歯ブラシ
今朝も彼を追い求める様な夢をみて目が覚めた。
付き合ってる間は一度も出てきやしなかったのに、別れてから時々顔を出す。
そんな朝は少し憂鬱だった。
2ヶ月近く触れる事の出来なかった。
洗面台に並んだ彼の歯ブラシ。
一人ゆっくりと録画したドラマを観ながら晩ご飯を食べ終え、お皿洗いを終え、明日は燃えるゴミだから流しのゴミ受けネットを変えた。
ふと排水溝のドロドロとした真っ黒な汚れをジッと見た。
しばらく固まり、勇気を出して足を洗面台に向ける。
すっと彼の歯ブラシを手に取り、キッチンへ戻り排水溝をガシガシと洗う。
みるみるうちに白く綺麗になってゆく排水溝。
真っ黒になってゆく彼の歯ブラシ。
私は汚いものが苦手で、気にはなるが触れたくなくて、排水溝をずっと放置していた。
蓋をしてしまえば見えなくて綺麗だから。
ジャーっと水を流し泡と黒々とした汚れが排水溝へ流れてゆく。
彼との思い出も綺麗に流せてしまえれば良いのに。
やっと綺麗に出来た排水溝。
やっと捨てれられる彼の歯ブラシ。
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