lyrical school/Bring the noise ~recommend "kyuhu"~

新譜の紹介は多くあるが、旧譜の紹介はあまりないなと思い、始めたのが「recommend "kyuhu"」。その名の通り、ただただ気になった旧譜を紹介していくシリーズです。

今回は最近イチオシの『lyrical school』の新作EPから、めちゃくちゃポップでめちゃくちゃ良い曲を。

『Bring the noise』は、5人組ヒップホップアイドルグループの『lyrical school』が2020/4/22にリリースした5曲入りEP『OK!!!!!』の5曲目として収録された1曲です。5曲とも良い曲ばかりなので、全曲したいぐらいですね。

『lyrical school』については以下記事で、今思っていることを書いています。とにかく今のリリスクはめちゃくちゃ面白いし、楽曲の良さについては文句の付け所が見当たりません。


この曲はyuuの掛け声で幕を開けます。マーチのリズムが印象的なイントロからの部分は、とにかくピースフルな雰囲気で満たされているかのような気持ちになれます。こういうマーチだと個人的には"BLACKPINK"の"KILL THIS LOVE"が想起されたりもするのですが、その勇ましさとはまた違った、それこそhinakoが好きなディズニーのパレードのような空気感が詰まっているように思います。

リリックの一つひとつも興味深いですし、hinakoの大胆で大きな"見せ場"もありますし、メロウなCメロ~大サビへの流れは、JPOPの定番でありながら胸にグッと来るエモさがありますしで、興味深い要素が詰まりに詰まった1曲ですが、最も書きたかったのは、yuuの以下のバースについてです。

急な坂を下る 戸惑う 風纏う スリル満点のライド 両手離し 豪快に
CLASH ハッハッ そんなことばっか
揺れたり 沈んだり 浮いたり せわしないよもう

もともとyuuは、その透明感ある声の質が聴きやすいし、歌も上手いし、ラップも上手いしで、三拍子揃っていて、リリスクの曲の中でも軸になっていると思いますが、その良さが、バッチリ揃って出たのがこのバース部分だと思います

1分辺りから迎えるこの2つのバースは、全体的にダイナミックなフロウだなと思うのですが、特に"スリル満点のイド"と"せわしないもう"(太字は引用者)という部分があまりにも良すぎて、この曲のハイライトではないかと思っています。
なかなか文字にしづらいのですが、上記太字の2か所は、どちらも高音が当てられていますが、前者はラップ的なフロウの流れの中からいきなり高音にジャンプしたり、後者は綺麗なメロディの中で高音が一瞬当たられるような部分です。 
普通にやると、そもそものフロウ自体がダイナミックなので、曲に馴染まないようなフレーズになってしまいそうな気がするのですが、yuuが完全に乗り切って、うまく歌いこなすことで、この二つの高音が曲全体にとても良いアクセントになって、立体感を感じさせ、情緒に深みを加えていると思います。
このフレーズだけでも、何回でもリピートできてしまうぐらい、素晴らしいバースになったのではないでしょうか。

細かなディティールでは、とにかく工夫がいっぱいあると思うのですが、とにかく全体としては、奇を衒って驚きに満ちた曲とは対称的な、ただただポップでキャッチーな良い曲になっていると思います。今のリリスクは現行ヒップホップの音も貪欲に飲み込んだ曲もたくさんありますが、それとはまた違った良さが詰まった1曲だと思いました。こういう幅の広さも彼女たちの魅力ですね。
そんなわけか、たまたま目に付いただけかもですが、2020年の上半期ベストの中に選出している方も見かけました。


ちなみに、この曲については作詞作曲を担当された泉水マサチェリーさんがnoteに解説記事を書かれています。制作裏話が読めて非常に面白いです。


最後にいくつか動画を紹介します。動画も観るとより曲の世界観に浸れますね。
初公開はこの動画の時だったようですが、曲自体の完成度もすでに十分。この動画でしか見られない、yuuの可愛い先導が見どころです。(リリスク全国ツアーがBLITZで開幕、思い出のナンバーに5人の今を重ね撮り

リモートライブともう一つのライブでは、マーチのリズムに良くマッチした簡単な手の振り付けが、非常にキュートだなと。シンプルではあるものの、こういう小さな工夫にリリスクの良さが良く表れていると思います。


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