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受験に失敗しても絶対大丈夫!?〜ある女子学院OGの話

頭の中に「不合格」がよぎるせいで、勉強が手につかなくなったり、受験を前に緊張したりすることがあります。
そんなとき、みなさんはどんなふうにお子さんにお声がけされますか?

私は、逆説的ではありますが、失敗の可能性を受け入れるしか、解決方法はないと思っています。
「失敗しても大丈夫!」と伝えるために、しばしば話題に出すのが、女子学院OGのモリハナエ(仮名)さんです。*1

ハナエさんは
① 大学受験に失敗
② 大学院(修士)に進むも退学
③ 新卒採用では有名企業に就職できず
と、華々しく活躍する周りのお友達と比べると、決して「成功」とは言えない20代前半を送っていました。実際、彼女自身、そのことに劣等感を感じていました。*2

① 大学受験に失敗

ハナエさんの志望校は東大でした(成績を見せてもらったことはありませんが、十分合格圏内だったと思われます)。
ところが、センター試験で数学IAを選択すべきところ、誤って数学Iを選択して解答してしまい、東大を受ける資格すら失ってしまいました。
結局、彼女は早慶(のいずれか)に進学します。*3

② 大学院(修士)に進むも退学

ハナエさん自身が研究したいテーマを掲げ、修士課程に進むものの、結局、論文を提出せず、退学。*4

③ 新卒採用では有名企業に就職できず

確か国家公務員も視野に入れていたはずですが、結局、公務員試験も受けず、就活もそこまで熱心にはしていなかったように記憶してます。*5

しかし、ただものではないハナエさん、ここからが私とは全く違います。

なんと彼女は一念発起し(?)、GAFAM(のいずれか)の日本法人に応募し、見事就職。
社内ではかなり重宝されたそうで、退職時には、日本法人の社長に引き止められるほどだったそうです。すごい!

そう、かなり急展開ですが、もうすでに退職されています。
彼女は今、自分の事業を興しています。*6

この話を通じて、生徒に分かってほしいこと

ハナエさんの話をして、私は生徒に対してこう話しかけます:

確かに、入試で不合格という結果になるのは、「失敗」だと思うかもしれない。
けれど、このハナエさんのように、不合格が後々良い結果をもたらすことも多くある。

もしハナエさんが東大に受かっていたら、たぶん公務員になっていたと思うけれど、公務員になっていたら、GAFAMに就職することもなかっただろうし、自分の事業を興すこともなく、彼女がベストな形で社会にも貢献できなかったと思う。

さらに言うと、ハナエさんが入試で失敗したのは、明らかに彼女の能力が低いからじゃない。
数Iと数IAを間違う人が発生してしまうような、アホな問題冊子を作成している日本の試験制度が悪いんだ。
アホな試験制度のせいで、日本の国家はこんなに優秀な人材を公務員として採用できなかったんだ。

「そうでしょ?」
と問いかけると、生徒は「確かに」と答えてくれます。
そこで、

でも、これは君についても、同じことが言える。
入試で落ちたとしても、それは、君のことを正しく評価できない試験を作ったその学校がダメなの。
入試に落ちたとしても、あなたが才能あふれる人材であることに、何ら変わりはありません。

と私は生徒に伝えます。
この言葉には「本当かなあ?」と首をかしげる生徒がほとんどですが。

でも、私は本当にそう思っています。
日本の試験制度にどっぷりつかると、その後の人生も他人からの評価を軸に生きてしまいがちです(そして、往々にして不幸になってしまいます)。
私は生徒に、自分の人生を自分の評価軸で、幸せに生きてほしいと願っています。

中学受験は合格・不合格が決まる、つまり、他人からの評価を受け入れざるを得ないものですが、だからこそ逆説的に、こうした主体性を学ぶ良い機会にもできると考えています。


*1 私も中学受験に失敗している(第一志望の灘中に落ちた)ので、私の話をすることもあるのですが、ハナエさんは私なんかよりも圧倒的に大物なので、ハナエさんの話のほうが生徒にとっては説得力があると思っています。
なお、誤解していただきたくないので、念のために書きますが、「絶対合格してほしい」と思って生徒には接しています。必ず合格するための最善を尽くします。

*2 ハナエさんとイッセーくん(仮名。イッセーくんはかの有名なH田K一郎先生のお弟子さんで、めちゃくちゃバイオリンが弾けるのですが、新御三家(のいずれか)から早慶(のいずれか)に進学され、今は社労士として活躍されています)は、私が福島の子どもオーケストラで楽器を教えるお手伝い(ボランティア)をしていたときに知り合い、不思議と馬が合い、仲良くなりました。「できる限り質の高い芸術を子どもに伝えなければ、やっている意味がない。妥協してはならない」という点では、私も含めた三人でぴったりと意見が一致していました。
私も「成功」のレールから外れた人生を送っているので、食事やお酒の席でゆっくり話す機会があると「これから先、どうするの?」とよく話していました(イッセーくんはハナエさんや私と比べると、かなり堅実な人生を歩まれているのですが、イッセーくんはイッセーくんで色々と悩まれていたと思います)。

*3 サラッと早慶に合格するのが、ハナエさんのすごさです。

*4 たしか休学もしていた気がします。福島に来るときはいつも、本がいっぱい詰まった、すさまじく重いキャリーケースを持ち歩いていました。ハナエさんがパウロ・フレイレ『希望の教育学』を読んでいる、なんていう話をした記憶はあります。
なぜ退学することになったのか、詳細な理由は覚えていません。おそらくですが、実践派の彼女からすると、論文を書くのがまどろっこしかったのではないかと思います。

*5 これは決して、ハナエさんが怠けていたわけではなく、おそらく自分のやりたいことと本質的に違うため、本気になれなかったからだと思います。

*6 ハナエさんは定期的にSNS断捨離をする方で、現在、連絡がつきません。今回は自分の事業に集中するためだと思われます。


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