好きな歌に寄せた詩


傘村トータ「泣かないあなたの守り方」

あなたが僕の前で泣かなくなって
もう大丈夫なのかなって思ってた

雨がやみかたを忘れたように
私もただしいやみ方を
どこかに置き去りにした

そうやって生きていて ひどく辛いだろうに
間違っても弱さを人前では見せない

弱さを見せたらひとは
きっと私を嫌うから
弱さを見せたらひとは
きっとそれを笑うから

気づけなかった僕を
あなたは決して責めたりしない

言えなくなったら
気づかれないのは当たり前だった
言葉をなくした私には
もう何の価値もない

あなたが僕の前で泣かなくなった
いつからのことなのかなって考えた

もう思い出せない
自分の名前も
呼びたかった名前も

余裕なんてないのにさ
気遣いが上手だから
話を聞くばかりで 自分のことは教えない

私の話は
聞いててもくるしいだけだから
誰もくるしめたくなかったのに
私はくるしめてばかりだった

泣かないあなたの守り方を
心すべてで探すから
あなたは力を抜いて
僕が行くのを待っていて

そんな風にいつか

あなたが僕の前で泣かなくなった
あなたが僕の前で泣けなくなった

そんな風に誰かが

泣きたいあなたの守り方を
見つけるためにそばにいよう

そんな風に言葉を

あなたは少しでも
涙の流し方 思い出して
泣かないあなたを守らせて

くれる世界線を望むことすら
もう望みつかれて

求めることができないなら
与えられることもきっとない

誰かの幸せを願えると安心するんだ
自分が神様になったみたいだから

自分の幸せを願うことにはもう
疲れ切ってしまった

全部だめみたい

月なんて見えない
どこにもない

私の言葉はもう
何の意味ももたない

消えるのは贖罪だった
必然的にこうなる運命だった

それだけのはなしだ

こんな詩がなにになる

私はただ

誰も傷つけず傷つかず
生きていたかった

それだけだった
それだけでよかった

本当にそれだけだった




眠れない夜のための詩を、そっとつくります。