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oViceのシリーズB 資金調達によせて/oVice2年間の歩みとこれからの挑戦

こんにちは。oVice CEOのジョンです。

この度、oViceはシリーズBラウンドの資金調達を行いました。プレスリリースを見て、初めてoViceを知ってくださった方や、久しぶりにoViceのことを思い出してくださった方もいるかと思います。

今回は、単に社史を語るだけではなく、2020年にサービスを作り始めた頃の試行錯誤やPMF(プロダクトマーケットフィット)の予感を感じた出来事、資金調達の裏側、テレビCMや広告展開の背景、事業成長のポイントなど、oViceの「今まで」と「これから」の内容を中心にお伝えできたらと思います。

「オフィスに行きたい」という思いで生まれたバーチャルオフィス

2020年3月、その時私は出張先のチュニジアでロックダウンに遭遇し、途方に暮れていました。突然外出禁止になり、働いていた会社に出社できなくなってしまったんです。

オンライン会議ツールを使ってそれなりに仕事は進められるものの、どれもオフィスのような感覚にならない。雑談から生まれるユニークなアイデアや、隣にいる同僚の声が聞こえるからこそできていた連携が、リモートワークになった瞬間、なくなりました。

オフィスに行けなくなり、オフィスの価値を再認識したんです。そこで、バーチャル空間上で、出社している時のようなコミュニケーションができるサービスを作ることに。「oVice」を思いついたのは、出社して仲間と一緒にいることを好んでいた私自身の原体験からでした。

同年6月、日本に帰った私は『Open Network Lab』のアクセラレータープログラムに申し込みました。どの時期に何をする必要があるか、を教えてくれるペースメーカーの役割を求めていたんです。プログラムには同期の起業家がたくさんいました。負けず嫌いな私は、進捗の早い会社を見て「絶対負けない」とモチベーションを高めることができました。

PMFを予感させた、バーカウンターでのひと幕

2020年8月、oViceの「見られ方」が変わりました。

当時は「コロナは長期化する」という認識が広がり、本格的にテレワーク導入を検討する企業が増え始めた時期でした。それと同時に、「PMFを予感させる出来事」がありました。

私が利用企業のスペースを巡回していた時のこと。ある大手企業のユーザースペース内に設置されていた仮想のバーカウンターで、社員さんが話しているのを見ました。その様子はまるで、仕事終わりに一杯飲みながら話す姿そのもの。「リアルな空間のコミュニケーションをバーチャルに持ってくる」というプロダクトビジョンが、目の前に広がっていきました。

「これはいける」と、直感的に思いました。予想通り、その企業はすぐに全社導入を決定してくださいました。それをきっかけとして信頼性が増し、他の企業からも問い合わせが増え、このままオフィス利用でいこうと決心することができました。

私はその出来事から、「泥臭い行動」の重要性を改めて感じました。もし、行動せずに頭のなかだけで「このプロダクトはこのニーズに刺さる」などと考えているだけなら、PMFを感じることはなかったと思います。一つひとつのスペースを巡り、自分の目でユースケースを確認していたからこそ確信することができたのだと思います。

実際に売上が立つ前にPMFやPLM(プロダクトライフサイクルマネジメント)について「ああかな、こうかな」と検討をくり返す方もいます。しかし、創業期に大事なのは足(行動)で稼ぐこと。ユーザーの方々と直接コミュニケーションをとり、経営者自身が解像度を高め続けることが大切だと思います。

シードラウンド資金調達のきっかけは偶然の出会い

そしてoViceの認知度が少しずつ上がっていくに連れて、新しい使われ方が生まれ始めました。経営者や投資家が会議をする際に、お試しでoViceを利用してくれるようになったんです。それでご縁が広がり、後の資金調達にもつながります。

当時、私はカスタマーサクセスを担当していました。スペースに待機して、訪問いただいたユーザーや導入を検討している方々に対して、自ら営業をしていたのです。そこで、後にシードラウンドのリード投資家となる、One Capital株式会社の浅田慎二さんと出会います。浅田さんは、会議の相手からoViceのURLが送られてきてクリックしただけ。本当に偶然の出会いでした。

サービスを体感してもらい、良さを説明した結果、すぐに投資を決めてくださいました。2020年の年末にはもう1社も加わり、合計2社から総額1億円(シードラウンド)の投資を受けたのです。

それからはとにかく「ユースケースの発見と強化」に集中しました。大学の学会で利用されるケースが増えたら、特化したキャンペーンを行ったり、忘年会でのニーズがありそうとなれば、レストランと組んで、食事の宅配から宴会のコンテンツまで一括で提供する「オンライン忘年会」を企画したりしました。

oViceがキャズムを超えた瞬間

そして2021年1月、2回目の緊急事態宣言が発令され、oViceは大きな転機を迎えます。

社会的な意識と行動に大きな変化も起こり、テレワークの浸透という側面では数年分が短期間で進む状況となりました。1年前まで出社することが当たり前だった企業が一気にテレワークへ移行。そのタイミングで実施した「無償提供キャンペーン」によって急速にoViceの認知が広がり、イノベーター理論でいう「キャズム」を超える状況となりました。

なぜ割引ではなく無償にしたのか? 理由は2つです。1つは、当社のカスタマーサクセス部門のキャパシティ。一気に増えたリードに対応するための組織体制が、まだ整っていませんでした。無償提供することで、採用・育成をする時間を稼げました。

もう1つは、とにかくサービスに触れて欲しかったからです。どんなツールかわからないものが割引されていても買う人はいません。ですから、目先の利益は一旦置いておいて、まずはプロダクトに触れて良さを知ってもらいたかった。結果的に、3〜4月には有料転換をするユーザーが増え、きちんと数字もついてきました。

この頃になると、私がメインで担当していたのは「メディア戦略」です。緊急事態宣言によって起きていた社会課題をoViceで解決するために、メディアを巻き込めないか、と考えていました。

生まれた企画の1つが「バーチャル成人式」。成人式が中止になることをニュースで知り、すぐにTwitterでアンケートをとりました。成人式に関する質問をTwitter広告で回すと、ものすごい数の回答が集まってきたんです。その様子を見て、メディアからも取材依頼がきました。社会の反応を見ながら、メディアにもアピールできる。Twitterアンケートの効果的な使い方を学びました。

当時の実際のツイート

初めてのテレビCM「Why oVice 使わないの?」は心の叫び

2021年4月頃、順調に認知を広げながらも、oViceには大きな課題がありました。それは「大手企業のアップセル」。部署単位で導入いただいたとしても、全社展開には至らないケースが多くありました。

きっと、設立1年あまりの会社が提供しているという「不安」があったのだと思います。「導入後にサービスが潰れたらどうするんだ」と。キャズムを超えたはずなのに、思ったように売上が伸びない苦しい時期を過ごしました。

なんとかイメージを払拭しなければ......。そこで思いついたのが、テレビCMでした。厚切りジェイソンさんが連呼する「Why oVice 使わないの?」というキーメッセージは、私自身の心の叫びです(笑)。

CMは概ねうまくいきました。「先行きが不安なスタートアップ」ではなく「信頼できる会社」だと思っていただけるようになり、大手企業からのアップセルが一気に増えたんです。

1年目のスタートアップがテレビCMを流すのは、あまり前例がないことだと思います。それでも前に進めることができたのは、「絶対にいける」という確信があったから。自分の確信がなければ、みんなにとっての確信は生まれません。理想を信じ続ける姿勢は経営者にとって大切だと考えています。

プチ炎上で気付いた、oViceらしいあり方

もちろん、全ての施策が思い通りだったわけではありません。2021年11月に実施した、「忘年会キャンペーン」もそのひとつ。失敗したとき、そこから何を学んだかが重要です。

忘年会キャンペーンから学んだことは2つあります。ひとつは、屋外広告に可能性があるということ。費用対効果的に優れた施策であることがわかりました。もうひとつは、「oViceらしいあり方」に気づけたことです。

忘年会キャンペーンでは、「ぶっちゃけ大人数で忘年会したくない?」をキーメッセージにして、忘年会を「したい側」と「したくない側」の意見の対立を煽るような表現をしました。oViceは「したい側」のスタンス。したくない側がネガティブな反応を示せば示すほど、したい側に訴求できる設計でした。

しかし、振り返ってみると、これはoViceらしい方法ではありませんでした。どちらか一方の正解を押し付けるのではなく、どちらのあり方も認めるのが私たち。それなのに、施策に反映できていなかったんです。やっぱり、らしくないものは上手くいきません。このキャンペーンはプチ炎上をしたものの、思ったような成果にはつながりませんでした。

翌年の2022年1月、反省を活かして「5秒出社」をキーメッセージに据えた、新しい屋外広告を展開しました。出勤したい側としたくない側のどちらの働き方も良さがあること、oViceならその間をシームレスに行き来できることを表現しました。テレワークだけでなく、「ハイブリッドワークを実現するoVice」というイメージを強く発信した初めての企画でした。

「猫吸い」がSNS上でバズるなど、このキャンペーンは想像以上の反響があり、まさに「失敗は成功の母」となりました。

事業成長のポイントは「ストーリー経営」

無償提供やテレビCM、屋外広告など一つひとつの施策はバラバラに見えるかもしれませんが、実はすべて有機的につながっています。長期的な展望をワクワクするストーリーに落とし込むことが、私の重要な役割です。

「未来を見る時間」と呼んでいるストーリーを構想する時間は、3ヶ月に一度くらいの頻度でとっています。Oura Ringで計測するコンディションスコアが「90」を超えた日に、オンラインホワイトボード「miro」に落とし込む。もっとも重要な仕事だからこそ、もっともクリエイティブな状態で取り組むようにしています。

すべての施策はこのストーリーが元になっていると言っても過言ではありません。だからこそ、どの施策にも何かしらの一貫性を感じたり、ドラマの次回が気になるのと同じように、関わる人たちをワクワクした気持ちにできると思っています。創業から1年でテレビCMを展開するなど、周囲の方からすると無鉄砲だと思われるような施策でも実現してこれたのは「ストーリーの力」によるものだと今振り返って思います。

ハイブリッドワークを次のフェーズへ

2023年は「ハイブリッドワーク」を次のフェーズに進める年になります。これまでは「考え方」として発信してきたハイブリッドワークを、実際の「体験」として提供してPMFにまで持っていく狙いです。

そのひとつの取り組みとして、リアルのオフィスの空間構築を提供しているコクヨ株式会社との業務提携を開始しました。

それぞれの得意分野を掛け合わせ、オフィス環境とリモート環境をシームレスに繋げる、まったく新しい「デジタルワークプレイス」を構築します。詳細は10月に開催する「oVice Summit 2022」にてご紹介しますので、ご参加いただけるとうれしいです。

来年はoViceにとって、非常に重要な局面を迎えると考えています。その準備として、最近、個人的にユーザー企業の皆さんと直接お会いする機会を増やしています。ご挨拶とともに、今後のストーリーの解像度を高めるための情報を私自身にインプットしています。

また、ストーリーの規模が大きくなるに連れて、リーダーの重要さを感じるようになりました。ストーリーは描けても、自分だけで実現するのは不可能。直近はハイレイヤー層の採用も行い、「人々の生活から物理的制約をなくす」ビジョン実現への推進力を強化しています。oViceが目指す未来を一緒に作りたいと思われた方は、ぜひご応募ください。

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現時点で描いているのは「2025年頃までの未来」。みなさんが想像している以上に面白いものになっています。内容は順次明らかにしていきますので、引き続き、oViceの動向にご注目いただければと思います。


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