと思います。

ただ、あえて私見を述べれば、合格するには

「簿記論」はスタディング+αの学習が必要、

「財務諸表論」はスタディングのみでも合格可能、

というのが感想です。

1.スタディングで受講した講座と費用

私が購入した講座は以下のとおりです。

■簿財2科目総合コース(合格+直前、2021年合格目標) 71,478円

■冊子オプション 28,380円

合計99,858円(税込)


また、上記のほかに以下の参考書を購入。

■TAC 簿記論 総合計算問題集 基礎編 2,200円

■TAC 簿記論 総合計算問題集 応用編 2,420円

■TAC 財務諸表論 理論問題集 応用編 2,970円

■TAC 財務諸表論 重要会計基準 1,760円

■簿記論 直前予想問題集(中央経済社) 2,640円

■問題のコピー代 5,000円(概算)

上記とスタディングの費用を合計すると、116,848円の出費です。


2.筆者スペック

筆者スペックも記載します。

・昭和生まれのアラフォー

・地方国立大学の経済学部卒(生まれも地方でしたので塾が近所になく、進研ゼミと赤本で受験)

・銀行勤務、ほぼ法人営業畑(決算書は毎日のように見ている)

【保有資格】

・簿記2級(2012年頃取得、3回目で合格)
・宅地建物取引士(2014年頃取得、3回目で合格)
・FP2級(2010年頃取得)
・銀行業務検定2級及び3級(財務・税務・法務。外為のみ3級だけ。法務2級だけ一回落ちる)
・証券外務員一種・二種
・生損保関連の資格(正式名称忘れました)

簿記2級と宅建士では、2度も不合格になっていることから地頭は悪く、勉強の要領も良くない人間です。が、コツコツ粘り強く続けられるタイプ、だと思っています。


3.学習時間

かなりアバウトですが、2020年6月から2021年8月までの1年3ヶ月間で約540時間。

 6月~2月:1週間におおよそ5時間×4週×9ヶ月=合計180時間

 3月~8月:1週間におおよそ15時間×4週×6ヶ月=合計360

平日は1~2時間、休日は2~4時間程度。

共働き且つ小さい子供がいるため、土日も含めて、基本的に子供が寝ている時間しか勉強ができないという環境でした。(直前期はさすがに妻にも協力してもらいましたが)

また、当初は夜に勉強していましたが、2021年3月からは朝型に切り替えました。具体的には夜9時過ぎに子供と一緒に寝て(寝落ちして)しまい、朝4~6時を勉強時間にあてるという生活リズムに変えました。

スタディングの場合、パソコンの画面をずっと見ている必要があるため、夜型の勉強だと寝る直前までパソコンと向き合う必要があり、そのため、睡眠の質が下がっていたということも朝型に切り替えた理由です。

では、良い点、悪い点を書いていきます。


4.良い点

(1)スマホさえあれば学習できる

スタディングの”売り”の1つでもありますが、スマホさえあれば「STUDYingアプリ」でどこででも学習できます

講義動画は自宅のWi-Fi環境でダウンロードでき、通信容量を食わず視聴ができ、アプリも使いづらいということは特にありませんでした。ある程度の慣れは必要ですが。

TACや大原にも動画視聴用のアプリがありますが、レビューを見るとほとんどが批判レビューです。しかし、そういった不満点(※)はスタディングではほとんどカバーできている印象です。

※例えば、一定期間たつと動画が消されてしまうということはスタディングではありません。また1本1本の動画が短いため、ダウンロードもWi-Fi環境であればサクサクです。(2021/8月時点)

動画もスマホでの視聴に合わせてあるので、講義はスマホの画面で見やすい構成になっており、文字が小さくて読めないということもないですね。(具体的にはパワーポイントを映し出す形で講義が進んでいきます。)

また、1つ1つの講義動画が3~10分程度でこま切れになっているため、通勤中など、隙間時間での学習がしやすいです。これも当社が謳っているとおりです。ただ、中には1コマが15~30分くらいの長~い講義もあります。

TACや大原の講義動画の場合、1コマ2~3時間はかかるため、例えば通勤電車で見る場合、全部見切れず中途半端になる可能性が高いんでしょうね。TACや大原はサンプルでしか見ていませんが、スマホで講義動画を見る場合、黒板に板書された文字が小さくて見づらかったです。

※ちなみに、大原は「時間の達人」という1時間のWeb講義があり、スタディングに近い講義形式で、これは良さげな印象です。

動画速度は最大3倍速まで変えることができるため、忘れたところを復習する際には2~2.5倍程度にして短時間で聞いたりしていました。(ただし、スマホで2.5倍速以上にすると、音声と動画の動きにタイムラグが生じます。2021/6時点。)

なお、簿記論・財務諸表論の中村講師の話は非常にゆったりしており、通常速度で聞くとあまりに遅いため、初めての講義でも1.5倍程度で聞いていました。

(2)講義はわかりやすい

感じ方は個人差があると思いますが、わかりやすいと思います。少なくとも私は聞いていて理解できないということは特にありませんでした。

個人的な感想ですが、私はこれまで資格勉強(簿記や宅建、FP)は市販本を買って独学でしかやったことがなく、スタディングのような講義形式で学習したのは初めてでしたが、講義形式だとこんなに理解しやすいのかと当初感動しました。聞いていればポイントが頭に入ってくるというのが本当に楽でした。高校受験も大学受験も進研ゼミだったので。

ただ、私は簿記論と財務諸表論しか受講していないので、他の税法科目の講師の質はわかりません。

(3)理論暗記ツールが超便利、使いやすい

スタディングには理論暗記ツールというものがあります。これはお世辞抜きで便利で、効率良く勉強できました。

よくある暗記方法として、赤文字を赤シートで隠して覚えるというものがありますが、それがスマホ片手でできるというものです。

※詳しくはスタディングのサイトをご覧ください。

本だと両手がふさがってしまい、混み合った電車の中では使いづらいですが、スタディングであればスマホ片手ででき、通勤電車の中でよく使っていました。

また、スタディングでは暗記する理論がかなり絞り込まれているのも特徴です。

例えば、私はTACの財務諸表論の理論暗記用の参考書も買いましたが、TACの参考書だと条文が長々と続いているので、重要な点が頭に入りづらかったです。

一方で、スタディングでは、かなりボリュームを減らしており、穴埋め対策に必要な個所や、最低限押さえるべき重要な論点だけに絞り込まれており、理解がしやすいです。

しかし、この点は賛否両論です。過去問等を見てみるとスタディングではカバーしていない範囲もかなりあります。これは悪い点で詳述します。

一方で、これをカバーする機能があり、次項で書きます。

(4)マイノート機能が便利

この機能は実際に使ってみないとわかりづらいと思いますが、自由にカスタマイズできるWeb上のノートのようなものです。

このツールで1番良かった点が、理論暗記用のノートを自分で作れる点です。

例えば、条文をコピペで貼り付けたあと、覚えたい箇所を赤マーカーで隠して、オリジナルの理論暗記ツールを作ることができます。

マイノートはスマホアプリから見ることができますので、前項の理論暗記ツールと同じように使うことができます。

私がどんな使い方をしていたかと言うと、財務諸表論で言いますと、スタディングでカバーしている理論はかなり絞り込まれており、カバーしていない範囲がけっこうあります。

私はTACの財務諸表論の問題集も使っていましたが、スタディングではカバーしていない理論問題を、マイノートに入れて補完していました。

2021年の財務諸表論で出た修繕費については、スタディングでは詳しく取り上げておらず、一方でTACの市販問題集には類似問題が載っており、マイノートでカバーしていたことで助けられました。

また、マイノートの作成はパソコン上で行うことができ、そのノートと同じものをスマホアプリで見ることができます。

少し話はそれますが、世の中にはいくつか暗記アプリが存在しています。写真で撮ったノートに赤マーカーを付すことができたり様々です。が、パソコンとは同期しておらず、スマホでしか作業ができないものがほとんどです。スマホの小さい画面での作業はかなりの煩わしさがありますが、スタディングではパソコンサイトとアプリが同期している点もいいところです。


5.悪い点

(1)簿記論は試験レベルの練習問題が少ない

基礎レベルの計算問題は充実しているように感じましたが、試験レベルの問題が少ないです。(TACや大原の問題は見たことがないので筆者の主観ですが・・・)

要は問題が簡単すぎます。財務諸表論レベルだと対応可能かもしれませんが、簿記論はスタディングの教材だけでの合格は相当困難だと思います。

基本を理解するために、スタディングのトレーニング(≒基本問題)やテーマ別演習(≒若干難しい問題)の問題を3周くらいしました(苦手論点はもっとやりましたが)。

しかし、4月になって初めて過去問に取り組みましたが、解けなさすぎて絶望しました。文章の読み取りができず、かなり面食らいました。

私の地頭のせいでもあると思いますが、基本問題ではお目にかかることが試験レベルのひねった言い回しをされるとまったく手が動かなくなりました

スタディングには4月くらい始まる「直前対策講座」というものがありますが、直前予想問題集(簿記論)と比較すると、これも試験レベルに比べると数段レベルが落ちる内容となっています。

つまり、スタディングでは試験レベル問題の場数を踏む機会が少ないということです。

なので、私の場合はTACの問題集や予想問題集を別途購入して学習していました。


(2)確認したいことがあるとき手間暇がかかる

紙のテキストが無いため、何かを確認したいときに、その講義のWebページを探しに行かないとならないため、確認に時間がかかります(Webテキストは、自分で印刷することは一応は可能です)。

これはスタディングの性質上、やむを得ないかなとは思いますが、すぐに目的の場所にたどり着けず手間が若干かかります。

パソコン(Chromeブラウザ)上であれば別タブで開けるのでまだいいですが、スマホアプリ上だと1画面しか開かないので、他の講義を見に行くというのは面倒くさいです。(※ちなみにマイノートであれば、今見ているページを閉じることなく呼び出すことができます。実際に使わないとわかりづらいと思いますが)

ただ、悪い点と言いながら、慣れてしまうも結局は私はそんなに不便を感じませんでした。


(3)スマホやPCを使っての勉強のため、目に悪影響、夜の寝つきも悪くなる

スタディングの場合、パソコンやスマホで講義動画や練習問題を見るため、夜型の勉強だと、寝つきが悪くなり睡眠の質が下がりました

朝もさっぱりしないことが続き、2021年3月ごろから朝方に変えました(夜9時過ぎには子供と一緒に寝てしまい、平日は朝4〜6時に勉強)。


(4)練習問題をパソコン画面上で見るのは非常に効率が悪い

練習問題(PDFファイル)をパソコン上で見る場合、スクロールしないと先が見えなかったり、答え合わせの際にも答えと問題の間を行ったり来たりしなければならず、かなり効率の悪さを感じました。

結局、私は2021年1月になってから紙ベースで練習問題が届く、冊子オプションを購入しました。

紙の方が学習がかなりはかどり、始めから買っておけば良かったです。お金をケチったがため、かなり効率の悪いことをしていました。

自分で印刷する手間暇を考えると、冊子版オプションは購入すべきだと思います。


(5)冊子版オプションの問題集が届くスケジュールが遅い

問題集が紙で送られてくるオプションですが、届くのが非常に遅いです。配送スケジュールは公表されていますが、Web上でアップされてから最大で2ヶ月ほど遅れて届きます

Web上で見るのが非効率だから紙ベースの問題集を買ったにもかかわらずなかなか届かない、この点は正直クレームものの悪い点だと思います。最悪です。


(6)講義のリリーススケジュールが遅い

Web講義は8月中旬から順次リリースされていきますが、一番最後の講義がリリースされるのが翌年の4月中旬となっています。

そのため、まずは一通り試験範囲を学習してしまいたいと思っても、前倒しの学習ができない仕組みになっています。

これは、TACや大原が年内には一通り範囲を終え、年明けからは2回転目・3回転目に進むと言われているのに対し、大きなディスアドバンテージだと感じました。

なお、私は2020年6月時点で2021年受験者コースに申し込んだのですが、その時点では2020年受験者コースが見れる仕組みになっており、全講義が既にリリースされた状況でしたが、2020年9月に2021年受験者向けコースに変わったため、リリースされていた全講義が見れなくなりました。(ちょっと伝わりづらいですかね?)

参考で2022年度のリリーススケジュールを添付します。


(7)直前対策講座の問題解説が不十分

4月ころから開始される、直前対策講座という別売の講座があります。

2021年度の場合、単品で購入すると簿財2科目パッケージで15,180円で、簿記論・財務諸表論でそれぞれ9回分の、本番と同じ形式の問題と解説動画がパッケージになった講座です。

この講座の解説動画がかなりあっさりしています。受験生レベルであれば解答を見ればわかるだろうという箇所の解説は触れず、注意が必要な箇所であったり、やや難解な問題の解説のみとなっています。

簡単な問題をある程度飛ばすのはわからなくもないですが、私としては難しく感じた問題なのに、その問題の解説が飛ばされていたりして、理解するのにたくさんの時間がかかることもありました。

また、難解な問題でも説明がけっこうあっさりしていたりもします。なので、解説ページとにらめっこしながら時間をかけて理解することになり、効率が悪いです。

このように感じたのはTACとの比較です。私は6月にTACの模試を受けたのですが、その解説動画がめちゃくちゃわかりやすい。TACの受講生はこんな質の高い講義を受けているんだとうらやましく感じました。値段が高いだけあるなと。(※私はTACの回し者ではありません)

なお、スタディングは動画の解説はあっさりしていると感じたのとは逆に、解答に掲載されている”解説文”は、かなり丁寧に記載されていますので、これを読めば何とか理解ができました。

TACと大原の市販の問題もやりましたが、この2社は解説文があっさりしていて理解するのに結構苦しみました。特に大原の解説文がわかりづらく感じました(やはり基礎力が不足していたのかもしれませんが・・・)。


(8)カバーしていない試験範囲が結構ある

スタディングでは扱っていない範囲が結構あります。

例えば、2021年の財務諸表論の第1問で「修繕費」に関する論点が出題されましたが、スタディングではカバーしていない内容です(講義動画で口頭では説明があったかもしれませんが、問題集や理論暗記ツールでは一切記載の無かった論点です)。

この修繕費については、TACの問題集では出てきたので、TAC、または大原などではおそらく扱っているのだと思います。

また、簿記論の方は、私が気付いた範囲で言うと「外貨建新株予約権付社債」や「企業結合における段階取得」(※)もスタディングでは取り扱っていません。(この2つは他の資格学校の市販の問題を解いている際にお目にかかった問題です)

※企業結合の段階取得は、若干はスタディング講義で取り扱っていますが、資本剰余金との絡みについては説明がありません。ただ、「直前対策講義」の問題では出てきましたが。

ですので、試験において他の資格学校対比では、捨てる問題が多くなると思われます。


(9)受験テクニック的な話は少ない

例えば、簿記論・財務諸表論ともに、第三問は決算整理事項等を処理して、後T/BやBS・PLを作るような問題が出題されますが、膨大な処理を、問題用紙どのように使って進めていくなどについてはあまり触れていません

若干は触れていますが、やりやすい方法を自分で見つけてくださいというスタンスのようです。

些末な話ですが、TACの模試を受けた時、隣の受験生が定規を使って前T/Bを切り離していたのをみて、こんなやり方があるんだと、本番では真似をさせてもらいました。

要領の悪い私にとっては受験テクニック的な話も加えてほしかったなと思いました。


6.まとめ

最後にスタディングをお勧めできるかどうか、また、スタディングをどのように活用したらよいかまとめます。但し、簿記論・財務諸表論の講座に限っての話であることをご了解ください。

(1)初学者にはお勧めできるが、経験者には物足りないレベルの内容。直前対策講座も試験レベルにはやや劣り、動画での解説も不十分。経験者はTACや大原などを使った方が良いと思う(やったことないけど)。

(2)計算問題が基本レベルの問題が多く、試験レベルの問題が少ないため、スタディングの教材のみでは「簿記論」の合格は難しい。市販の問題集で補う必要あり。一方で、「財務諸表論」であればスタディングの教材だけで合格可能と考えます。

(3)スマホさえあれば学習可能。スキマ時間に学習ができるというスタディングの売りのとおりで誇大広告ではない。スマホでの閲覧に最適化されており、アプリへの不満も特に無し。

(4)講義の進捗スケジュールはかなりゆっくりであるため、学習時間があまり取れない人向け。(全範囲が終了するのが4月)

(5)問題集が紙で届く別売の「冊子オプション」があるが、Webで見れるようになってから、届くのが最大2ヵ月遅れ。この点は最悪。

(6)理論暗記ツール、マイノート機能はすばらしい。効率良く学習でき、理論暗記には強くなれる。これだけでも買いたい。

つまるところ、勉強の要領が良い人向けの講座という気がします。手取り足取り+徹底的な問題演習で地力を鍛えたいという人は、TACや大原の方が良いと思います。(TACと大原は受講したことはありませんが)

また、合格者の方のブログなどを見ますと、問題集を何回転も回している(何度も解いている)と言っていますが、スタディングでもそれは同様に必要です。

私は市販問題集も含めて2~3回ほど解きましたが、何しろ地頭が弱く要領が悪い人間ですので、4回、5回ともっとやるべきでした。

以上となります。

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