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子連れ移住に注意せよ!地方でも待機児童はいる-福いい移住論-

こんにちは!ふくい移住サポーターの中谷です。福井に移住して、そろそろ丸8年。普段は地域をまるごと体感できる宿の運営など複数の生業で生きています。
 今回は「地方でも保育園(こども園)に待機児童がいる話」について考えていきたいと思います。

 以前の記事で、移住する年齢層について、書いてみました。

 この中でも「結婚して子どもがいない若い世代」や「子どもが小さい(幼稚園年代)」の移住先を決める要因となるのが「子育て支援」について。子育てをしていたり、これから子育てをしたいと考える年齢層の方々からは、地方の子育て支援や医療体制について聞かれることが多いです。今回は、子育て支援の話でも、特に保育園についてお伝えしていきたいと思います。

移住者は核家族。

 今の時代、夫婦共働きは当たり前。そして、自分や妻が仕事を行くには、保育園(こども園)に子どもを預けないといけません。いにしえの時代のような「夫が仕事に行き、妻は子どもの世話や家事をする。近くにおじいちゃん・おばあちゃんがいてくれて子ども(孫)の世話をしてくれる」というのは現代では通用しません。かつては、夫は子どもを妻や親(祖父母)に任せ、仕事に行けば、家族が暮らせるだけの収入がありましたし、核家族化が進む前であれば、自分の親が子どもの世話をしてくれていました。ある助産師さんに聞いた話だと、「昔は子どもの世話を、両親や祖父母、親戚や近所の人など、大人8人くらいで子どもを見ていた。それが今は、両親の2人だけで見なければいけない状態になっている」ということ。

 この状態は、移住者家族にも当てはまります。移住するということは今までの生活環境から離れることで、Uターン移住を除くと、知り合いも少ない、親戚もいない地域に引っ越し、夫婦2人だけで子どもを育てるということになります。そんな時に頼りになるのが、その地域の子育て支援でしょう。


子育て支援は、費用的支援と人的支援がある。

 子育て支援は大きく分けると、費用的支援と人的支援の2つから成り立っています。

【費用的支援】
・医療費無料
・保育園利用料無料
・給食費無料
・出産・子育て応援交付金の支給
▶︎ 子育てするのにかかる費用の一部を支給してくれる

【人的支援】
・保育園の充実(待機児童なし)
・子どもの遊び場(保育士などのスタッフあり)
・保健師に子育て相談ができる
▶︎ 子育てにかかる時間を助けてくれたり、相談できる

 これらの支援は、基礎自治体(市町村)が行なっているものが多いので、移住先の市町村ごとに大きく違いが出てきています。つまり、住む(住民票を置く)市町村によって、支援があったりなかったり、大きかったり、小さかったりしますので、いくつかの移住先で迷っているのであれば、それを判断材料にしてみるのも良いでしょう。


人的支援が改善しづらい

 では、ここからもう少し切り込んでいきたいと思います。それは、費用的支援よりも人的支援が改善しづらいという話です。世の中の流れとして「子育て支援」が拡大される傾向になってきています。ですので、各市町村では今までよりも支援が拡大されてきています。今までになかった支援制度が新たにできたり、もらえる金額が増えたりというところなのですが、こういったお金で解決できることは、割と改善されやすいです。というのも地方の市町村は国からの補助金を使って事業をしていることも多く、日本全体で子育て支援に予算をつける流れが大きくなっているから。

 その一方、改善しづらいのが「人が必要な事業」です。わかりやすいのは「保育士不足による待機児童の発生」ではないでしょうか。人を雇うのは、ちょっとした費用的支援を拡大するよりもお金がかかりますし、何よりも人口減少により人が不足しているので、人が必要な事業は充実することが難しいのです。

子どもが少なくても待機児童は発生する

 私事ですが、我が家にも0歳と2歳の子どもがおります。私が二拠点生活をしている関係で、子どもが住んでいる滋賀県での話になってしまいますが、これは滋賀県だけではなく福井県もそうですし、全国どこでも当てはまる話です。ですので、これから地方に移住して子育てをしたい方はご注意ください・・・!

 地方移住の売り文句として「待機児童がいません」と打ち出している自治体も多くあるでしょう。移住相談で、移住支援の担当者に相談しても「待機児童はいませんので、保育園に預けて働けますよ」と言ってくれるかもしれません。しかし、ここで注意するのが、
・何月の時点で待機児童がゼロなのか
・市内の保育園がどこでも待機児童ゼロなのか

の2つです。ここをしっかり確認しておかないと「こんなはずじゃなかった!」ということになるでしょう。

子どもが少なくても待機児童は発生する

 地方移住をするときに「地方は少子高齢化が進んでいるから、保育園も空いていて入りやすいはず」と想像するかもしれません。しかし、それは間違いです。というのも、子どもが少なければ、それに比例して保育園の数も少なくなるからです。保育園に入園を希望する子どもの数は、出生数の推移と今までの傾向を見ていれば、概ね把握することができるので、子どもが減っていくに合わせて、保育園を廃止する流れも出てきています。私が住む滋賀県高島市では待機児童がいるにも関わらず、保育園がここ数年で1、2箇所廃止されていきます。保育士不足や施設の老朽化などの理由があると思いますが、入りたい子どもがいるにも関わらず保育園を減らしていく・・・そういった流れが出ているのは、子育て世代として把握しておいた方が良さそうです。

何月の時点で待機児童がゼロなのか

 こども家庭庁(厚生労働省)の調査により、各都道府県で待機児童の数が発表されています。各市町村だと情報を出していないところがあるので、気になる方は「都道府県名+待機児童」などで検索してみてください。
福井県 ▶︎ https://www2.pref.fukui.lg.jp/press/atfiles/paQ31693468964cF.pdf
滋賀県 ▶︎ https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/5418409.pdf

 ここでは、市町村ごとに見ることができるので、移住を考えている地域が「待機児童がゼロ」だったら、保育園に入れることができるなと安心するかもしれません。しかし、ここで気をつけないといけないのが、調査の時期です。これらの調査は基本的に4月1日を基準にしていることが多いです。つまり、「前年度に申し込んだ児童で待機になっていない」という事実しか表していません。つまり、年度途中で移住をした場合に必ずしも入れるとは限らな
のです。

保育園の申し込み制度は複雑になっている

 保育園の申し込みは独特な制度となっています。年度ごとに募集をするのですが、前年度の10月頃に始まるのが「一斉申し込み」です。この時点で翌年度の入園を希望する場合に申し込みをする必要があります。そして、この一斉申し込みも段階が分かれていて、一次調整、二次調整、三次調整、四次調整と進んでいきます。保育園の空き状況によって、一次調整で定員が埋まってしまう保育園もあれば、四次調整までも埋まらず、随時募集という形に切り替わる保育園もあります。
 さらにわかりづらいのが、この調整のために点数をつけられるというところ。これが「保育施設利用調整の指数」などと呼ばれています。つまり、定員が埋まってしまうので、どの子どもを優先的に入れていくのかを点数づけていくのです。
 これらの制度を移住前に理解するのは難しいと思いますが、まずは「保育園に入りたい場合、前年度から申し込みをしないと入れないことがある」ということを把握し、移住の時期を考える必要があります。


市内の保育園がどこでも待機児童ゼロなのか

 さらに確認すべきは、市内全体で見て待機児童がいないとしても、空いている保育園はどこかというところ。同じ自治体内でも、人口が多い地域(子どもが多い地域)と少ない地域に分かれていることがほとんどでしょう。特に平成の合併以降、自治体の範囲が広くなり、同じ市内でも差がひらいています。ということは「市内全体で見ると年度途中でも保育園に入れる」ということでも、空いている保育園が家から車で片道30分かかることにもなるでしょう。ですので、「市内(町内)で保育園が空いているから大丈夫!」ではなく、住みたいエリアと保育園が離れていないかどうかも確認していく必要があります。

<< 指数についての小話 >>
先ほど紹介した指数ですが、自治体ごとに決めているので、自治体によっては、自分にとって不利な指数を設定されている可能性があります。うちの子どもは滋賀県高島市に住んでいるので、高島市が定めた指数によって点数づけをされます。

 衝撃だったのが「申込児童以外の就学前児童を保護者または別居の親族が保育する場合はマイナス5点」という減点項目。これは、「子どもをひとり見てるんだったら、もうひとりも見れるよね。だから、他の子どもよりも優先順位が低いよ」ということなのでしょう。

 さらに驚いたのが、この申し込み児童以外の子どもについては、保育園に預けることができない生後6ヶ月未満の子どもも含まれるということ。さらに生まれる前から「生まれると仮定して」減点されました。

 保育園としては預かれる年齢じゃないけど、減点ね!というのは、受け入れられる人数を増やすのではなく「いかにして点数を下げるか」を考えていると感じました。この少子化の時代に、「下の子どもがいたら、上の子どもを預けて仕事に行けなくなるから、子どもを生むのを控えようかな」と思わせてしまうほどの減点項目かもしれません。

 念のため、滋賀県内の他の自治体も調べてみましたが、県内20市町のうち、マイナス項目に下の子どものことが入っているのが9市町。マイナス5点と大きく減点しているのは高島市だけ。他はおおよそマイナス1点や2点でした。ここまで自治体によって異なるんですね・・・。

とはいえ、パーフェクトな移住先なんてありえない

 ここまで、移住先についての子育て支援。特に保育園に預けたいと思っている方に向けて書いていきました。
 では、移住候補地が決まって相談したら「年度始めだと保育園に入れますけど、年度途中だと難しいかもしれません」となったとしましょう。だったら、その地域は諦めますか?

 それはそれで、違うのかなと思います。というのも、自分の想いが100%当てはまる移住先なんてないからです。理想よりもスーパーから遠い、交通が悪い、家が日陰になる、もう少しコンパクトな家が良かった・・・と移住先の粗探しをしたらキリがありません。

 そうではなく、それはそうとして事前に情報を知っておけば、移住する時期を調整したり、早くから申し込みしたりなどの作戦を練ることができるでしょう。移住してから「こんなはずじゃなかった!」を防ぐために、事前に知れること、準備できることをそこそこして、あとは「行ってみてなんとかする」これが移住だと思います。

 準備は進めつつ、恐れず。移住への一歩を踏み出してみませんか?



最後までお読みいただき、ありがとうございます。
本記事は「ふくい移住サポーター」として執筆しました。最後にふくい移住サポーターについてご紹介します!

ふくい移住サポーター

 ふくい移住サポーターは、福井県に移住した人や移住者をサポートしている人々が登録されています。大きな特徴は「福井が移住先じゃなくても、移住関連の相談できる」ということ。移住を考えだした当初に、どの県に住みたいかなんて分かりませんよね。むしろ、そこを相談したい。このサポーターは、移住先が福井県であるかどうかに関わらず、オンライン相談や現地案内などで利用いただける福井県庁の制度です。県庁の移住支援の制度なので、利用料もかかりません!

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ふくい移住サポーター(福井暮らすはたらくサポートセンター)のフォームからご相談ください。

【 ライタープロフィール 】

1988年京都市生まれ。大学を休学し、自転車で日本一周をしたことをきっかけに「地域」に関心を持つようになった。地域活性化に貢献するため、東京の旅行会社、岐阜県の宿泊施設に勤務するものの「既存の観光」で地域を元気にすることの限界を感じ、それぞれの地域が自分サイズでの活性化に取り組むお手伝いをしたいと考え、2016年福井県南越前町に地域おこし協力隊として移住。
任期終了後は、旅人と地域住民の交点となる「地域まるっと体感宿 玉村屋」を開業。さらに長期で滞在したい人向けの「農家シェアハウス はなさか荘」を運営。そのほか、農家さんのお手伝いなどをして生きる「複業家」としての生き方を実験中!

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