【宅建試験を通して学ぶ】国土利用計画法

概要

国土の利用計画の仕方について規定する法律です。冒頭以下の様に定められています。難しい日本語ですが、一言で言うと限られた土地を極力有効活用しよう、ということです。そのために、「国土利用計画」なるものが定められます。

第一条 この法律は、国土利用計画の策定に関し必要な事項について定めるとともに、土地利用基本計画の作成、土地取引の規制に関する措置その他土地利用を調整するための措置を講ずることにより、国土形成計画法(昭和二十五年法律第二百五号)による措置と相まつて、総合的かつ計画的な国土の利用を図ることを目的とする。

第二条 国土の利用は、国土が現在及び将来における国民のための限られた資源であるとともに、生活及び生産を通ずる諸活動の共通の基盤であることにかんがみ、公共の福祉を優先させ、自然環境の保全を図りつつ、地域の自然的、社会的、経済的及び文化的条件に配意して、健康で文化的な生活環境の確保と国土の均衡ある発展を図ることを基本理念として行うものとする。

宅建ではその利用計画を邪魔する様な異常な取引が起こらない様に「届出」を強いているいくつかの分野に絞って出題がなされます。さて、まずその「計画」ですが、

第四条 
国土利用計画は、全国の区域について定める国土の利用に関する計画(以下「全国計画」という。)、都道府県の区域について定める国土の利用に関する計画(以下「都道府県計画」という。)及び市町村の区域について定める国土の利用に関する計画(以下「市町村計画」という。)とする。

となっています。国土交通省のHPに行くと、「全国計画」の概要が見られるのでざっと見ておくとイメージが掴めると思います。人口減少を見据え、地方の個性を生かした経済成長を支える国土計画、とのことです。
http://www.mlit.go.jp/common/001100228.pdf

また、これを受けて各都道府県が定める計画は「土地利用基本計画」と呼びます。リンクは大阪のものですが、基本方針に基づいて計画が立てられていることがお分かり頂けると思います。
http://www.pref.osaka.lg.jp/sokei/tochiriyou_keikaku/index.html

一定の制限

さて、こうした計画を達成するために一定の制限を同法は定めていますが、それが宅建では取り上げられます。
法律上は、第12条から始まる第4章が「土地に関する権利の移転等の許可」、第23条から始まる第5章が「土地に関する権利の移転等の届出」と主に二つに分かれています。23条の(事後)届出がこの法律の基本ですので、まずはその条文から見てみます。

二十三条 
土地売買等の契約を締結した場合には、当事者のうち当該土地売買等の契約により土地に関する権利の移転又は設定を受けることとなる者(次項において「権利取得者」という。)は、その契約を締結した日から起算して二週間以内に、次に掲げる事項を、国土交通省令で定めるところにより、当該土地が所在する市町村の長を経由して、都道府県知事に届け出なければならない。
2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する場合には、適用しない。
一 次のイからハまでに規定する区域に応じそれぞれその面積が次のイからハまでに規定する面積未満の土地について土地売買等の契約を締結した場合
(中略)
イ 都市計画法第七条第一項の規定による市街化区域にあつては、二千平方メートル
ロ 都市計画法第四条第二項に規定する都市計画区域(イに規定する区域を除く。)にあつては、五千平方メートル
ハ イ及びロに規定する区域以外の区域にあつては、一万平方メートル

この法律の主眼は「土地の適正かつ合理的な利用」にあります。例えば住宅地の値段が多数の投機的取引等によって不当に吊り上がってしまうと、一般人による土地の入手が困難になる。それを防ごうということですので、広大な土地の入手をするときには事後的に届出をし、その土地利用目的を国に届けよと言うもので、実務的には契約書の写しや実測図、周辺の住宅地図案内図等を添付して提出します。基本的には土地取引をどうするかは当事者間の自由なので、「事後」届出で構わない、ということです。市場価値の高い方が国の事後的な監視が必要なので、市街化区域が最も厳しく2000㎡以上と定められています。

事後届出が基本ですが、いくつか「事前」の例外があり、事前許可と事前届出に分かれます。これらは地価の高騰が見込まれている「危険な」地域なので事後では足りず、事前に国が介入するというものです。それぞれそういう特殊な地域には名前が付いています。各都道府県を見て頂ければ分かりますが、どこも事後届け出を基本としているのでこうした例外地域はあまり多くありません。まず、最も厳しい事前「許可」が必要な規制区域。

第十二条 (規制区域の指定)
都道府県知事は、当該都道府県の区域のうち、次に掲げる区域を、期間を定めて、規制区域として指定するものとする。
一 都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第四条第二項に規定する都市計画区域にあつては、その全部又は一部の区域で土地の投機的取引が相当範囲にわたり集中して行われ、又は行われるおそれがあり、及び地価が急激に上昇し、又は上昇するおそれがあると認められるもの
二 都市計画法第四条第二項に規定する都市計画区域以外の区域にあつては、前号の事態が生ずると認められる場合において、その事態を緊急に除去しなければ適正かつ合理的な土地利用の確保が著しく困難となると認められる区域

「土地の投機的取引が相当範囲にわたり集中して行われる」様な地域、住む・住まないに関わらず短期売買で儲かる様な地域です。

次に、事前届出地域は、「注視区域」と「監視区域」に分かれます。


第二十七条の三 都道府県知事は、当該都道府県の区域のうち、地価が一定の期間内に社会的経済的事情の変動に照らして相当な程度を超えて上昇し、又は上昇するおそれがあるものとして国土交通大臣が定める基準に該当し、これによつて適正かつ合理的な土地利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる区域(第十二条第一項の規定により規制区域として指定された区域又は第二十七条の六第一項の規定により監視区域として指定された区域を除く。)を、期間を定めて、注視区域として指定することができる。
第二十七条の六 都道府県知事は、当該都道府県の区域のうち、地価が急激に上昇し、又は上昇するおそれがあり、これによつて適正かつ合理的な土地利用の確保が困難となるおそれがあると認められる区域(第十二条第一項の規定により規制区域として指定された区域を除く。)を、期間を定めて、監視区域として指定することができる。

取引を行う前段階で、何らかの事情で常識的な価格を超えた価格取引がなされる可能性がある地域が注視区域や監視区域で、そうした地域は特別に都道府県が目を光らせているということです。
例えば、東京都では監視区域の指定はなく、「注視区域」のみ、小笠原村の都市計画区域(父島・母島の本島)が平成32年1月4日まで指定されています。京都府内には指定地域はありません。北海道にも道内全地域で指定地域はありません。
これを見ても分かる通り、農地法とは全く異なり、基本的にはこの法律は非常に緩やかと言うか、当事者間に委ねたものです。過去にあったいわゆる「資産バブル」の様な毎日土地価格が上がる様な時代がまた日本にも来るのであれば、この法律の活躍範囲は広がるのかもしれませんが、現状においてはそんなに登場シーンは多くはありません。

択一問題から学ぶ

問1:Aが市街化区域において、Bの所有する面積3,000㎡の土地を一定計画に基づき1500㎡ずつ順次購入した場合、Aは事後届出をする必要はない

答:「×」。市街化区域は2,000㎡以上が事後届出の対象のところ、二回に分けた場合にどうか、と言う問題。法の趣旨は「大規模な土地を購入した時に、その土地が適切に利用されているか」、でした。何回に分けようがA自身が大規模な土地を買っているので届出対象にすべき話です。

問2:宅建業者Eが所有する土地計画区域外の13,000㎡の土地について、4,000㎡を宅建業者Fに、9,000㎡を宅建業者Gに売却する契約をした場合、F/Gはそれぞれ事後届出を行わねばならない。

答:「×」。問1の逆パターン。土地計画区域外の届出基準は10,000㎡で、F・Gの取得した部分が各々それを下回る場合はどうか。この場合は要りません。FとGは別の組織で取得した土地の利用目的は当然違います。13,000㎡の土地を二人で一緒に使うわけではありませんから、問1とは状況が違います。

問3:甲市が所有する市街化調整区域12,000㎡の土地について、宅建業者Cが購入する契約を締結した場合、Cは事後届出が必要。

答:「×」。売り手が甲市、つまり国・地方公共団体の場合。この場合、国や都道府県の中で売却のための内部手続が取られ、その中で各々の法律趣旨に沿っているかの検討が実質的に事前になされるわけです。それを満たさない相手方には国・都道府県は売却を拒否できる。そんなケースに改めて都道府県に事後届出をさせる意味がありません。

問4:個人Fが所有する土地計画区域外の30,000㎡の土地について、その子Gが相続した場合、Gは事後届出が必要。

答:「×」。何らかの意図を持って大規模な土地を取得した場合に届出が必要なのがこの法の趣旨。逆に言えば、意図なく入手したケースやそもそも土地を「取得」していないケースは、届出対象外です。本件の様な相続、勝手に渡される贈与、何かの権利の「保険」として設定する抵当権設定等です。

問5:Aが市街化区域において、2,500㎡の工場建設用地を確保するため、そのうち、1,500㎡をB社から購入し、残りの1,000㎡はC社から贈与で取得した。この場合、Aは事後届出不要。

答:「〇」。まさに宅建用に作られた様な変な問題。上記の通り「贈与」はこの法には含まず、前者のみが対象で、1,500㎡≦2,000㎡なので届出不要ということです。

問6:Fが市街化区域内に所有する2,500㎡の土地について、Gが銀行から購入資金を借り入れることが出来ることを停止条件として売買契約を、FとGとの間で締結した場合、Gが銀行から購入資金を借り入れることができることに確定した日から起算した日から2週間以内に、Gは事後届出が必要。

答:「×」。「銀行からローンが出来ることが確定したらこの土地を買う」という契約をした場合に、届け出のタイミングはこの契約をした時基準なのか、銀行のローンが決まったタイミング基準なのか、どちらなのかという問題。答えは前者です。ローンが決まる、決まらないはあくまでお金の話で、その土地の購入目的は契約時点で決まっています。法律の趣旨から考えれば、銀行のローン審査を待つ必要は全くありません。

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