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かくれんぼ


もういーかい
まーだだよ

もういーかーい
まーだだよー

もういーーかーーい
もういーーよーー




クローゼットの
おくのおく

かさかさ、こそこそ
かき分けて


もぐり込んだら
外套の森


茄子紺、海老茶
芥子に、翡翠


衣擦れの音
ナフタリン


ぎゅうう、躰を
ちいさく、ちいさく


だれより上手く
かくれたつもり


目をつぶったら
わたしはいない


セカイはどこかへ
往きました




何度も、何度も
日が暮れて


何度も、何度も
夜が明けて



それから何年、何百年
何億光年たったでせう


だあれも探しに来ないので
セカイを探しに往きませう




こそこそ、かさかさ
外套の森


翡翠、芥子
海老茶に、茄子紺


かき分け、かき分け
そとに出た




まっしろ太陽
あかない目蓋


しらない土地の
しらない温度


しらないヒトが
せかせか通る




もういーかい
「    」

もういーかーい
「     」

もういーーかーーい
「       」




耳をすまして
言葉をまって


まっても、まっても
しずかなセカイ


どこにもいない
かくれっ子たち





何度も、何度も
日が暮れて


何度も、何度も
夜が明けて



かくれもせずに
見つからぬまま


わたしはひとり
おにを探して



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