【宅建試験を通して学ぶ】宅地造成等規制法

概要

条文から行きたいと思います。

第一条
この法律は、宅地造成に伴う崖崩れ又は土砂の流出による災害の防止のため必要な規制を行うことにより、国民の生命及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉に寄与することを目的とする

がけ崩れ等による災害を防止し、人命を防止するための法律です。ということは、対象となる「宅地」は人がいそうなところが対象となります。

第二条 
一 宅地 農地、採草放牧地及び森林並びに道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供されている土地以外の土地をいう。
二 宅地造成 宅地以外の土地を宅地にするため又は宅地において行う土地の形質の変更で政令で定めるもの(宅地を宅地以外の土地にするために行うものを除く。)をいう。

農地や森林はそもそも人が住みそうなところでは無いのでこの法律で保護する必要がありません。また、公共施設用地は必ず別に管理者がいるので、その必要がありません。また、宅地以外の土地にするのであれば人が住むことは想定されませんから、この法律の射程ではなく、「宅地造成」の定義には含みません。

ちなみに、

第二条
五 造成主 宅地造成に関する工事の請負契約の注文者又は請負契約によらないで自らその工事をする者をいう。
六 工事施行者 宅地造成に関する工事の請負人又は請負契約によらないで自らその工事をする者をいう。
第三条 
都道府県知事(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以下「指定都市」という。)又は同法第二百五十二条の二十二第一項の中核市(以下「中核市」という。)の区域内の土地については、それぞれ指定都市又は中核市の長。第二十四条を除き、以下同じ。)は、この法律の目的を達成するために必要があると認めるときは、関係市町村長(特別区の長を含む。以下同じ。)の意見を聴いて、宅地造成に伴い災害が生ずるおそれが大きい市街地又は市街地となろうとする土地の区域であつて、宅地造成に関する工事について規制を行う必要があるものを、宅地造成工事規制区域として指定することができる。

災害が生ずるおそれが大きい地域はきちんと守る必要がある。その地域を「宅地造成工事規制区域」と呼びます。指定者は都道府県知事です。下記リンクは京都府のものです。
http://www.pref.kyoto.jp/kenchiku/documents/22822716701960.pdf
各々の地域で決まっているので一度ご自身の住んでいる地域は見ておくとイメージが掴みやすいと思います。

第八条 
宅地造成工事規制区域内において行われる宅地造成に関する工事については、造成主は、当該工事に着手する前に、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。

これを前提として宅建試験に出る分野を覗いてみましょう。
1) 都道府県が定めた宅地造成工事規制区域内で
2) 宅地を造ろうと宅地造成工事をする場合
3) 造成主は
4) 都道府県知事の許可が必要
です。

施工主は宅地を造ろうとする前に、こういう工事を行いますという工事計画を都道府県に提出します。その計画がその工事ががけ崩れが起きない様な最低限の基準を満たしているか、都道府県が事前にチェックし許可する、という仕組みです。

さてここまでがこの法律の大まかなものですが、残念ながらこの分野は少し細かいことを覚えなければいけません。(2)の「宅地造成工事」の定義です。
さきほど、第二条の中に

二 宅地造成 宅地以外の土地を宅地にするため又は宅地において行う土地の形質の変更で政令で定めるもの

とありました。この「政令」とは●●法と呼ぶ様な法律の下に位置付けるもので、法律に書き込むには細か過ぎる様々な条件を記すためのものです。ここでは、「宅地造成等規制法施行令」がそれに当たります。試験に出るのはこの内、

第三条 
法第二条第二号の政令で定める土地の形質の変更は、次に掲げるものとする。
一 切土であつて、当該切土をした土地の部分に高さが二メートルを超える崖を生ずることとなるもの
二 盛土であつて、当該盛土をした土地の部分に高さが一メートルを超える崖を生ずることとなるもの
三 切土と盛土とを同時にする場合における盛土であつて、当該盛土をした土地の部分に高さが一メートル以下の崖を生じ、かつ、当該切土及び盛土をした土地の部分に高さが二メートルを超える崖を生ずることとなるもの
四 前三号のいずれにも該当しない切土又は盛土であつて、当該切土又は盛土をする土地の面積が五百平方メートルを超えるもの

この条文の「法」が宅地造成等規制法のこと。2m・1m・500㎡は暗記するしかないです。切土は元々ある土地を削って切り取ること、反対に盛土は無いところにクレーン車等を使って土を盛ること。土砂崩れが起きやすいのは当然、土を人為的に盛る後者ですから、後者の基準の方が厳しいわけです。

ちなみに試験には出ないと思いますが、この施行令には工事をするに当たっての最低基準(「技術的基準」)についての定めが色々書いてあります。イメージを持つ参考になると思います。

第五条 
法第九条第一項の政令で定める技術的基準のうち地盤について講ずる措置に関するものは、次のとおりとする。
一 切土又は盛土(第三条第四号の切土又は盛土を除く。)をする場合においては、崖の上端に続く地盤面には、特別の事情がない限り、その崖の反対方向に雨水その他の地表水が流れるように勾配を付すること。
二 切土をする場合において、切土をした後の地盤に滑りやすい土質の層があるときは、その地盤に滑りが生じないように、地滑り抑止ぐい又はグラウンドアンカーその他の土留(以下「地滑り抑止ぐい等」という。)の設置、土の置換えその他の措置を講ずること

択一問題に挑戦

問1:宅地を宅地以外の土地にするために行う土地の形質の変更は、宅地造成に該当しない。

答:「〇」。つまり、人が住んでいた地域から人が住まなそうな地域へ変更する、ということ。土砂崩れが仮に起きても国民の生命・財産は脅かされません。

問2:宅地以外の土地を宅地にするための切土であって、当該切土を行う土地の面積が400㎡であり、かつ高さが1mの崖を生ずることとなる土地の形質の変更は、宅地造成に該当しない。

答:「〇」。残念ながら暗記問題。盛る方がより危ないので1m。今回は切る方なので、2m。面積は500㎡超が基準。よって、宅地造成等規制法の対象外。

問3:国土交通大臣は、都道府県知事の申し出に基づき、宅地造成に伴い災害が生ずるおそれが大きい市街地または市街地となろうとする土地の区域であって、宅地造成に関する工事について規制を行う必要があるものを宅地造成工事規制区域として指定することができる。

答:「×」。ご自身の住む地域の区域を見てイメージを掴むのが良いかと。必ず都道府県のHPにあるはずです。「国土交通大臣」が指定するのではなく、都道府県知事です。

問4:宅地造成工事規制区域内において宅地造成に関する工事を行う場合、宅地造成に伴う災害を防止するために行う高さ4mの擁壁の設置に係る工事については、政令で定める資格を有する者の設計によらなければならない。

答:「×」。マニアックな問題。規制区域内では工事を行うための許可が必要で、その許可を得るために政令(宅地造成等規制法施行令)に書かれた色々な「技術的基準」を満たす必要があります。その中で擁壁設置に関する基準について質問されている、という問題。ちなみに、施行令16条には「高さが五メートルを超える擁壁」なので×です。

問5:都道府県知事は、宅地造成工事規制区域内の宅地について、宅地造成に伴う災害防止のため必要があると認める場合においては、その宅地の所有者、管理者、占有者、造成主又は工事施行者に対し、擁壁の設置等の措置をとることを勧告することができる。

答:「〇」。細かいことを言うと16条にある規定についての問ですが、法律の趣旨から言って常識的に〇です。

問6:都道府県知事は、宅地造成工事規制区域内の宅地で宅地造成に伴う災害の防止のため必要な擁壁が設置されておらず、これを放置するときは宅地造成に伴う災害の発生のおそれが大きいと認められるものがある場合、一定の限度のもとに、当該宅地の所有者、管理者または占有者に対して、擁壁の設置を行うことを命ずることができる。

答:「〇」。同上で法の趣旨から言って〇でおかしくありません。勧告に加えて命令までできるのか、ということですが「一定の限度」で認められます。

問7:宅地造成工事区域内において行われる宅地造成に関する工事について許可をする都道府県知事は、当該許可に、工事の施行に伴う災害を防止するために必要な条件を付することができる。

答:「〇」。これも法律の趣旨から言って、常識的に「〇」です。 

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