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vol.5:金利・為替・株価 ~Vodka's input journal~

経済ニュースにおける「金利」とは

  • そもそも新聞によく出てくる「利上げ」「利下げ」。ここで上げ下げされている金利は、「政策金利」のこと

    • 政策金利とは、中央銀行が設定する短期金利のこと。例えば以下の金利が対象になる

      • 銀行が中央銀行に預金するときの金利:日本銀行当座預金金利

      • 銀行が中央銀行から借りるときの金利:公定歩合

      • 銀行間の翌日物の金利:無担保コール翌日物金利(日本)、フェデラルファンド金利(アメリカ)

  • 政策金利が上がれば景気の過熱が抑えられる。金融機関の資金調達コストが上がり、それが企業や個人に転嫁されるため経済活動が抑制されるため。通貨の流通が収まりデフレ圧力となる。下げればその逆になる。中央銀行が金利を上げる=景気の過熱を抑えるための引き締め

  • 一般的に、金利が上がると景気が落ち着くので株価が下がる。逆に金利が下がると景気が良くなるので株価が上がる。金利引き上げに積極的な立場が「タカ派」、消極的なのが「ハト派」

  • 金利差が広がると、金利が高い国の通貨の需要が高まる。近年はアメリカの金利が高く日本はマイナス金利だったので、円安ドル高になっている

短期金利と長期金利

  • ここで言う「金利」には短期金利と長期金利がある

    • 短期金利:1年未満の取引にかかる金利。いわゆる無担保コール翌日物(銀行同士が1日だけお金を貸し借りするときの金利)が指標になっており、これは中央銀行(日銀)が決める

    • 長期金利:1年以上の取引にかかる金利。一般的には満期が10年の国債(10年物国債)の金利を指す。基本的には原則金利よりも高い。一般的には市場が決めるが、日本では2016年以降日銀が操作している(国債の売買オペを通じて)

      • 国債を大量に買うほど価格が上がるため、金利が下がる

      • 長期金利が上がると、融資の金利上昇、住宅ローンの固定金利上昇などにもつながる

    • イールドカーブとは?

      • 横軸に期間、縦軸に金利をとるグラフのこと。原則右肩上がりになるが、そうでないこともある

なぜ今は円安なのか?

  • 外国(特にアメリカ)との金利差(短期金利の調整、長期資産の買い入れが金利を下げた。金利の低い通貨は人気がなくなるため安くなる)

  • インフレ(金融緩和などが起きるとインフレし、円の価値が下がる)

  • ウクライナ侵攻によるエネルギー価格の上昇(資源国に対して円安になる)

  • 貿易赤字(貿易赤字=円を外貨に変える量>外貨を円に変える量なので、円が安くなる)

景気調整のための政策

景気を調整するための政策は主に以下の通り

  • 財政政策:政府が行う。増減税・公共事業の拡大などにより市場のお金の量をコントロールする。間接的な操作

  • 金融政策:日銀が行う。政策金利の調整や、長期金利の操作(イールドカーブコントロール)のための国債買いオペなどを指す。直接的な操作

  • 為替介入:日銀が行う(財務省主導で決定)。為替が急激に変動した際、大量に円や外貨を購入・売却すること。直接的な操作

金利と債券価格の関係は?

 金利が上がると債券価格が下がる。去年の債券よりも今年の債券の方が(政策金利が上がった影響で)金利が高い場合、去年の債券の人気がなくなるので、債券価格が下がる

金利と株価の関係は?

 金利が上がると株価は下がりやすくなる。金利上昇は景気を落ち着かせ、企業の業績が落ち込みやすくなるため。特にグロース株は大きな投資による大きな成長を見込まれている銘柄のため、金利上昇の影響を受けやすい(前提となる投資ができにくくなるため)。ゆえに、NASDAQ総合指数と10年物国債の利回りは一般的に反比例する

金利と減税の関係は?

 減税をすると金利が上がる可能性がある。根拠のない減税は「国の財政基盤が不安定になった」と判断され、国債の格付けが引き下げられる可能性がある。すると国債の価格が下がり、結果金利が上がる(国債の格付けが低いならその分金利を上げてほしい、という市場原理が働く)。例えばイギリスでは財源なき減税施策によって金利高、ポンド安を招いた

アメリカの経済指標

  • アメリカのFRBは、「雇用の最大化」と「物価の安定」の2つを目標にしている。失業率が高いときは金利を抑え、失業率が低いときは金利を上げる傾向がある

  • すなわち、失業率統計が今後の金利動向を見通すために非常に重要

  • 特に重視すべき経済指標は以下の通り

    • 米国雇用統計:毎月第1金曜日に米国労働省から発表

    • FOMC声明・議事録:Federal Open Market Committee(米国連邦公開市場委員会)の略。FRBが約6週間ごとに年8回開催。米国の金融政策やフェデラルファンドレート(FFレート。米国の政策金利)の誘導目標を決定する

    • GDP:速報値、改定値、確報値の順に発表され、特に即放置のタイミングで為替レートが動きやすい。速報値は当該四半期終了後の翌月末に発表される

    • ISM製造業景気指数:毎月15日に発表

    • 消費者物価指数(CPI):特に生鮮食品(季節性要因を受けやすい)を除いた「コアCPI」が重要。対象付きの翌月15日前後に発表

マイナス金利とはなんだったのか?

  • 2013年に日銀が質的・量的金融緩和をスタート。「量的緩和」とは操作目標を金利(オーバーナイト物)ではなくマネタリーベース(市場の資金供給量)に変更し、市場の金融機関から国債の大量購入をすすめることで市場にお金をばら撒くこと。「質的緩和」とは、買い入れる国債の期間を伸ばしたり、国債以外の資産(ETF、J-REITなど)をも買い入れること。

  • 2016年1月に、日本銀行当座預金金利のうち「政策金利残高」をマイナス化する「マイナス金利付き量的質的金融緩和」を導入。さらに9月に長短金利操作(イールドカーブコントロール)を開始。上記の短期金利マイナス化に加え、10年物国債金利が概ねゼロ%台になるよう長期金利の調整も開始した

  • 長期金利の上限は段階的に引き上げられていき、植田総裁就任以降は2023年10月に1%上限が目処となった

最近のニュース

マイナス金利政策からゼロ金利政策への復帰(2024/3/19)

  • 政策金利を無担保コール翌日物金利とした上で、誘導目標が0.0~0.1%程度に変更となり、ゼロ金利政策に復帰。YCCを解除(長期金利の誘導目標は廃止)するが、買い入れは継続

  • ETF、J-REITの新規買い入れは終了。CP等および社債等は買入額を段階的に減額、2025/3を目処に買入終了

長期国債買い入れ減額決定(2024/6/14)

6/14の金融政策決定会合で、日銀が長期国債の買い入れ減額方針を決定。7月末に今後1,2年の具体的な計画を発表する。保有国債を減らすことで事実上の量的引き締めになる。政策金利の誘導目標は据え置き。

ニュースを見たらこう思えば良さそう

  • 政策金利が上がった:株価が下がりそう、円高になりそう

  • 国債買い入れが減った:金融引き締め=債券価格が下がり金利が上がるから株価下がりそう、円高になりそう

  • アメリカの失業率が下がった:金利が上がりそうだから円安になりそう、アメリカのグロース株が下がりそう

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